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ほんとにいい作品ばかり…凄すぎます〜!続き待ってます!
皆さんお久しぶり(?)です。
あんな時間経ってないねww
いやぁね、こう…普通に勉強はできてるんだよ?
ちゃんとワークも終わってきてるし……
でもね、そう云う期間に限って、想像力って働くものなんだ。語彙力は皆無だけど(笑)
でも今日はもう勉強やる気ない☆
↑誰かこの女を叱ってくれ。
という訳で私にとってはまぁまぁ久しぶりの投稿です!
見る人によっては腐気味かもしれないし、語彙力ないのでご注意を!
それでは〜、Start!
敦は一枚のメモ紙を持って、夜の冷えた街を歩いていた。
「えっと……確かこのメモでは此方……」
敦が辺りを見渡し、時折メモに視線を移しながら探す。
そのメモ紙は、太宰から貰った物だった。
太宰は幹部。その事は敦でも耳にしている。
二年も音信不通な恩師については、敦は風の便りから凡てを聞いていた。
びたっと、敦が足を止める。ゆっくりと顔を俯けた。
悔しそうな表情をしながら、敦は紙を掴む指に無意識に力を入れる。クシャッと、紙のシワ寄れる音が響いた。
「…………」
敦はほとんど無断で此処に来た。
――過去の上司と云えど、現に敵組織の幹部に会いに行くなんて、国木田さん達は難しい顔をするだろうな。
――若しかしたら此処に行かせてくれなかったのかもしれない。
――けれど、そんな事はないって僕は思った。
敦は紙を渡されて直ぐ、買い物を終わらせて鏡花に頼み事をした。
一人で探偵社に帰る事。
国木田達にこの事を伝える事。
敦が無断で行った事。
鏡花が国木田達に伝えてから恐らく結構な時間が経っている。それでも尚、敦の元に国木田達が来ない理由。
明確だ。
その必要がないから。
何故なら皆、本当は太宰に会いたいのだから。
***
敦はドアを潜った。
不思議な雰囲気に包まれる。
店内に這入った瞬間、先程迄歩いてきた道──────否、全てが、この空間と切り離されているようだった。
妙な感覚に陥る。この不思議な雰囲気故だった。
紫煙の香りが敦の鼻孔をつついた。店内を見渡しながら階段を降りる。
少し空気がこもっていた。地下なのだろう。窓が一つも無い。
カウンターの席に敦は座る。
老バーテンダーが杯を拭いていた。
「………」
敦の頬に冷や汗が垂れ流れる。
――何で此処!!?
そう、敦はとてつもない恐怖に包まれていた。
自分の財布を時折アテにしてくる上司(太宰)が現には居ないとは云え、敦は日頃から節約中だ。
――そしてなんたって給料日前っ!!
だからこそだ。
バーテンダーの背にあるボトル────ワインや蒸留酒だろうか、敦の目には空のボトルだけでも、高額に見えた。
――いやいや、普通に底ら辺の居酒屋とかで良かったのに何でこうも高そうな所に……ていうかなんかもう雰囲気からして、凄そうなんですけど云々かんぬん……。
びっしりと敦の顔に汗が浮かび上がる。頭を悩まされた。
――うーん…こう云うのって矢っ張り、何か注文したほうが良いのかな…、でも僕給料日前だし……。
刹那、コップが視界に現れる。
「えっ…」思わず声を漏らした。
「あのっ…これって……」
バーテンダーに尋ねる。老バーテンダーはゆったりとした口調で云った。
「トマトジュースです、如何もお酒が苦手なように見えましたので…」
「………」予想外の言葉に敦は目を見開く。
――まっ……
感激のあまり敦は涙目にり、口元に手を寄せた。
――マスター//!!
「有難う御座います!」
ペコペコと敦は頭を下げる。バーテンダーはそれに小さく微笑した。
トマトジュースを一口飲む。
敦は改めて店内を見渡した。
まるで幽霊のようにプカプカ浮いている感覚に陥っていた。
あまり嗅ぐことのない紫煙と、褐色の電燈が辺りを照らしているからだろうか。こんな空間は、敦にとっては初めて味わったものだった。
刹那、硬い靴音が敦の耳に響く。
視線を向けた。
「ケホッ……」
店に入ってきた男は口元に手を寄せていた。
「は!?」敦は思わずカウンター席から立ち上がる。
男は視線を敦に向けると、少し顔をしかめた。
そして同じように、敦も眉間にシワを寄せた。
「何で此処にお前が…!!」
敦が声を張り上げる。
「煩いぞ人虎。太宰さんに呼ばれたのだ。薄々若しやと感じていたが……矢張り貴様が居たか」
静かに階段を降りながら、男────芥川龍之介は、敦の一つ分空けた隣のカウンター席に座る。
「太宰さんが……?」
「嗚呼、『偶には仲良く会話をする時間も必要だよ!殺し合いなんかできない環境に連れてくから、しないでね!』とあの方から仰せ付かった」
――だから此処なのか……。
敦は溜め息混じりの息を吐き、改めてカウンター席に腰を下ろす。
「何になさいますか?」
バーテンダーが芥川に声をかけた。
「……僕もこの者と同じのを」
「かしこまりました」
***
「………なぁ芥川」
敦が声をかける。
「何だ?」芥川はトマトジュースを一口飲んで、カウンターに置いた。
ゆっくりと、敦が芥川の方を向く。
敦は冷や汗を流した。
実は先程から、敦の鼻孔には2つの臭いが通っていた。
一つは元々此の酒場に漂っていた『紫煙』。
そしてもう一つは────
「薄っすらと“血”の臭いがするんだけど……お前怪我でもしてるの?」
その言葉に、芥川の表情はピクリとも動かなかった。
「惨殺任務後故…敵の返り血だろう。抑々僕が怪我をするなどの失敗(ヘマ)をする訳が無い」
「……そっか」
敦がコップに視線を戻す。
――じゃあ何で………返り血が何処にも見当たらないんだろう…。
***
「あっ、そうだ……もう一つ聞きたかったんだけど」
敦の声に、芥川が視線を向ける。
敦は真面目な表情で、含みのある口調で云った。
「そっちでさ……太宰さんってどんな感じ?」
「………如何いう意味だ?」
「いや……だから、太宰さん元気にしてるかなって」
「………」
「まぁ…元気っていうか、太宰さんが普通に大丈夫そうなら、僕も国木田さん達に佳い土産ができるし………」
敦はゴニョゴニョと言葉を誤魔化す。芥川はそれを静かに見ていた。特に何も思わない、そんな表情で。
だがその心の奥には何かがあった。只彼はソレを表に出さないだけである。
息を吸い、そして云った。
「……以前の…マフィアに居た頃と変わらぬ」
「否、僕その頃の太宰さん知らないんだってば……」
「…そうか」
「だから“そうか”じゃなくて────」
「最初は」芥川が、敦の言葉を遮るようにして云った。
「最初は……太宰さんでは無かった。まだ光を宿していた」
芥川が静かに語る。その瞳の奥には、何処か哀愁が佇んでいた。
「僕等マフィアの仕事を行う際、太宰さんは何処か苦しそうだった。ふと気付くと、何時もあの人は何処か遠くを見つめていた」
芥川は顔をしかめ、何か悔しそうに手を握りしめる。
「それ故、僕はあの人の存在を遠く感じていた」
「………お前は、如何したんだ?」
目を見開きながら云った敦の問いに、暫く芥川は黙った。
その沈黙の後、芥川は小さく息を吸う。
そして息を吐き、云った。
「何もしておらぬ。あの人が変わらぬよう、普段通り接したまでだ」
その言葉に、敦が目を丸する。
「────プッ…あははっ!」そして笑い出した。
「何がおかしい?」
少し苛立ちを帯びた声で、芥川は敦に聞く。
敦は笑いを堪え、幸せそうな笑みを浮かべながら云った。
「別に?なんでもない!」
「………」
敦は嬉しかった。
太宰がマフィアに行っても元気な事と。
太宰が変わらないよう、居場所を作ろうとしている人間が居てくれた事に。
──────敦は、嬉しかった。
――ありがとな、芥川。