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拓真が目を覚ますと、白い蛍光灯の光が視界を刺した。身体は動かず、手足は冷たい金属製のベルトで拘束されていた。隣を見ると、亮太も同じように拘束されているが、まだ目を覚ましていない。
「ここは……どこだ?」拓真が呟くと、突然スピーカーから低い機械音声が響いた。
「対象B、意識回復。準備を進行せよ。」
部屋の隅にあるガラスの扉が開き、白衣を着た男が入ってきた。その表情は無表情だが、どこか焦りを感じさせる雰囲気があった。
「おい、何をするつもりだ!」拓真が叫ぶと、男は一瞬だけ周囲を警戒するように見回し、そっと指を口に当てた。
「静かにしろ……私は敵じゃない。」男は小声で言った。「君たちを助けるためにここに来た。」
「助ける? 一体何者だ?」
男はため息をつき、名札を見せた。「俺は田中誠司。ここの研究員だ。君たちを見ていると、もう黙っていられなかった。」
「どういう意味だ?」拓真が怪訝な顔をする。
田中はポケットから小型の端末を取り出し、手早く周囲のカメラとマイクを無効化した。そして低い声で語り始めた。
「この施設は『アルファ・プロジェクト』の中枢だ。政府の名のもとに行われている実験は、兵士を作り出すための人体改造だ。だが、それだけじゃない……君たちを利用してさらに恐ろしい計画を進めようとしている。」
「利用……? どういうことだ?」拓真の目が険しくなる。
「君たちが持っていたUSBだ。それにはプロジェクトの全データが含まれている。特に『狼男兵士』の暴走リスクを示す証拠がな。それを公開される前に奪還するため、君たちを捕らえたんだ。」
亮太が微かにうめき声を上げて目を覚ました。「ん……ここは……?」
「説明は後だ。」田中は手早く拓真と亮太の拘束を外した。「このまま君たちをここから逃がす。だが、急がなければならない。」
「逃がすって、お前はどうするんだ?」亮太が鋭い目を向ける。
田中は苦笑した。「俺にはやるべきことがある。内部に協力者がいるんだ。その人と共に、この計画を内部から崩壊させる。」
拓真と亮太は互いに目を見合わせた後、頷く。「分かった。信じる。」
「こっちだ。」田中は手招きし、二人を秘密の通路へ案内した。その途中、警報が鳴り響き始めた。
「警告! 収容対象が逃走中!」
田中は険しい顔で言った。「急げ。奴らが来る前に出口にたどり着け。」