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###まだ春を知らない君へ###
第一章 桜の季節に、君と
春歌は、きらめく陽光の下、咲き乱れる桜並木を自転車で駆け抜けていた。満開の花びらがひらひらと舞い、甘やかな香りがふわりと鼻をくすぐる。誰もが「春が来た」と浮足立つこの季節が、春歌は何よりも好きだった。彼女にとって、春は希望に満ちた季節。…のはずだった。
「お兄ちゃん、遅い!」
公園のベンチに座り、春夜の到着を待つ。今日は兄と一緒に、おばあちゃん家へ行く約束をしていた。春歌はスマホを取り出し、待ち受け画面に設定している春夜とのツーショット写真を眺めた。腕を組み、不敵な笑みを浮かべる春夜と、その隣で満面の笑みを浮かべる自分。幼い頃から、春歌の世界の中心にはいつも春夜がいた。
春夜は、誰もが恐れるヤンキー集団のリーダーで、その筋では「番犬の春夜」と恐れられている。しかし、春歌の前ではとびきり優しい「お兄ちゃん」だった。一見怖そうに見えるその瞳の奥には、どこまでも深い愛情が宿っていることを、春歌だけは知っていた。
(お兄ちゃん、早く来ないかな…)
兄への恋心を自覚したのは、いつの頃からだっただろう。他の男子に興味を持てないのは、きっと春夜への想いが大きすぎるからだ。春歌は、その恋が実ることのない禁断の恋だと分かっていた。それでも、この胸の高鳴りを止めることはできない。
その時、ベンチの向こう側で何かが物陰に隠れる気配がした。チラリと視線を向けると、そこにいたのは同じクラスの填真だった。彼はいつも人目を避けるように過ごしている、内気な少年だ。
「あれ? 填真くん?」
春歌が声をかけると、填真はビクッと肩を震わせた。その顔はみるみるうちに赤くなり、小さな声で「は、春歌さん…」と呟く。彼とは、クラスの係決めで一緒になったくらいで、まともに話したことはなかった。いつも縮こまっている印象の彼が、なぜこんなところに?
「どうしたの? そんなところで隠れて。」
春歌は満面の笑みで話しかけた。填真は慌てて言葉を探す。
「あ、えっと…その…」
何を言っても支離滅裂になる填真に、春歌はくすくす笑った。
「もしかして、桜見に来たの? きれいだよね!」
そう言って、春歌は満開の桜を見上げて嬉しそうに目を細めた。春歌のその横顔は、春の光を浴びて、まるで花びらのように輝いて見えた。填真は、春歌の優しい声と、その屈託のない笑顔に、胸の奥がキュンと締め付けられるのを感じた。自分に優しくしてくれる人は、これまでほとんどいなかった。だから、春歌の優しさが、内気な彼の心を震わせる。この時すでに、填真の心には、春歌への淡い恋心が芽生え始めていた。彼はまだ、それが「恋」だと自覚していないけれど。
(…春歌さん…)
声にならない想いを胸に、填真はただ、春歌の横顔を見つめることしかできなかった。彼の「春」は、まだ始まったばかりだった。
今日好きに影響されて恋愛漫画書いていこうと思います笑
おひな様が可愛すぎる(๑>◡<๑)
ではまた次回!
コメント
2件
もしかして春夜くんて番長くんと優等生と同じキャラですか?