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それから、依鈴と話す時間が少しずつ増えていった。
講義が終わったあとに一緒に帰ったり、学食で昼飯を食べたり。
二年前とは違う。
今度は、会おうと思えばいつでも会える。
それが、俺には嬉しかった。
「漣くん」
「ん?」
「この前言ってた本、読んだ」
「本当?」
「うん。面白かった」
「だろ?」
「でも、主人公の考え方はちょっと面倒くさい」
「そこがいいんだよ」
「漣くんって、ああいう人好きそう」
「……どういう意味?」
「そのままの意味」
依鈴はそう言って笑った。
こうやってくだらない話をしているだけなのに、俺は幸せだった。
二年前は、ほんの数日しか一緒にいられなかった。
だから今は、少しでも長く依鈴の隣にいたかった。
「そういえば」
依鈴がふと口を開く。
「二年前、私のこと探した?」
「……え?」
「夏が終わってから」
心臓が跳ねた。
「……少しだけ」
「少し?」
「結構探した」
「そっか」
依鈴は前を向いたまま、少し笑った。
「私も、漣くんがいないかなって図書館に行ったよ」
「え?」
「でも会えなかった」
その言葉に、胸が締めつけられた。
「じゃあ、あの夏……」
「うん」
依鈴は立ち止まった。
「私も、もう一度会いたいと思ってた」
風が吹く。
春の風に、依鈴の黒髪が揺れた。
あの夏と同じ光景。
でも、今度は消えていかない。
「……依鈴」
「なに?」
「俺、二年間ずっと――」
言葉が喉につかえる。
好きだった。
会いたかった。
忘れられなかった。
伝えたい言葉はいくらでもあった。
けれど、まだ言えなかった。
「……いや、なんでもない」
「変なの」
依鈴は小さく笑う。
「じゃあ、また今度聞く」
「うん」
そう答えながら、俺は思った。
二年前、言えなかった言葉を。
今度こそ、ちゃんと伝えたい。
あの夏の続きを――
今度は、終わらせないために。
コメント
1件
うわあ……もう、この距離感がたまらなく好きです。依鈴が「私も探してた」って言った瞬間、胸がぎゅっとなりました。二年前の夏がちゃんと続いてて、でもまだ言えてない言葉があるもどかしさ。漣くんの「伝えたい」って気持ち、すごく伝わってきます。このまま少しずつ、ちゃんと向き合っていけるといいな……。次が気になります🤍