俯き、ひたすらにキーボードを打つ。その作業にふと眠くなり、頬にデコピンする。面倒だ、本当にこんなのに意味があるのかと疑問になりながらも、ただ打ち込む。社会の歯車として今日も……嫌、数年前は働いていた。
本当に変な夢のような毎日だったと思う。そんな夢から目を覚まし、別の日々を過ごし暫く経った。だいぶ仕事も慣れてきた頃だ。仕事は大体施設内の掃除だとか、色んな物のチェックだとか。忙しい時はアンリさんの手伝いをしたりもする。
事務の仕事もあるので、少し不服ながらも前回の仕事が役に立っている。
ここは青い監獄、私は裏で雑務をこなしている職員だ。ハードではあるが、前回の会社よりは楽しいし帰宅せずに寝れるので実にハッピーカンパニー。いや、カンパニーだっけ。まあいいや。
因みにサッカーについてはあまりよく知らない。サッカーに直接関わる仕事では無いし別に良いかな、と思っている。このまま普通に日常を過ごす予定だ。
「え……うっそー、もうこんな時間か」
少しぼーっとしていたのでやばいと思い、時計を見ると業務終了時間の暫く前の時刻を表示している。しかしまだ仕事は結構ある…困ったな、寝る時間が減る。睡眠は私の恋人。いや、親友?概念と付き合うほどモテないと自虐をしている気分になるので、親友とする。まあそんな趣味とも言える睡眠の時間が減るなんて大問題だ。ほんとに嫌だ。
しかしこの量を今からなら、減るのは確定してる。こんな無駄なこと考えて無いで仕事だ仕事。元々今日の仕事少し多かったのに考え事してたのは私だ。幸い後は事務だけ、これ以上睡眠時間を減らしてたまるか。やる気をなんとか叩き起こし、私はパソコンに向き合い、睡眠時間減少のイライラをぶつけるようにキーボードを少し強く、素早く叩き始めた。
よし。結構片付いた。流石私、睡眠の為なら何でも出来るんだなあ。後もう少し……全てはあの布団で眠りにつく為_____
「やあやあ、頑張ってるね。」
「あ、絵心さん。お疲れ様ですー。」
うわ、ちょっとビビった。いつの間にこの高身長はこっちに来たんだか。絵心さんは青い監獄の責任者である、要するに私の上司だ。普通に結構尊敬というか、すごい人だし口悪いけど悪い人では無いと思っている。そんな人が突然ここに。何か用か?仕事の追加か?それならば私はこの人と戦わなければいけないレベルで嫌なのだが……彼の手には書類では無く、マグカップが握られている。この時間ならコーヒーか何かだろう。きっとこの人もこれから仕事だろうし、やっぱ責任者って大変なんだなあ。
「あー……絵心さんもお仕事ですか、お疲れ様です。カフェイン大事ですよねー。」
「いや、これ君の。」
「え?何でですか。何かありました?」
衝撃の展開だ。まさかの絵心さんが、私にコーヒーを。どういう風の吹き回しだろう。まさか、やはり追加で仕事を……?うわー、やだ。コーヒー1つで釣れる軽い女だと思うなよ。ぜっっったい引き受けないからな。
「別に。アンリちゃんから貰ったんだけど、俺だけだと期限内に全部消費無理そうだから差し入れ。君だけまだ仕事やってるみたいだし。」
ああ、そういう事……良かった、仕事無い。今の分で終わり、私は勝ち組だわ。というか差し入れなんて、なんてアットホーム。前の会社はアットホームな雰囲気とか言ってたけどノットホームだった。変なの入れるとか、絵心さんがそういうの別に無いだろうし有難く受け取ろう。貰えるもんは貰っとけ。
「えーと、ありがとうございます。」
「じゃ、頑張れよ。」
そう言うと絵心さんは、この場から立ち去った。何だか低確率イベントでも見た気分だ。この状態で有難いからまずは1口……うお、やば、好みの甘さだー。絵心さん入れてくれたんだ、意外。絵心さんってコーヒーどんくらいで飲むんだろ。とりあえずこのコーヒーは私の好みだ。
何だか、絵心さんの優しい1面を見たような……嫌優しさとかじゃないかもだけど。良いや、勝手に優しさだと思っておこう。そう思うとちょっと嬉しい。そう言えば雇用の時色々調べてるって言われたな、もしかしてそれで甘くなってたり……いやそれは無いか。
無駄な思考を巡らせ、コーヒーを啜って少し溶け残ったらしい砂糖を噛み砕き、私はコーヒーと一緒に無駄な思考を体内に押し込み、再び仕事を始めた。あ……後で寝るのにカフェインなんてダメじゃん。
私は、今日の良質な睡眠を諦めた。
スクロールお疲れ様です。初めてなので拙い作品ではあると思いますが、これからも読んでくれると嬉しいです。この後この夢主の設定を出すので、興味ある人は読んでください。
コメント
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私も頑張らないと…