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#恋愛
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後ろを向くと、親父がニヤけた顔をしていた。
(待ってくれ、それって同じベッドで寝ろってこと!?)
「じゃあな、いい夜を過ごしてくれ」
「待っ……」
親父がにやりと扉を閉めていく音がした。完全に抗えない空気だった。
(マジかよ……)
仕方なく俺はサフランと一緒に部屋に入り、ベッドの端に腰を下ろした。サフランも隣に座り、無言で俯いていた。彼女も親父の行動に困惑しているのだろう。しばらく俺とサフランは無言で過ごした。
少しした後、彼女はポツリと呟いた。
「ユウト、今日はありがとう……」
「あぁ……」
「……ずっと、怖かったんだ。瘴気のせいで、ただの役立たずになっちゃうんじゃないかって……」
彼女の声が少しだけ震えていた。
「ユウトが……私の夢を、取り戻してくれたんだよ。……ありがとう、ユウト……」
そのまっすぐな感謝の言葉に、俺は小さく息を吐いた。
(……ただの掃除で、誰かの夢を救えるなんてな)
俺は純粋に嬉しかった。
わけのわからないクレーム客と一緒に命を落とし、パーティを追放され、一時はどうなるのかと不安もあった。でも今、こうやって俺の能力が認められている。この世界に受け入れられている、という事実にほっと胸を撫で下ろす。
「ふぁぁ……」
隣で、サフランが小さく欠伸をした。今日一日で色々なことがあって疲れたんだろう。
(さすがに一緒に寝るのは、サフランも嫌だよな)
「あの……床で寝るっすよ」
サフランが驚いてこちらを見た。
「ダメ! ユウトは私の命の恩人なんだから、そんなの絶対ダメ!」
サフランは必死に首を振った。
「じゃあ……一緒に寝るのか?」
「えぇっとそれは……」
そう返すと彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまった。俺は小さくため息をついて、床を見た。
床にはゴミが落ちており、部屋の隅にはホコリが積もっているのが見える。
(……この様子……明らかに数ヶ月掃除されてないな……)
サフランは相変わらず無言でピクリともしない。緊張しているのが手に取るようにわかる。
「……気にしなくていいっすよ。俺は気にせず掃除し……いや、寝るから」
俺は立ち上がり、掃除を始めようとしたその瞬間だった。
「行かないで……!」
サフランが俺の手首を掴み、勢いよく引き寄せた。
「えっ……」
予想外の力にバランスを崩し、俺の体はサフランの上に覆いかぶさるような形になった。彼女の鼓動が、服越しに直接伝わってくる。ドクン、ドクンと激しく、それでいて愛おしい音。
……初めて、異性の体温をこんなに近くで感じた。
「あ……」
顔が近い。
サフランの頬は真っ赤に染まり、とろんとした瞳が俺を見つめている。彼女の柔らかな体温と、甘い香りが俺の理性を焼き切ろうとしていた。そして胸が……当たっている。
(……やばい。これ、完全に掃除どころじゃない……!)
サフランは、恥ずかしそうにした後、ゆっくりと目を閉じた。
俺は思わず息を止めた。
(……これは、期待してるってことなのか……?)
俺はシーツをぎゅっと握りしめた。
甘い香りに惹かれるようにゆっくりと顔を近づけていく。小さくてぷるんとした唇に寄せられる。俺は喉を鳴らし、覚悟を決めて……
すると、すぅ……すぅ……と息をする音が聞こえた。
(ん……?)
なんと彼女は、この究極の密着状態のまま、安心しきって深い眠りに落ちていたのだ。
(待ってくれ、期待した俺の気持ちは……!?)
俺の心臓は、期待と落胆と安堵でぐちゃぐちゃになっていた。
だが、そんな俺をよそに、サフランの寝顔は天使のように穏やかだった。
(……まあ、いいか)
俺はため息をつき、彼女から離れ、布団をかけた。起こさないようにそっと横に腰を下ろす。
(流石に疲れていたんだろう。今日は色々なことがあったからな……)
ホッとすると部屋の中にあるものが目につく。
さっきも確認した部屋の隅の埃、床に落ちているゴミだ。一度気にし出すと、頭から離れなくなってしまう。
( ……っそ、掃除しなければ……!!)
――
翌朝、俺は寝不足だった。対して、サフランは肌もツヤツヤでピンピンしている。寝不足の俺を見て、親父は安心したように言った。
「昨晩はお楽しみだったな」
「ま、まぁな……」
(一晩中掃除をしていたからな……っ!!!)
サフランが寝たあと、床の掃除、ベッド下の埃までピカピカにしたのだった。おかげでサフランは大回復したようだが。
(くそ、眠い……)
親父は古い地図を広げて俺に見せた。そして、地図の北の方にあるバツ印を指を差す。
「ユウト、村を出てしばらく歩くと、ハルディンの街がある。そこでは旅に役立つ施設も揃ってる。まずはそこを目指すといい」
その街は今いる街よりもかなり大きく描かれていた。
「それじゃ出発だよっ目指せ、ハルディンの街……!」
「わっ、待っ……」
サフランは俺の手を掴んで、元気よくドアの向こうに走り出した。
「娘を任せたぞ……」
――
とある街。
部屋の中で、大きな帽子を被った女性が倒れている。彼女の周りには酷い煤と焦げたニオイが充満していた。
「たす…け…て……」
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