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扉を開くとともに左足が挟まれた。ドアチェーンの逆アーチを跨るように手が伸びてくる。節足動物の足のように規則的に荒ぶるそれは、意地でもなんとか中に入ろうと、チェーンを外そうとしているらしい。
「来ないで!」
美蘭が叫ぶと、その動きは簡単に止まった。
「どうしても、でしょうか……? 知りたくはないのですか、なぜ自分にこんな不幸が訪れたのか」
「なぜ、あなたはここへ?」
「三年が経ったからです。二人が婚姻関係にあった期間がそれほどでしょう?」
「ええ。でも、どうしてあなたなのよ」
ほんの僅かな切なさを帯びた声で発すると、諦めるように彼女を中に招いた。その瞳には、互いに闘志を映していなかった。
短い廊下を進む二つの音が完全に重なる。狭いキッチンから零れ落ちたリンゴ。それには目もくれず、ベッドに横並んで座った。シチュエーションに反し、緊張も下心もない。
「座り心地の良い、いいベッドですね」
「ですが我が家では、これを椅子という事にしているの。久しぶりね、しのちゃん」
彼女はその言葉に対する返答はしなかった。あくまでただ、三年前の出来事についての説明を行い、何か本当の目的を果たそうとしているらしい。
「単刀直入に聞くわ。どうして私の復讐は失敗した。あなたは私を裏切った?」