コメント
4件
2人ともお母さんの元に行けたらな…、天才がいなくなるのもダメかもしれないけど、優しい人がいなくなってもダメなんだよ?不条理な世の中だ…!!
父が俺の方をむき、言う。
父「らだおも医者になるよなぁ」
その言葉にその目に声が出ない。
異様な気持ち悪さと恐怖と空間が俺の言葉を塞ぐ。
ちゃんと今ここで言わないと。
ここで言わなきゃもう言えなくなると思い俺は勇気を振り絞って言った。
らだお「…お、俺、は、警官になりたい」
その瞬間、急にその空間が歪んだ。
ボコッガンッドンッ
らだお「ガハッ、ゴホッ、」
空間が歪んだのは父に殴られていたからだった。
父「お前ッ、何を言っているのかわかってるのかッ?!」
ガンッドンッボコッボコ
痛い。
警察を目指すだけでこんなにもなるとは。
痛い。
もっとちゃんと考えて言えれば。
痛い。
俺は何度も殴られた。
何度も何度も、痛くて痛くて声も出なくて、
何も出来ない。
少し目を開けると腰が抜けたように座る弟が見えた。
良かった、ラディは大丈夫だ。
ラディ「兄、貴…?」
そう呼ばれる声が聞こえた。
でも俺は殴られているせいか気を失いかける。
父は満足したのか部屋を出ていった。
腕が足が腹が全身が痛い。
声が出ない。
それでも先程までの異様な気持ち悪さは消えていた。
ラディは無事みたいで、良かったとそう思った。
ラディ「ァ、あ、…ァ゙ッあ゙あああああああッ、」
ラディがそう叫んでいる声が聞こえた。
ごめん。
何も出来ない兄貴でごめん。
何もしてやれない兄貴でごめん。
俺はそのまま気を失った。
目を開けると、太陽が窓から見えた。
もう空の1番上にいる太陽。
動こうとすると痛くて痛くてしょうがなかった。
横を見るとただ怯えている弟がいた。
耳を手で押え下を向き丸くなる弟。
何も聞こえないよう、何も見えないようにしている弟に俺は声をかける。
らだお「ラ、ディ、…」
ラディ「ッ兄貴ッ!」
ラディはすぐに俺に近寄った。
まだ体が痛くてあまり上手に動かせない。
ラディの顔を見ると真っ青になっていて涙ぐんでいた。
ラディ「ぁ、ッ、ごめんなさい、僕何も出来なかった、ッごめんなさい、ごめんなさいッ、」
ラディは何度も何度もそういった。
俺はそんなラディを痛く動かしにくい体で弱く、弱く抱きしめた。
少し時間が経ち落ち着いたところで俺たちは自分の部屋に戻る。
運がいいのか父はいなく、何もされずに戻ってこれた。
部屋に戻ると急激に眠くなりベッドに横になる。
時間を見れば真昼なのに部屋の中はまるで真夜中のようだった。
俺は目を閉じる。
ラディを絶対守らなければ、そう思う。
そして俺は眠りについた。
数日がたっても父の暴力は収まらず殴られ、蹴られ、気を失い、眠りにつく日々だった。
幸いご飯は何とか食べれるようで、生き延びていた。
ラディはそんな俺を見て父にやめるよう説得するがどうにもできず、父に医者について教えてもらおうとすることで俺への被害を減らしてくれていた。
そんな中、母が退院した。
母は精神的にやられていてもう何も出来ないらしかった。
そして母は離婚届を父に出す。
父は怒っているように見えずそそくさと離婚届をかき母に出していた。
俺たち子供はどちらの親に着いていくか決めなければならなかった。
母の状態が悪く世話をできるのが1人しかできないらしく考えていた。
俺はもう決めていた。
俺はラディと話す。
ラディ「兄貴、?」
天才がこの世からいなくなるこの世界。
おかしいこの世界を。
生きろ。
生きて生きて楽しく生きろ。
どうか弟だけは、
どうかラディだけは、
この世界を生きて、自由に生きて、
願うから。
だから、
らだお「ラディ、お母様の方へついていけ」
ラディ「なん、で、」
俺はラディの目を見て話す。
ラディは動揺していた。
らだお「お前を守るためだ、だから、」
ラディ「それじゃ、兄貴はッ」
らだお「大丈夫、大丈夫だから、ね?」
ラディの言葉を遮るように言う。
ラディが父の方に残ればきっと死んでしまう。
大丈夫、
それはラディを安心させる言葉ではなく自分に暗示をかけるような言葉だった。
そして俺は言う。
らだお「ラディ、お前は自由に生きろ」
俺は逃げるようにラディから離れる。
守るって決めたあの日からずっと願ってた。
どうやったら父から離すことができるのか。
これできっとラディを守れる。
そう思った。
数日後
弟は母の元にいった。
母の元と言っても祖父母の方だろう。
俺は父の元に残る。
ラディを守るために。
天才であるあいつを死なせないために。
俺は家に残った。
to be continued…