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#ミステリー
鬼霧宗作
686
みおん
5,211
武の家の前に着いた。下北沢の10階建マンション。
そこの3階。
電車の中ではお互い無言で、落ち着かなかった。
武が結婚して息子がいたなんて知らなかった。
俺から聞かなかったのは確かだが、何故言わなかったんだろう。
でも今はどうでもいいことだ。
友達の家族を助け出したい。
両親を殺した三重を捕まえたい。
それだけだ。
「入るぞ」
武が扉を開ける。
家にはバンドのロゴシールやCDが飾られていた。
リビングに入ると……。
縛られて下着を脱がされている武の奥さんと椅子に縛られている息子。
椅子に座ってテレビを見ていた三重がいた。
「お!やっときたな」
三重が振り返った。
手にはナイフを持っている。
「お前……。何を……」
下着を脱がされた状態の奥さんを見ながら武が聞く。
「あたり前のこと聞くなよ。 退屈だったからお前の使い古しを味見したんだ。 まあまあだったな。 子供にもちゃんと見せてやったぜ! 性教育ってやつだ!」
「てめぇ……」
武が拳を作っている。
音が鳴るぐらいに……。
俺も殴り飛ばしてやりたい。
こいつが……。
父さんと母さんを。
だが、ここで感情的になったら武の奥さんと息子が危険だ。
武もそれはわかっているから何もできない。
「まあまあ落ち着けよ。 ちゃんとディスク持ってきただろ」
「これのことか?」
武がディスクを取り出した。
「見ただろ?」
「途中まで……」
俺は答えた。
あれを全て見ることはできない。
「は?もったいねぇな。 僕なんて毎日フルで見てるっていうのに。良い 映画だろ?」
「良い映画? これのどこが良い映画だ!」
俺は怒鳴った。
こんな映画があっていいわけがない。
人の命を弄ぶなんて……。
「そりゃあそうだろ? 自分が高い地位にいるって勘違いしてる馬鹿共が無惨に散るんだ。 最高だろ? ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
「この下衆が……」
武が震えている。
「まあお前らがどう言おうが状況は変わらない。 ディスクと家族を交換だ。 あと、それなりの謝礼ははずむぜ」
「金で解決できる問題か!」
武が叫んだ。
「ああもちろんだ!」
三重が涼しい顔をする。
正気なのか?
「仮にディスクと交換したとしても、このことを俺らが言えばお前は終わりだ。」
こんなことしても自分の首を絞めるだけだ。
「馬鹿だなお前。 うちがどんな大企業かわかってないだろ? それに引き換えお前らは殺人事件のあった会社の社員と小さなライブハウスのスタッフ。 お前ら弱者が何をしようと金の力で捻じ伏せられるんだ。 虚言で大企業の時期社長に中傷を言った奴らってことで、精神病院に送ってやる」
めちゃくちゃだ。
金があれば本当になんでもできるのか?
でも……。
金の力で他の人間がこいつの味方になったとしても……。
俺は許せない。
「何人殺したと思ってんだ! あんな残酷な方法で…… 俺の父さんや母さんまで……。 人の命をなんだと思ってるんだ!」
こんなやつに……。
父さんと母さんは……。
三重はまた涼しい顔で
「知らねぇよ。そんな奴ら。 死んじまったら金も使えないゴミだろ? まあ生きててもゴミみたいな連中だったなぁ。 ぶひゃーひゃーひゃーひゃー。」
この豚野郎。
三重が高笑いをした瞬間、俺の体は動いてた。
三重は構えようとするが、ノロマな三重が構える前に腕を掴んだ。
「こいつ……。 弱者の癖に調子乗ってんじゃねぇよ。」
三重が俺の腹を蹴り飛ばす。
俺が怯んだ瞬間……。
ナイフが俺の腹に突き刺さった。
深くは刺さらなかったが血が流れてくる。
痛い……。
少し刺されただけなのに。
血が止まらない。
殺された人たちはこれ以上の痛みを感じたというのか……。
「こいつ……」
武が三重の前まで行く。
だが……。
「おっと。動くなよ」
武の奥さんの髪を掴み、首にナイフを突き立てる。
「早くディスクを渡して僕を無事に帰してもらおうか? まあ口座さえ教えてくれればそれ相応の金は払うからよ」
「ぐ……」
武は動けない。
俺もだ。
傷が痛くて立ち上がれない。
「小田に関しては僕が知り合いの病院紹介してやるからよ。 自殺しようとしたけど失敗したってよ。 その医者にも金掴ませて隠蔽すれば、万事解決だ」
クソ……。
こんなやつのいいなりになっていいのか。
その時後ろから誰かが歩いている音がした。
「あれ? なんでこんなところに?」
三重は不思議そうに入ってきた何者かに話をかける。
俺は痛くて振りむけそうにない。
武も目の前で奥さんが人質にされて目が離せない。
誰がいるんだ?
「まあいいや。 こいつらにバレちまってさ。取引してるとこなんだ。 でも来てくれたってことはまた映画が撮れるな。 あの時みたいに……」
共犯者がいたのか?
俺は振り向こうとする。
だが駄目だった……。
痛くて振りむけそうにない。
しかもその何者かは何も話さないから何もわからない。
「さっきから何黙ってんだよ。 な?大谷」
大谷……。
もしかして武が言ってた大谷幸代子か?
俺に好意を持っていたっていう高校時代の……。
そいつが裏で系を引いていたのか?
どんどんこちらに近づく音がする。
「おいおい。何か言えって。 どうせ他のもお前がぶふ………」
そいつは三重の首にナイフを刺した。
それを引き抜いてもう一度刺した。
「な…… なんで」
三重が倒れ込む。
三重がそいつの足を掴みながら
「なんで……. おれを……」
手を足で払って思い切り蹴り飛ばされる。
そして……。
俺らの方を向いた。
コメント
3件
うわ、この展開すごすぎる……。三重のクズっぷりがヤバくて読んでて胃が痛かった。でも最後の大谷さんの登場、まさかの展開で鳥肌立ったよ。主人公の傷の痛みとか、武さんの奥さんと息子を思う気持ちとか、細かい描写がリアルで引き込まれた。続きが気になる…!