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定期演奏会の次の日は半日授業の土曜日だったが、クラスメートから朝から授業前にからかわれた。
川野: 「昨日二人でデートしたんだよね。」
川野さんは僕がどうするやいなや、天宮さんと二人揃っていることを確認して寄ってきた。
さっちゃん: 「ちょっと…
あまり言わないでよ。」
天宮さんは恥ずかしそうに言った。
川野さんは僕の顔を見てにやっとした。
K(僕): 「・・・・」
ハル: 「デートって何?」
川野: 「夜のデート。」
K(僕): 「ちょっと…
定期演奏会行っただけでしょ。」
そうなのかもしれなかったけど、僕は慌てて付け足した。
塚越: 「それって何時に終わった?」
いつものメンバーが当然それに食いついてきた。
K(僕): 「…
8時ごろだったかな?」
塚越: 「やっぱり夜のデートだ。」
川野: 「それに定演のあとは二人っきりで帰ったよね。」
さっちゃん: 「だから、ちょっと…」
川野さんも怪しく言うものだから、天宮さんも慌てて言った。
博: 「怪しいなあ。
」
川野: 「何かされなかった?」
K(僕): 「あのねー・・・」
さっちゃん: 「全然ないんだから。」
つきあい始めて1か月くらいでもこんなことが続いた。
その他の先生: 「英語の授業、始めるぞ。」
1校時(1時限目)は英語であった。
気がつくと英語の先生が教壇に立っていた。
その他の先生: 「such a ~ でそのような~ って訳すぞ。」
K(僕): 「(サッチャ?
びっくりした・・・)」
suchという言葉にドキッとした。
天宮さんをちらっとみると、別に普通に授業を聞いていた。
K(僕): 「(意識しているのは僕だけか・・・)」
そんなことを思っていると、
岸本: 「サッチだって。
呼んでるよ。」
1学期同じ班であった岸本は、さっそく授業中にもかかわらず、天宮さんに向かって言ってきた。
さっちゃん: 「・・・・」
クラスのみんなも天宮さんの方を見た。
さっちゃん: 「・・・・」
天宮さんがうつむいて黙っていると・・
岸本: 「K、サッチだってよ。」
続けて僕がターゲットになった。
中学生特有のこじつけであった。
クラスみんなには僕たちの関係は知られていたので、クスクスと笑いが起こった。
僕は平静を装うとしたけど、天宮さん関連で突っ込まれると、自然と顔が赤くなった。
さすがにまだ先生は僕たちのことは知らないので、何のことかきょとんとしていた。
その他の先生: 「おい、岸本、静かにするように。」
先生の静止で何とか、その場は収まったが、suchという単語出るたびにこの後の授業も注目の的になった。
その他の先生: 「今日はここまで。」
こういう授業が終わると、次の試練は授業後に来るのは恒例だった。
博: 「これって何て読むんだ?」
博は岸本と同様に一学期の班員で、塚越は今の班員、二人とも野球部に所属していたので仲が良かった。
僕が自作野球ゲームを考案して、休み時間にハルとともに塚越も博も野球部であったためか、興味を示し、自作野球ゲームで遊んだ関係で、自然と4人は仲良くなっていった。
3学期は4人で同じ班になって修学旅行で班行動しようってことになっていた。
そういう中でもあったので博はいつも休み時間になると僕たちの班に来ていた。
博はノートにS・U・C・Hと書いてきた。
授業が終わると、仲のいい友達もこの始末だった。
K(僕): 「博も?」
博もハルも、塚地も仲良し4人で集まって、大騒ぎしているから、隣に座っている天宮さんや里見さんも何が起こっているか、容易に想像できたようだった。
里見さん: 「また言われているよ?」
さっちゃん: 「やだぁ・・・」
博はそのまま天宮さんの方にもそのノートを見せた。
さっちゃん: 「もう…」
博: 「それで何と読むんだっけ?」
再び僕にふってきた。
塚越: 「such anのほうが分からないなぁ。
K、なんて発音するんだっけ?」
博: 「あ、そっちの方がいいね。」
いつの間にか僕の周りにできた輪は天宮さんや里見さんを含めた大きな輪になっていた。
K(僕): 「サッチ、アン・・・」
わざとsuchとanを分けて発音したのだが…。
博: 「ほら、呼ばれているよ。」
天宮さんに向かってからかいだした。
K(僕): 「サッチ、アンだけど。」
博: 「またKが呼んでるよ。」
そんなのお構いなしだった。
みき: 「男子はすぐにからかうんだから・・・
ねえ、さっちゃん。」
その輪にいつのまにか、みきも混じっていた。
みきは違う班であったが、塚地のことが好きらしく、そのためかよく僕たちの班に遊びに来ていた。
結果として、博や僕、ハルとも話するようになっていったが、僕が天宮さんと話しづらいようにみきも塚地とは話しづらいようだった。
さっちゃん: 「ほんとにもう・・・」
天宮さんは前の席にいる里見さんに助けを求めた。
里見さん: 「からかいすぎだよね。
でもつきあっているから…ねぇ。」
さっちゃん: 「里見ちゃんまで・・・」
里見さん: 「ふふふ、うそ。
みんなひどいよね。」
そんなこともあり、高校生になっても、当然suchはでてくるので、そのたびにさっちゃんのことを思い出していた。
なお博はこの時から天宮さんのことをサッチって呼ぶようになった。
付き合っていると言っても極度の照れ屋の僕は話するのも一苦労だし、一緒にデートを誘うなんて口が裂けても言えなかった。
両想いっていう表現のほうが正しく、そうなると家にいても天宮さんがそばにいるっていう事実が欲しかった。
そんなこともあり、付き合って1か月くらい経つと、天宮さんの写真が欲しくなった。
みんなでの集合写真はあったものの、一人だけ写っているアップの写真が欲しかった。
机に写真立てで飾るのが夢だった。
ただ写真が欲しいというのも一大決心だった。
それでも意を決して清水の舞台から飛び降りてみた。
K(僕): 「ねえ、天宮さんの写真が欲しいんだけど。」
さっちゃん: 「えー、みんなで写っている写真ならいいよ。」
K(僕): 「一人で写っている写真がいいんだけどなぁ。」
さっちゃん: 「写真写りが悪いからダメ。」
K(僕): 「大丈夫だよ。
撮ってある写真でもいいけど。」
さっちゃん: 「いい写真なんてないし、恥ずかしいから絶対ダメ。」
って断られていた。
絶対と言われると、それ以上欲しいとは言えなかった。
プリクラもない時代であり、なかなか厳しかった。
現在の俺: 「(嫌われたくなかったから強引に欲しいなんて言えなかったなぁ。)」
そんな僕を見て、みきが近づいてきた。
みき: 「さっちゃんの写真が欲しいの?
いいよ、撮ってきてあげる。」
K(僕): 「本当?
一人で写っている写真がいいな。」
みき: 「OK、まかせて。
だけど、条件があるの。
3学期、塚地と同じ班になるなら、私も一緒に獲って。
交換条件でどう?」
K(僕): 「じゃあ、交渉成立で。」
写真を欲しかった僕はその条件を快諾した。
現在の俺: 「(これがみきとの関係の始まりだったのかもしれない。)」
その日の放課後。
みき: 「さっちゃん、お願いがあるんだけど。」
さっちゃん: 「なあに?」
みき: 「Kが写真欲しがってたでしょ。」
さっちゃん: 「うん。」
みき: 「明日、カメラ持ってくるから写真撮らせて。」
さっちゃん: 「えー…
恥ずかしいからいやなんだけど。」
みき: 「大丈夫、さっちゃんかわいいから。
それに何枚か撮って、さっちゃんが渡してもいいっていうのをKにあげるようにするよ。」
さっちゃん: 「でも…」
みき: 「それだけKはさっちゃんのこと、好きなんだからいいじゃん。」
さっちゃん: 「うーん…」
みき: 「ね?」
さっちゃん: 「じゃあ、仕方…ない…」
天宮さんは何とか応じた。
次の日、早速みきはカメラを持ってきた。
この当時、デジカメもなければ、「写ルンです」もなく、一眼レフのカメラを持ってきた。
放課後、
みき: 「さっちゃん、そこに立って。」
さっちゃん: 「やっぱり、撮るの?」
みき: 「だってKがすごく欲しがっているよ。」
さっちゃん: 「恥ずかしい…」
みき: 「大丈夫、かわいいから。
でもちょっと表情硬いよ。」
さっちゃん: 「改まってカメラ向けられると、緊張する。」
みき: 「少し笑って。」
天宮さんは少し笑った。
みき: 「そうそう。
何枚か撮るね。」
みきは数枚撮ると、カメラを天宮さんから外した。
みき: 「現像したらまた持ってくるね。」
さっちゃん: 「うん。」
後日、教室で天宮さん一人が冬の制服でうつっている写真をみきはくれた。
カメラマンの腕がいいのか、被写体がよかったのか、慣れないほほえみ程度の笑顔だったが、写真慣れしていない初々しさはお気に入りの、想い出の写真となった。
現在の俺: 「(昔からみきはやると決めたらやり遂げるタイプだったなぁ。)」
K(僕): 「写真ありがとう。」
さっちゃん: 「あんまり見ないで・・・。
恥ずかしいから。」
その写真は念願の机の上に飾っては、テスト勉強中に眺めていた。
普通なら彼女の写真を見てぼーっとするところだが、席も隣だといつか勉強を訊かれたり、天宮さんが授業中に差された時に備えてすぐに答えを導かなければならない使命感に駆られ、それにそばで見られていると思うと、自然と勉強が捗った。
そんなこともあり、2学期の期末試験も無事に終わった。
12月も後半になるとクリスマスが近づいてきた。
いつもはクリスマスなんて気にすることはなく、親からのプレゼント待ちだったが、今年は大切なイベントとなった。
僕はクリスマスプレゼントを買いに自転車で隣町のデパートへ行った。
K(僕): 「女の子にあげるものって、何がいいんだろう?」
クリスマスが近いため、雑貨屋には中高校生の女の子も多く来ていた。
そうなると、その中に入っていくのも結構勇気がいるのであった。
現在の俺: 「(つきあって2カ月程度で、好みもほとんど分からないから、選ぶのは大変だったなぁ)」
K(僕): 「天宮さんのイメージは清楚で、きっとロマンチックなんだろうから・・・」
現在の俺: 「(中学生でお小遣いでプレゼント買うからその中で洒落たものを選ぶのはさらに大変だった。)」
K(僕): 「何がいいんだろう・・・」
僕は店内をあちこち、同じところを何回も回ったり、違う店舗を探したりして、あちこち移動した。
K(僕): 「筆記用具っていってもなぁ・・・
好きな歌手も知らないからレコードってわけにもいかないし…」
1時間くらいあちこちと探し回った。
探し回った結果、やっぱり雑貨屋に戻ってきた。
K(僕): 「ねえ、ライトなんかどうかな・・・。」
現在の俺: 「自分で決めるしかない。」
雑貨屋に戻ってきてもなかなか決まらなかった。
好きな人に自分で選んだ初めてのものだったから、ものすごく悩みに悩んだ。
K(僕): 「多分日中は学校や部活だから、部屋にいるのは夜が多いと思うので、電気スタンドにしようかな?
それに青が好きって言ってたからこれにしようと思うけど…」
現在の俺: 「まあ、そういうことになるよね。」
結局、2時間くらい悩んでその青色の電気スタンドを買った。
12月24日(月)、この日から年末に向かって急に寒くなり、早朝マイナス5度を記録していた。
登校する時間帯も氷点下であり、寒い1日であった。
町内は畑も多く、あたりには寒い張り詰めた空気から、畑で出た木が燃やされたようなにおいが立ち込めていた。
K(僕): 「えーと、天宮さんへのプレゼントを忘れないように…」
もう冬休みも近く、半日授業になっていたので、持っていくものも少なかった。
自転車の前の篭に通学カバンを入れ、その上にプレゼントを置き、手で押さえながら学校に向かった。
教室に着くと、天宮さんは自分の席に座っていた。
里見さんはいなく、天宮さん一人であったので
K(僕): 「天宮さん、クリスマスプレゼント。
好みがわからなくて…
好みじゃなかったらごめんね。」
天宮さんに手渡した。
さっちゃん: 「ありがとう。」
すると、悪友のみんなが次々に集まってきた。
博: 「サッチにあげるプレゼントか?」
塚越: 「朝からアチチだね・・・」
ハル: 「ハハハ。」
ハルはそれをみて笑っていた。
みき: 「あれ、さっちゃんからは?」
さっちゃん: 「私からのプレゼントはもうちょっと待っててね。」
博: 「リボンをつけて「わ・た・し」じゃないの?」
塚越: 「それはやばいね。」
さっちゃん: 「・・・」
みき: 「朝から刺激的なんだから・・。」
みんなからのからかいに僕と天宮さんはうつむくしかなかった。
勝手に暴走する4人はさらに僕たちを置いてけぼりにして、勝手に盛り上がっていた。
そのすきに僕はまた天宮さんに話しかけた。
K(僕): 「年賀状送ってもいい?」
さっちゃん: 「うん。
私も送るね。」
現在の俺: 「(その後、あの電気スタンドはどうなったのか、天宮さん本人に訊かなかったなぁ。)」
こうして奇跡に近い幸せな2学期は終了し、そのまま、冬休みに突入した。
クリスマス以降、雪は降らなかったが、寒い日は続き、1月1日を迎えた。
早起きが苦手な僕であったが、生まれて初めて日の出前に起床した。
辺りはまだ薄暗いものの、東の山の空は明るくなってきた。
K(僕): 「初日の出ってきれいなんだ。
でも、それにしても寒い…」
身震いしながら部屋のストーブをつけた。
両親や妹はまだ寝ていたから、静かな朝に石油ストーブの音だけが響いていた。
朝日が山際から顔を出すと、陽の光は光線のようにまっすく向かってきて、机の上にあるさっちゃんの写真が照らされ、幻想的な、厳かな1月1日のはじまりを迎えた。
その彼女の写真を両手にもち、
K(僕): 「それにしてもかわいいよね。
今年もいい年でありますように…。」
幸せな一年を願った。
自分の部屋からゆっくり居間に下りて行った。
こんなに早く目が覚めたのは年賀状のせいだった。
天宮さんがそんな過激なことを書くとは思わないけど、家族の人に見られたら恥ずかしいので一番に見に行かなければならなかった。
そんなに早く配達されるわけではなかったのだが、気持ちが高ぶってつい早く起きてしまった。
TVをつけると、晴れ着を着ていた女性アナウンサーが現れた。
どこのチャンネルにしても同じような光景であったが、ただぼーっとしてこたつに入りながら時間を過ごした。
母: 「随分早いわね。」
徐々に家族のみんなも起きてきて、居間に集まってきた。
妹: 「天宮さんの年賀状目当てでしょ。」
母: 「お昼近くじゃないと来ないわよ。」
家族も僕の珍しい行動は想定内であったようだった。
ようやく昼近くに、予想通りに家の郵便受けからボトっていう音がした。
その音を聞いて、僕は外に走っていった。
100枚以上の中から自分宛ての年賀状を抜き出し、その中からさっちゃんからの年賀状を探した。
この当時、模範的な葉書のように、ほぼみんな表に相手の住所、名前、そして左端に自分の住所と名前を書いた。
K(僕): 「あった!」
宛名から天宮さんの字だと分かった。
K(僕): 「僕の苗字ってこう書くんだ。
(将来結婚したら、天宮さんは僕の苗字をこのように書くのかな?)」
勝手に妄想しながら、すぐに裏面を見た。
玄関のドアを開ける前に天宮さんの年賀状を読んだ。
さっちゃん: 「年賀状:
新年あけましておめでとうございます。
昨年はいろいろとお世話になりました。
今年もよろしくお願いします。
クリスマスのプレゼント、遅れてごめんね。
もう少し待っててください。
そして、できれば・・・」
最後の意味深な一文で玄関のドアノブを触りながら、考え込んだ。
K(僕): 「できれば・・・ってどういうことだろう?」
なかなか家の中に入ってこないので、
妹: 「お兄ちゃん、何しているの?」
妹が見に来た。
妹: 「年賀状来ていないの?」
K(僕): 「来ているよ。」
妹: 「来ているなら早く持ってきてよ。
あ、天宮さんから来ていないから落ち込んでいるの?」
K(僕): 「来てます。」
妹: 「じゃあ、見せてよ。」
K(僕): 「ダメ。」
妹: 「ケチ。」
その後も天宮さんの年賀状を見て、「できれば・・・」の意味をずっと考えていた。
毎年元旦は家族で初詣に行き、そのまま祖父母の家に寄るのが恒例であった。
祖父母の家でも考え、家に帰ってきてからも考えたものの分からないものは分からなかった。
家のこたつに座ってTVをみていると、
妹: 「このできればって何?」
K(僕): 「できればって?」
妹が訊いてきた。
妹を見ると、右手に天宮さんの年賀状を持っていた。
K(僕): 「こら、何で見ている?」
僕は妹から天宮さんからの年賀状を奪おうと右手を伸ばそうとした。
妹: 「多分ね、私の予想だっと、もう少しかっこよくなってじゃない?
同じさっちゃんの意見だよ。」
K(僕): 「おなじさっちゃんでも、可愛らしさが違うし、優しさもあるところが大違いだ。」
妹: 「ふーんだ。
妹にやさしくしない男はもてないよ。」
K(僕): 「天宮さんだけに好かれればいいんだから。
ほんとにませがきだな。」
妹: 「お兄ちゃんのほうがませがきだよ。
中学生のくせに彼女作るんだから。」
母: 「さっちゃんの勝ちだね。」
こんな感じでやられることもあった。
現在の俺: 「(さすがにこの歳になるといろいろ可能性を考えられるけど。
もし俺の希望高校を知っていたのなら、まず考えられるのは「同じ高校に行きたい」であろう。
ただまだ中学2年生だがらそこまで考えていないだろう。
2番目は、里見さんと仲が良かったので、「三学期も同じ班になりたい」って言いたかった可能性もある。
もしそうだった場合、あの時はそれに気づけず、同じ班にしてあげれなかった。
第三の可能性では、「もっと俺と仲良く話したりしたかった」のかもしれない。
あまりしゃべれなかったからそう思うかもしれないけど、これもまだ2ヶ月しか経っていないのでそう思うにははやいかもしれない。
他は、「3学期も同じ班になりたい」もある。
どの可能性にしても、30年以上も過ぎているのでさっちゃん本人も覚えていないだろうから、永遠に正解はわからないかもしれないと思う。)」
三学期。
恒例の班替えがあった。
当然僕は三学期も班長になった。
篠井先生: 「3年生の修学旅行は3学期の班で班行動するからね。」
3年生の4月にある修学旅行の班決めでもあったので、事前に男子は仲のいい男子グループと、女子も仲のいい女子不ループが3-4名ずつ同じ班になることになっていた。
小石さん: 「私たちと保坂さんたち、さっちゃんたちのカップルはそれぞれの彼と同じ班にしてね。」
クラス44名中6名がカップルであり、班長会議で反対意見も出なかったので、暗黙の了解となった。
こんな感じで僕の班は男子は仲良し男子グループとしてハル、塚地、博が決定し、女子の天宮さんは僕の彼女として必然で僕の班になることまでは決定していた。
残りの女子数名を決めるのみであった。
みき: 「約束通り、塚地と同じ班にしてね。」
みきには天宮さんの写真の件で借りがあった。
篠井先生: 「班を決めるよ。」
小石さん: 「Kはまずさっちゃんは確定でしょ。」
K(僕): 「う、うん。」
改めてみんなの前で言われるとやっぱり恥ずかしかった。
小石さん: 「さっちゃん、欲しい班はいないよね。」
川野: 「欲しいけど、Kに譲るね。」
小石さん: 「そんなにいじめなくても・・・ねぇ。」
川野: 「あ、分かった?」
班長会議で笑いが起き、また僕はうつむくしかなかった。
小石さん: 「私は、彼と同じ班にしてよ。」
篠井先生: 「はいはい。」
K(僕): 「(小石さんはいつも平気でみんなの前で言えていいなぁ。)」
僕は羨ましかった。
篠井先生: 「Kの班はさっちゃん以外は誰にするの?」
K(僕): 「ハルと、塚地と博です。」
博とは1学期に同じ班で、塚地は2学期同じ班で僕やハルと仲良くなり、博と塚地ももともと仲が良く、男子4名はこうして決まった。
写真の件でみきとは塚地と同じ班になる以上はみきとも同じ班になる約束があったので班長会議で指名し、残り女子もみきの希望で女子1名を指名し、7人班となった。
K(僕): 「(これで三学期も、修学旅行も天宮さんと一緒だ!)」
博: 「また同じ班だね。」
塚越: 「修学旅行も一緒だ。」
ハル: 「またよろしく。」
博: 「でもKとサッチのイチャイチャを見なきゃいけないのはつらいね。」
さっちゃん: 「もう…」
みき: 「・・・・」
珍しくおとなしいみきがいた。
K(僕): 「約束通り同じ班にしたよ。」
みき: 「うん・・・」
みきも僕と同じで好きな人の前に出るとおとなしく、しゃべれなくなるタイプだった。
現在の俺: 「(これを書いて気付いたけど、なんであの時、僕は里見さんも取って8人班にしなかったんだろう。)」
篠井先生: 「班が決まったから、また副班長や係の仕事、席順を決めて、あと班員全員の名前を画用紙に書いて提出して。」
K(僕): 「副班長なんだけど。」
僕は他の6人に尋ねた。
博: 「そんなの決まっているよ。」
みき: 「そうだよね、さっちゃん以外誰がするの。
Kだってさっちゃんがいいでしょ。」
K(僕): 「まあ…」
さっちゃん: 「・・・・」
みき: 「いいよね、さっちゃん。」
さっちゃん: 「うん・・・」
さすがに3回目だったが、1、2回目のように嫌がることはなく、天宮さんは副班長を引き受けた。
K(僕): 「後、席順だけど。」
みき: 「私たちは邪魔しませんので。」
塚越: 「二人の仲を裂くことはしないよ。」
博: 「そうそう、サッチと隣がいいでしょ。」
ハル: 「残りの席順は俺たちが勝手に決めておくから。」
K(僕): 「・・・・」
さっちゃん: 「・・・・」
こんな感じで3学期もみんなにやられっぱなしだった。
K(僕): 「全く…ねぇ。」
さっちゃん: 「ウフフ…」
そんな感じでさっちゃんの笑顔に救われた。
篠井先生: 「休憩を挟んで次はクラスの会長や副会長を決めるよ。」
僕はトイレを済ませてくると、天宮さんと小石さんが何か話をしていた。
さっちゃん: 「えー…」
僕は教室にもどってきた途端に天宮さんと目が合った。
K(僕): 「どうしたの?」
さっちゃん: 「小石さんがね、3学期は二人で副会長してほしいんだって。」
K(僕): 「副会長?
今は小石たち二人でやっている・・・」
1学期、2学期は小石さんたちが二人で男女副会長をやっていた。
当時の3組は特別男女の仲が悪いわけではなかったが、男女別々の意見が出ると、「男子が…」「女子が…」って意見の相違が真っ二つに割れることが多かった。
そうすると、男女副会長がカップルであったので意見の調整をして、なんとか3組として意見がまとまるようになっていた。
その役回りが回ってきた。
小石さん: 「どう?」
さっちゃん: 「私はできないって言ったんだけど。」
小石さん: 「大丈夫、副会長なんてやることないから。」
K(僕): 「でもね、学級会の意見をまとめるの、大変じゃない?」
小石さん: 「私たちにできたから大丈夫だよ。」
さっちゃん: 「どうする?」
K(僕): 「どうしようか?
班長だってはじめてやったばかりで、クラス役員なんてやったことないし。」
川野さんも僕たちのやり取りを聞いてやってきた。
川野: 「二人でやれば小石さんみたいに仲良くなれるんじゃない?」
K(僕): 「仲良くって…ねぇ。
それよりも副会長なんてできるかな…」
さっちゃん: 「そうだよね…」
小石さん: 「また?
ほら、男のKがやるって決めて。」
川野: 「恋のキューピットのお願いだから、きかないとね。」
K(僕): 「うーん…」
篠井先生: 「はい、みんな席について。
3学期の学級会長と副会長を決めるよ。」
クラス会長は男子、女子1名ずつ立候補し、投票の結果、男子の保坂に決まった。
篠井先生: 「次に副会長だけど、立候補はいる?」
誰も立候補はいなかった。
篠井先生: 「副会長の推薦は?」
小石さん: 「はい。
Kくんと天宮さんを推薦します。」
篠井先生: 「ほかに立候補とか、推薦はいる?
では投票ね。
適任と思う人を書いて、投票箱に入れて。」
事前の根回しのためか、ほかに対抗馬なく、信任投票の様相で僕たち二人は副会長に選ばれた。
篠井先生: 「3学期の男子副会長はK、女子は天宮さんでいいわね。
二人とも、しっかりお願いね。」
K(僕): 「はい。」
さっちゃん: 「はい。」
岸本: 「いちゃいちゃしないで頼むぞ。」
クラスに笑いがおき、担任も笑っていた。
篠井先生: 「修学旅行があるから、ちょっといつもより仕事が多いけど、二人じゃ大丈夫ね。」
生まれて初めての副会長であった。
K(僕): 「(まあ、二人でするなら悪い気はしないけどね。)」
学級役員が書かれた画用紙に会長の下に副会長として天宮さんと二人で連名で書かれた。
班長同様、二人の並べられた名前にちょっとうれしかった。
篠井先生: 「ちょっと早いけど、学級会は終わりね。
新役員は残ってちょうだい。」
会長の保坂と、僕たち2人は教壇のある前方に集まった。
篠井先生: 「会長の保坂は今週金曜日に各クラスの会長の集まりがあるから出席して。
早速修学旅行についての話し合いがあるから。
前会長から資料もらっておいて。
会長はもう行っていいよ。」
会長がいなくなり、僕たち2人が残った。
篠井先生: 「副会長は修学旅行の男女別の責任者になるけど、2月になったら集まりに参加して。」
K(僕): 「はい。」
篠井先生: 「それと、2人も小石さん達と一緒?」
K(僕): 「はい?」
さっちゃん: 「…」
篠井先生: 「小石さんが言ってたから。
今度2人で副会長することになると思うからって。」
K(僕): 「…」
篠井先生: 「どうやら本当みたいね。
真面目な二人だから仕事はちゃんとしてくれると思うけど。」
少なくとも担任を含めたクラス全員には知れ渡っていた。
篠井先生: 「いつからなの?」
K(僕): 「11月頃からです…」
篠井先生: 「Kは南高を目指してたわね。
11月の学力テストも、12月の期末テストも成績はむしろ上がっているから、さっちゃんはいい存在なんだね。」
さっちゃん: 「…」
天宮さんは終始俯いていた。
篠井先生: 「二人とももういいわ。」
みきが班員になったことで、みきが天宮さんとも話すようになり、それに乗じて僕も話すようになったけど、二人で話をすることは人目が気になって、隣の席にいても相変わらず会話は必要最小限しかできなかった。
現在の俺: 「(よく考えたら1学期から連続して3学期まで、厳密には3年生の1学期まで1年以上、さっちゃんは俺の隣の席にいたんだ。)」
みきが同じ班になったことで、いろいろ相談もしやすくなった。
天宮さんの写真も直接お願いして断られたけど、みきにお願いしてもらえるようになったことで、またみきがいろいろ協力してくれることもあって、直接天宮さんに聞けないこともみきを通せば聞けるようになった。
お互い恋愛感情もなく、それがまたいい意味で気をつかわなくていいし、みきも塚地のことで相談してくることで一種の「協力関係」が培われていた。
K(僕): 「どうしたら天宮さんと平気で話ができるようになるかな?」
みき: 「そんなの考えても無理じゃない?
私も塚越のまえでは、思うように話しできないもん。
でもさっちゃんと付き合っているんだから、話せるんじゃないの?
さっちゃんだって待っていると思うよ」
K(僕): 「好きすぎてダメなんだよね。
付き合う前のほうがまだ話せたけど。」
みき: 「分かるけどね。」
さすがに天宮さんの前では本人の相談ができないので、幸恵さんがいないときに相談した。
天宮さんが帰ってくると、相談は中断した。
2学期中はさまざまな出来事が起こりすぎて、ついていくのが精いっぱいで一生懸命であったが、三学期になると落ち着いてきたせいか、天宮さんと付き合っていることが幸せすぎてかえって不安も強くなっていった。
K(僕): 「運動は苦手だし、格好いいわけでもなく、そんな僕とつきあってくれることが不思議なんだけど・・・」
わら半紙のあの一文も気になっていた。
K(僕): 「いつかその人のほうがいいっていうことないかな・・・」
そのためにも
K(僕): 「変なこと言ったり、嫌われるようなことしないようにしないと・・・」
好きになれば好きになるほど不安になり、でもこんな僕とつきあってくれたことに感謝していたが、それでも天宮さんにはつきあってくれたことに負い目を感じ始めた。