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その後、ようやく落ち着きを取り戻した優子は、涙を堪えながらも、事情聴取に応じた。
拓人との関係、事件当時の状況など、彼女は冷静を装いながら、訥々と答えていく。
優子は、前科持ちというのもあり、自分が拓人を殺した、と疑われるのではないか、と危惧していた。
けれど、空港の防犯カメラや、当時、展望台にいた人が、カメラやスマートフォンで、写真や動画を撮っていたそうで、証拠として提出されているらしい。
「岡崎さんの事情聴取は、これで終了となります。ご協力、ありがとうございました」
目つきの鋭い刑事が、穏やかな眼差しを優子に向け、軽く頭を下げる。
「お大事にして下さい」
メガネの刑事は、先ほどと同じように、お見舞いの言葉で結ぶ。
彼女の事情聴取は、一時間半ほどで終了した。
「刑事さん」
優子が声を掛けると、病室から出て行こうとする二人の刑事に振り向かれた。
「…………犯人を……必ず捕まえて下さい。お願いしますっ……!」
ベッドの上で、ゆっくりと頭を下げた彼女は、お辞儀をしたまま動かずにいた。
「岡崎さん。顔を上げて下さい」
猛禽類のような目つきの刑事が、落ち着いた声音で優子を宥める。
「我々が全力で捜査に当たります。そして、犯人は必ず逮捕します」
メガネの刑事が、芯の通った声色で、キッパリと言い放った。
「よろしく…………お願い……しま……す……」
視界が揺らぎそうになるのをグッと堪えて、優子は拓人を殺めた犯人の追跡を、二人の刑事に託した。
病室の扉が閉まり、再び森閑とした雰囲気に包まれる。
ベッドの上で、呆然とする優子は、窓辺に映る景色を朧気に見やった。
無機質に建ち並ぶビルが、どことなく、空虚な自分と重なり合っている気がしてならない。
刑務所から出所して、約三ヶ月。
出所したその日、人生を悲観していた優子の目の前に現れた、中崎拓人という男。
さらに、拓人から『身体を売れ』と命令されて出会った男が、かつての職場の上司、松山廉。
二人の男と関係を結ぶも、廉には別れを告げ、拓人は、彼女の目の前で命を絶たれた。
色々な事があり過ぎた、この三ヶ月間。
(家族には死んだ人間扱いされた私は…………もう……本当に…………一人……なんだ……)
途方もない孤独感が襲い掛かり、優子は、枕に顔を埋めて慟哭した。
コメント
1件
悲しくて仕方がないよ😭