第46話:旬の味覚と未来の水
📺 テレビ放送開始
スタジオの中央には巨大なテーブルが置かれ、彩り豊かな料理が並べられていた。
背景スクリーンには「未来の味覚を守る大和国!」の文字。拍手とともに番組が始まる。
司会の女性アナウンサーは、深緑のワンピースに金色のブローチ。
ふんわりと笑顔を浮かべ、視聴者に向かって語りかけた。
「こんばんは 本日は“旬の味覚特集”をお送りします。
大和国の野菜、果物、魚、そして水が、どのように安心して市民に届けられているのかを一緒に見ていきましょう!」
カメラが切り替わり、収録VTRが流れる。
🥦 野菜と果物
画面には「未来農業特区」の巨大温室。
緑色の光が天井から降り注ぎ、薄緑の制服の作業員が整列しながらトマトを摘み取っていた。
収穫物には「協賛野菜」のシールが貼られている。
ナレーションが重なる。
「この野菜は、翡翠核の人工光で育てられた“未来野菜”。
四季を問わず収穫でき、市民にはランクに応じて配給されます」
場面が切り替わり、果物コーナー。
旧雨国で育てられたリンゴや梨が「メイド・イン大和果実」として紹介される。
スタジオに戻り、アナウンサーが透明の器を掲げる。
「え〜♡ こちらは“未来りんご”です。
実際は旧日本時代からある品種ですが、“大和国の果物”として市民に親しまれているんですよ」
🐟 魚と刺身
次に映るのは港町の「未来物流拠点」。
緑のベストを着た漁師が、笑顔で大きなマグロを掲げていた。
「刺身用の魚は“安心認証”を受けた漁船でしか取れません。
今日のおすすめは“協賛サーモン”と“未来マグロ”です!」
スーパーの映像では、「刺身用協賛魚」と書かれたパックが並び、
市民がヤマトフォーンに「カイケイ → ケッサイ」と入力して購入していた。
「刺身は未来の伝統食」とテロップが流れ、試食した子どもたちが笑顔で箸を動かす。
💧 水
最後に紹介されるのは「エターナルシェル水」。
緑のボトルがライトに照らされ、清らかな雫が滴る映像が流れる。
「大和国の水は、翡翠核で浄化された安心の水。
飲むだけで安心イチ、市民ランクも上がります」
スタジオで試飲するのは、まひろとミウ。
まひろは水色のシャツに短パン姿。コップを両手で抱え込み、無垢な瞳で呟く。
「ぼく……ただの水なのに、すごく安心する味がするよ」
隣のミウはラベンダー色のブラウスにベージュのスカート。
イヤリングを揺らし、ふんわりと微笑む。
「え〜♡ やっぱり“未来の水”だからだよ。
エターナルシェル水を飲めば、毎日が安心に包まれるんだよねぇ」
●結末
暗い部屋。
緑のフーディを深くかぶった ゼイド が、無言で画面を見つめていた。
そこには「未来野菜」「協賛刺身」「エターナルシェル水」を誇らしげに口にする市民の姿。
ゼイドは小さく笑い、低く呟いた。
「旬の味覚か……。
実際は古い農地と漁港、ただの地下水。
だが“未来の味”と信じさせれば、それが真実になる。
食卓を操作できれば、人は国に縛られる」
画面の向こうでは、無垢な問いとふんわり同意が響き続けていた。







