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「お母さん……ねえ、お母さん! なんで、なんでお金貸してくれないのよ!」
その声はコンクリートで響いた。ベッドとクローゼット、姿見鏡以外の何もない四畳半は拘置所を彷彿させる。棚がないがために、書類等が床に直接積まれている点を除けば、生活の一つも感じないほどに整理されている。
『みらみら』こと誉田美蘭の炎上から、三年という月日が経過した。離婚の際に分与された共通口座の、およそ五〇〇万は二か月前に使い切り、そこからは日雇いバイトを始める。
しかし、自身が人ではなくモノとして扱われているという状況が、これから一生付きまとってくるのだという現実を実感し、一日で挫折。
今は滞納してしまっている家賃の分だけならと思い、母に連絡をかけ、きっぱり断られたところだ。
美蘭の気づいた時、既に通話は切れていた。どこへ行くはずもない息をマイクに吐きかけ、口元を歪める。両腕を脱力すると、そのまま背後のベッドへ腰を下ろした。
朝焼けの光と小鳥の囀りが、カーテンの揺れとともに流れる。世界が新たな日々に染まっていく中、私は未だにあの雨に囚われていた。今でも笑うたびに、後悔と自己嫌悪がこの身を殺し、胃酸がのどを焦がす。そう、私だけが、私だけが何も変われずにいる。
あれからの日々はすべてが地続きで、朝が夜を超えずに、永遠の白夜となっているのだ。今では、干からびたミミズすら偉大に思える。
鐘がなった。インターホンを確認すべきとはわかっていても、その行動が面倒に思え無視した。だが、十なったあたりで不安になった。鐘が止まらなかったのだ。止むどころか、徐々に感覚が狭まってきている。
それは、ホラー映画演出のような胡散臭さを放っていたものの、その単純さには逆に恐怖を感じた。その向こうにいるのが、人間でない何かのように思えた。