「ん……?」
ソファでドラマを観ていた最中。
テーブルの上で震えたスマホを手に取ると、そこにはメッセージもなしに送りつけられたスタンプがあった。
「もふもふ犬がタコ踊りしてるやつ」
一体どんな意図があってこのスタンプを選んだのか、謎すぎて逆に興味がわく。
(これで何を伝えたいんだよ……)
少し考えて、既読をつける前に、ふとカレンダーアプリを開いた。
最後に涼太と会ったのは……五日前。
しかもあの日も取材終わりに少しだけすれ違っただけで、ゆっくり話したわけじゃない。
「……そゆことか」
笑いながら既読をつけ、すぐに返信を打つ。
『俺に会いたい?』
既読からすぐに、また別のスタンプが届く。今度は顔が赤くなって涙目の猫がうずくまってるやつだった。
思わず吹き出す。
「めっちゃわかりやすいな……」
普段は大人の余裕満載なくせに、寂しいときだけスタンプで必死にアピールしてくる。
そういうところが、可愛くてしょうがない。
『明日、ちょっとだけ空いてるから。俺んち来る?』
送ってから数秒で、スマホが震える。
『行く』
今度はちゃんと文字。
すぐに、またタコ犬が飛んできた。
「気に入ってるんだな、その犬……」
ぼそっと呟いて、スマホを置いた。
会えるとわかったからか、もうスタンプは来ない。
たぶん今ごろ、ソファでにやけてるんだろうな。
いつも甘えてこない涼太が、スタンプで必死に「寂しい」って伝えてくるのが――好きなんだよな。