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リオは、目の前の魔獣を注視する。 なんとも|禍々《まがまが》しい姿をしている。全身を黒い|鱗《うろこ》に覆われ、鱗一つ一つに針のような突起がある。あれにも毒がありそうだ。
「さて、どうしようか…」
リオはアンの頭を撫でて呟いた。
もちろん、魔獣は退治する。しかしその前に、皆から毒も抜きたい。そうなると、かなりの魔力を消費する。
リオは村を出てからずっと、魔法の力を溜めてきた。時々使ってはいたけど、大した力ではなかったので、かなりの力が溜まっている。年に数回発熱をするのは、身体の内に溜まり過ぎた魔力のせいだ。だから確実に、皆を助けて魔獣も倒せるだけの力はある。問題はその後だ。初めて使う強大な魔法だ。リオの身体が、その魔力に耐えられるのか。死にはしないだろうが、確実に意識を失う。数刻か数日か数ヶ月かわからないけど、しばらくは目を覚まさないかもしれない。一度も使ったことがないのだから、どうなるかわからない。
でもまあ。
「悩んでいても仕方ないよな。やると決めてるんだから。アン、俺が倒れたら、よろしく頼む。なんだったら、おまえが魔獣を倒したってことにしてくれてもいいぞ」
「クゥーン…」
「ふふっ、冗談だよ」
アンが珍しく、耳も尻尾も垂らして、金色の目でリオを見上げている。いつもなら勢いよく「アン!」と答えてくれるのに。
そうか、心から心配してくれてるんだな。いつものように「無理するな!」って怒ってくれていいのに。調子狂うじゃねぇかよ…。
リオはアンを抱き上げ、しっかりと抱きしめた。
「アン、大好きだよ。大丈夫、ずっと一緒だから」
アンが、長い舌でリオの唇と鼻を舐めた。
リオは笑って、アンをゆっくりと下ろす。そしてマントを脱いで立ち上がり、岩陰から出る。一歩一歩しっかりと雪を踏みしめながら、まずはギデオンに近づく。静かにしゃがみ、ギデオンに顔を寄せる。呼吸が浅いが、大丈夫そう。でもこのままでいたら、数日後には死ぬかもしれない。リオは、ギデオンの鼻を摘むと、唇で唇を塞ぐ。そしてゆっくりと息を吸い、唇を離して顔を横に向け吸い上げたモノを吐く。再び唇を塞ぎ、今度は息を吹き込む。終わると名残惜しげに顔を離して端正な顔を見つめる。浅かった呼吸が正常に戻り、白かった顔に血色が戻った。
リオはほっと息を吐くと、ギデオンから離れて近くに倒れているロジェの元へ向かう。ロジェには直接唇はつけない。鼻を摘み頬を挟んで口を開けさせ、離れた位置から息を吸って吹き込む。アトラスや他の騎士達にもそうした。