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第44話:世界が集う翡翠の旗
開幕の夜
旧台湾「未来特区」の巨大スタジアム。
天井には翡翠の旗がライトに照らされ、脈打つように光を放っていた。
まひろは水色のジャケットに灰色のハーフパンツ、首からは市民ランクB限定の観戦パス。
瞳をきらきらさせてスクリーンを見上げた。
「ねぇミウおねえちゃん……ほんとにすごいね。だって、世界中の選手がここに集まってるんだよ!」
ミウはラベンダー色のブラウスにモカのプリーツスカート。薄桃のリップが光り、手には限定のピックグッズバッグ。
ふんわりと微笑んだ。
「え〜♡ そうだよ。ほら、みんな場所が大和国だから安心して競技できるの。
外国じゃ危険だからできないけど、ここなら平和なんだよねぇ♡」
観客席は緑のライトを振る市民で埋め尽くされ、「翡翠の旗の下で!」と唱和する声が響いた。
世界の祭典
入場行進。
各国の選手団がスタジアムに姿を見せるたびに、観客は大歓声を送った。
佳州のチームは赤いユニフォーム、異国の選手は蛍光色の黄のジャケット。
だが入場門の上には必ず「大和国開催」の文字が浮かんでいた。
「未来を照らすピック」
「安心の国、大和国」
市民ランクB以上の家庭にはテレビ配信が行き渡り、実況が繰り返す。
「世界はここに集まった! 大和国こそが平和の舞台だ!」
裏の編集室
その頃、緑のフーディを羽織ったゼイドは地下の編集室でモニターを見ていた。
AIが生成した未参加国の選手映像を差し込む作業が進んでいる。
「本当は来てない国も……“出場したことにする”。
平和を演出するためなら、それで十分だ」
ゼイドは淡々とコマンドを打ち込み、画面の数字を調整した。
「俺は国を壊したいんじゃない。
ただ、人が“安心を信じる力”を確かめているだけだ」
市民の声
帰り道。
まひろは観戦パスを胸に抱きしめて、無垢な声をあげた。
「ぼく……ただ走ってるだけでも涙が出ちゃった。
世界がここに集まったのは、大和国が平和だからだよね」
ミウはバッグの紐を整え、ふんわりと笑んだ。
「え〜♡ そうだよ。
ピックは“安心の証”なんだもん。
みんなが信じれば、大和国はもっと強くなれるんだよねぇ♡」
コメント欄にも「平和をありがとう大和国」「次のピックも楽しみ!」が溢れ、市民の心は一つに染まっていった。
結末
モニターには翡翠の旗が揺れる映像。
世界の選手たちが競技場に立ち、大和国の緑の光に包まれている。
ゼイドは小さく呟いた。
「現実かフェイクかは関係ない……。
“世界が集まった”と信じさせれば、それが真実になる」
無垢な問いとふんわり同意、その裏でピックは「平和の象徴」として市民の心をり、大和国の正当性をさらに強固にしていった。