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別れの挨拶をして晴美ちゃんは戸口に立って手を振った、あたしも笑って手を振って歩いていく
彼女と友達になれることはわかっていた
一緒の時間を過ごし、 旅行の計画を立て、子供達が通う学校の話をする所をいつも想像していた。ただ残念なのは彼女があたしが想像していた完璧な母親じゃなかったこと
彼女もあのフードコートのママ友軍団と同じ、自分達が恵まれていることを分かっていない
彼女達が送っている人生はなんて愚かなことか、幸せを探しているはずなのに、結局は毎日生きていく事に精いっぱいだ
存在すること、期待を持ち過ぎないようにしようとするけど、実際は無益に過ごしたり、時間を無駄にしたり、送れたかもしれない別の人生の事を考えたりしている
そして次にもっと金持ちだったら、もっと綺麗だったら、もっと若かったら、もっと運が良かったら、もう一度初めからやり直す事が出来たらと考えている
ないものねだりの欲望は底なしのザルだ
なんて罪深くて、金に飢えていて、人を裏切り、疲れ果てて、嫉妬深い生き物なんだろう
まるであたしと同じではないか、彼女はそんなチンケな存在ではいけないのに
面白くない
だんだん何でも手に入れているのに不満だらけの彼女に腹が立ってきた、不幸になればいいのに、泣けばいいのに、ざまぁみろという事態が彼女に起こればいいのに
道の角を曲がり、晴美ちゃんの家が見えなくなった所であたしはポツリと呟いた
「そう・・・・赤ちゃんいらないなら貰ってもいいわよね・・・・」