俺は康二の家に乗り込んだ。
何も知らない康二は、いきなり俺が訪ねて来たことに驚き、泣いて喜んだ。
涙のバーゲンセールだ。
俺に嫌われたと言って泣き、俺が来てくれたと言って泣く。
そして決定的なあの朝に、俺を抱いた後に謝りながら泣いたわけだ。
畜生、なかったことになんてできてないじゃないか。
🧡「コーヒー淹れるわ」
康二はいそいそと自慢のコーヒーの用意を始めた。挽きたての豆の香りがキッチンにたちのぼり、そういえばこいつの淹れてくれるコーヒーは美味かったなと思い出す。
友達だった頃、泊まった日の朝はいつも康二の淹れてくれるコーヒーの匂いで目が覚めたのだった。
🧡「どうぞ」
一口飲む。
文句なしに美味い。
康二はにこにこして俺を見ていた。
🧡「やっぱり綺麗やな…。写真撮ってもええ?」
💙「嫌だ。今日は話があって来たんだ」
当初の目的を思い出す。
そう、俺は今日こそこいつを完全に断ち切るために来たんだった。
💙「もう俺のこと好きとか言うな」
🧡「なんでなん?」
💙「困る」
🧡「俺、困らせてる?」
💙「どうしたらいいかわからん」
🧡「しょっぴーは普通にしてればええんよ」
💙「だからそれが出来ないって言ってんの」
🧡「なんで?」
ああ、もう頭が混乱して来た。
康二はまっすぐに想いをぶつけてきてるだけで、それに応えられない強力な理由が俺にはない。好きな人ができたとか、恋人がいるとか、出家するとか…。
💙「ふふっ」
出家する、のくだりで可笑しくなって笑ってしまった。いや、俺、まだ俗世にいたいわ。
🧡「しょっぴー、俺のこと嫌い?」
💙「嫌いでは、ないけど」
🧡「じゃあ、好きなん?」
💙「極端だな」
🧡「キスしてもええ?」
そう言うが早いか、康二はいきなりキスしてきた。
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最高かよ!