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彼女は店の入り口に立つ僕の姿に目を見張ると、
「――ユウくん!」
大きく叫んで僕に駆け寄り、その綺麗な瞳を潤ませながら、
「会いたかった……!」
と嬉しそうに僕の体を強く抱きしめ、熱い口づけを―――
……ってな展開を期待していたのだけれど。
「だれー?」
真帆はその場に立ったままだったし、後ろから顔を出した小さな女の子と男の子の姿に僕は一瞬呆気にとられる。
「あら、シモフツくん。随分早かったですね。帰ってくるの、夕方って話じゃありませんでしたっけ?」
特に何の感慨もなさげに真帆は言ってのける。
「ねぇねぇ、だれ―?」
「たれー?」
女の子|(年長さんくらい?)と男の子|(年少さんくらい?)が真帆を見上げながら同じ質問を繰り返して、
「んー? 私のお友達です」
真帆は腰を屈めて子供たちに視線を合わせながらそう答えた。
「おともだち……」
と二人のちびっこは僕を見上げて、ぽかんと口を開ける。
この春に高校を卒業してから遠方の大学に入学し、初めての夏季休暇。
約半年ぶりに真帆に会うために、僕は予定を前倒しして真帆の家を訪れたのだけれど……
「えっと……この子たちは?」
訊ねると、真帆は取ってつけたような驚いた表情で、
「ひどい! 私たちの子供のことを忘れちゃうなんて!」
とふたりのちびっこを抱きしめる。
ちびっこは「きゃ~!」と楽し気に笑っているが――
「いやいやいや」
と僕は首を横に振り、
「こんなかわいい子供たちのこと、僕が忘れるはずないだろ!」
ここは真帆のノリに付き合ってやろう、と僕は真帆の抱きしめるちびっこたちを、真帆の腕ともども抱え込むように、
「――嗚呼、子供たち! 父は会いたかったぞ!」
なんて言ってやった。
ちびっこはケラケラと更に大きな声で笑い始めて。
「……あなたたち、何してんの?」
奥から怪訝な顔をして現れたのは、僕の知らない女性だった。