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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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ここはヤバシティ、愛憎渦巻く夜の街。


この街に住む奴らは揃いも揃ってイカれてる、市長(世話係)とその周りの人間がイカれているもんだから住民だってイカれてる。


女泣かせの屑野郎と名高い市長(世話係)の鬱。女を殴ってそうな猫好きショッピ。謎多き人外ボーリング玉のゾム。人の地雷を踏み抜く野球ボーイシャオロン。安全無用なこの街の自治会長エーミール。人間の体に根を張り操るきのこが本体なトントン。(しかし、本人たちは一般市民を主張しているので、怪しいところだ)

この街の中心人物は主にこの6人。たまに仲間の様な人物が訪れることがあるが、基本的には6人のみ。


今日も今日とて、イカれた仲間たちが何かをしでかす。それを心待ちにしている住民が居るのは、この街の常識である。





――鬱の日常。


からんからん、と耳障りの良い音を立てて開かれるドア。街の中心にある犯罪者の溜まり場であるバー。

その名も土曜21時のMAZI夜bar、略して土bar(ドバー)。

市長(世話係)である鬱は、憂さ晴らしともう1つの理由でよくここを訪れる。



「ほら、おいで。ここ俺のお気に入りやねん」

「で、でも…ここって…」

「んー?」

「ははは……な、何でも無いです」

「ほーん、まあええけど……」



怯えた様に鬱の後ろから店に入った男は、まだ学生の様な風貌をしている。それと反対に鬱は慣れたように客と挨拶をして、酒を頼んでいた。学生は鬱にベッタリと張り付いて動いていて、見知らぬ場所を恐れているのが見て分かる。



「――ん?あぁ、君か。その子は友達ですか?」

「おう、金に困っとるらしいわ。」

「ふむ、それはそれは……大変ですねぇ…」

「せやろ?…なぁ、何か仕事あげたってぇや」



甘ったるい声で強請るように話しかける。マスターは少し嫌そうな顔をして、気持ち悪いから辞めてください、と鬱の頭を軽く叩いた。


鬱が尚も頼み続けるものだから、この面倒から解放されるのならとマスターは少しばかり思考すると、溜息をついて口角を上げ、にやりと笑った。


「1つ、アテがありました。簡単なものですが」


「全ッ然!寧ろムズいの出される方が嫌やろ」


な?と鬱は同意を求めるように、学生の方を向く。学生はコクコクと首を振った。

そういえば名前を聞いていなかったな、とマスターが鬱に学生の名前を聞いたが、鬱はしどろもどろになりながらごにょごにょと要領の得ない返事をする。

さてはこの人忘れているなと半ば呆れ気味に笑えば、鬱もヘラヘラと笑みを返してきた。誤魔化しているつもりなのか、鬱は店内を見渡して落ち着かない様子の学生に話を振った。

学生はびくりと肩を跳ねさせ、吃りながら名を名乗った。鬱は今思い出したと言わんばかりでいる。


「それじゃあ、お試しバイトということで良いですか?」

「は、はい…」


あれよあれよと話が進んで、学生の知らぬ間にバイト先は決定してしまったのだけれど、学生は現在信頼できる人物が鬱のみだったので特段焦りもしなかった。


「ほんならその子任せるわ、俺市長の方で忙しいから構えん。」

「相変わらず多忙ですね。はい、承りました。」


マスターは人の良さそうな笑みを浮かべ、明日は10時には来てくださいねと言い、磨いていたグラスの中に丸い氷を落とした。



「ほら、ええ奴ばっかやろ」

「はい…噂と全然印象違いますね…どこが犯罪者、、」

「……あぁ…え?あんな噂信じとったん!?」

「…めっちゃ信じてました。この街治安悪いし…」


驚愕の表情を浮かべて、これでも昔よりは治安良くなったはずなんやけど、なんて言って肩を落としている鬱を横目に学生は、これで治安がいい方だなんて昔はどんなものだったのだろうかと想像していた。

余談ではあるが、学生が治安の悪さについて、とんでもない想像を繰り広げていることに気づいた鬱は、想像しんといてください…と情けなく懇願した。



翌日、鬱と共にバーへと赴いた。鬱は市長(世話係)の仕事が忙しい為、送り迎えのみである。なので店内に入ってからは1人で行動する事になるのだ。学生はキュッと口を結んで、ガチガチになりながらドアノブに手をかけた。


「ん、あーじゃあ、俺もう行くで?大丈夫そ?」

「は、ははい、ありありあぁがとうごご、ござござい、いいざいました…!」

「いや全然大丈夫ちゃうやんけ!?」


鬱はポンポンと学生の頭を撫でて、落ち着かせたあと、頑張りや〜と言いながらひら〃手を振って、高そうなリムジンへと戻って行き、それから間もなく去っていった。


ふぅ……と一呼吸して、ドキドキする気持ちを抑え、もう一度おずおずとドアノブに手を伸ばし、ゆっくりとドアを開いて中に入る。

相変わらず人相の悪い人が多いバーだ、睨まれている様な気がして背中が冷える心地がする。挙動不審になりながらも、ヒィ…と言ってビクつきながら、何とかマスターの元へと歩いていく。


マスターは学生を一目見ると、すぐに磨いていたグラスを置いて、手招きをする。そのまま裏方の方へと進んで行こうとするので、学生は小走りで追いかけた。

裏には調理場があって、色々な物が置いてある。興味が湧いてあちこち眺めていると、どこかへ消えていったマスターが謎の紙袋と独特な服を持って戻ってきた。


「待たせてすみませんねぇホンマに…、アナタにはこちらの服を着て配達してもらいたい。」

「わ、分かりました…!その…仕事っていうのは配達の仕事なんですか?」

「はい、従業員が足りなくて…。いやぁ、デリバリーというのは中々に大変ですね。そこらの配達員では信用出来ませんから、アナタが来て下さって本当に助かります。」

「そ、そんな…!俺なんてただの素人なのに…」


どうにもこの服は、配達員専用の制服らしい。素人だからこそいいのだとマスターは言ったが、だからと言って制服を着ない訳にはいかないとの事だ。何やら、この服を着てると安全に配達が完了するのだとか。そんなに危険な道程なのだろうか、少し緊張する。


「こ、これを運べばいいんですか?」

「えぇ。中は別に見ても構いませんが、絶対に無くさないようお願いします。」


マスターが紙袋を手渡し、念を押すように無くすなと言いつけた。学生は、そんなに大切なものなのかと紙袋をきゅっと抱き締めた。そういえば、と配達先の住所が書かれた紙も渡されたが、この街に詳しくない学生にはあまりよく分からなかった。


「決して、遅れないようにお願いしますね。」

「は、はい!では行ってきます…!」


遅れてはマズいとせかせか裏方から出る。たたたっとドアに駆け寄って、入った時よりも勢いをつけて飛び出した。


――飛び出したはいいものの、この街の初心者である学生にはどこに行くべきか、方向すら分からなかった。

バーの前で右往左往していると、はた、と思い付く。鬱に聞けばいいんじゃないだろうか、彼は市長だしこの街の道くらいなら知っていそうだ。

仕事中かもしれないので、連絡するのは憚られたが、初めての業務で失敗するよりはマシだと連絡する。



『えー…今何見えとる?』


『今ですか?えっと…バーが見えます…?』


『あー出てすぐかけたん?おけおけ、ほんじゃ前の路地裏入って左に曲がったら教えてな』


『分かりました、ありがとうございます…!』



やっぱり頼りになるな、と鬱を待たせないように駆け足で路地裏へ入っていった。

路地裏を抜けた先は表の道とは違い華美な店は一切無い薄暗い道であった、住宅街だろうか。店の栄えっぷりとは比例しない貧困状態に、少し恐怖を覚える。

一刻も早く離れようと道を左に曲がろうとした、その時。



「いっ、た…」


「おい、大丈夫…ってなんか運んでたのか?」


「え、」


「あ?オクスリじゃんラッキー!!最近高くて困ってたんだよね〜。てかこれキマるヤツ?飲めば分かる?」


「えっ…え、?くすり?」



いきなり何かにぶち当たって、後ろに倒れたかと思うと上から心配の声が上がって後ろから歓喜の声が上がった。唐突過ぎて状況を把握するのに少し手間取ったが、配達物のことを思い出しハッと起き上がる。

すると紙袋の中から小さな袋を取り出している男を見つけた。


薬…?クスリ…!?


男の手から袋を取り返してジッと見つめる。…どこからどう見ても薬にしか見えない、学生はこんな物を運ばされてたのかと驚愕した。同時に恐怖し、袋を投げ捨ててしまった。



「あ゙ッ!?テメェ何やってんだよ!価値分かってる??何十万もするやつあんだよ?これがどうなのかは知らんけど!」


「馬鹿、人のもん取ってんじゃねえよ自分で買え。…それと、コイツの取ったら殺される。」


「はぁ?どう見てもただのガキじゃん、殺される前に殺すしいけるいける!」


「よく見ろ、配達員だぞ。それに住所…アイツんとこだ、辞めとけ。バレたら死ぬ。」


「うーーーーーわ…無理無理関わらんとこ。じゃね、これ返す。死にたくなかったら絶ッッッッ対無事に届けろよ〜!」



パンパンと服に付いた埃を払って、2人はさっさとどこかへ消えて行ってしまった。クスリを運ばされていると実感して、途端にマスターや鬱が恐ろしくなった。配達先の人は恐れられているし、かといって運ばなければ殺されるかもしれない。

袋を紙袋にいれて、泣きそうになりながらも猛ダッシュで道を進んで行った。



「あ、あの…曲がりました、、えっと…聞こえてました…よね、?」

『ん??ん???え、は?何運んでんのか分かってへんかったん!?はぁ!?』

「え。」

『いやアイツほん、あとで殺す。…あー、すまん。説明不足やったわ』

「い、いえ…お構いなく……。」

『……あー、えと、まだ運んでくれそう…ですかね…』


電話越しにでも分かる申し訳ないオーラに、学生は何とも言えない謎の安心感を覚えた。だってこの人は知らなかったのだ、こちらが知っているものだと思っていたのだ。なら、この人は悪い人じゃないのでは無いか、いや薬を運ばせようとしてる時点で悪いのは悪いのだが。

それでも、学生には鬱が知らない事を知らなかった、お人好しの良い人に見えていた。


「だ、大丈夫です!聞かなかったのが悪いんですから…あと、見ても大丈夫ってマスターも言ってましたし…」

『えっ、ほんまですか!?あぁいや、ありがとうマジで。運んでくれへんかったら俺死んでたわ…!』

「死…ッ!?……今から運ぶ場所ってそんなヤバいんですか」


『ヤバい。ぶっちゃけ狂人、まぁ常識的なとこもあるにはある…か?まぁ基本愉快犯、しかも今回は2人やで』


市長(世話係)の鬱がそこまで言う2人組とは一体何者なのか。1人は見れば分かる程ヤバいらしい、もう1人は使い魔らしきものが周りに浮いているのだとか。とにかくタチが悪い、楽しそうという理由だけで味方を射殺するような奴らだと。

そんな所に薬を届けに行ったら、十中八九死ぬのではないか、それは。


『んーまぁ大丈夫やろ。アイツらに何か仕掛けられても無反応でおったらええわ。多分飽きる。』

「は、ぁ……成程。わかりました…頑張ります!引き続き道案内お願いします!」

『よっしゃ助かるわ!ありがとうなホンマに!おっちゃん本気出すで』

「お金、欲しいので…。家もないし、食べ物とかも無いから…」

『あ〜…せやったな。…次、真っ直ぐ行って3つ目の角を右に曲がって。行けたらまた教えてな』




* * *





スランプ中なので、ゆっくりでお願いしますorz

久々の更新です、見てって下さると幸いです照


【修正】♡が1000を越えたので♡要求消しました!ありがとうございます!

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