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あーはい。
すみません、此方の投稿マジでサボってました。
でもね、あと一・二話で終わるんですよ……。
それまでお付き合い頂けると嬉しいです…!
第十話、Lupin其のニ
どうぞ〜↓↓↓(本日語彙力消失日)
「二人共、遅くなったね」
階段を降りる音と、太宰さんの声が聞こえる。
僕と芥川は振り返った。
思わず目を見開く。太宰さんの右腕にギプスな固定されているのだ。
「太宰さん、その腕っ…!」
「あぁ、一寸怪我してね。でもこれくらい軽い方だよ?」太宰さんはニコッと微笑む。
「ゔ、ッ……あぁ?敦じゃ…ねェ、か………」
太宰さんの肩に腕をまわしていた中也さんが、声を絞り出して云った。
――血のにおい…!!
中也さんも、何処か疲れているように見えた。
「あのっ中也さん大丈夫ですか……?!」
「嗚呼…大丈夫だ……」
そう云った中也さんは太宰さんから離れ、カウンター席につく。
「よし、全員揃った事だし、一杯いこうじゃあないか」
楽しそうに大宰さんが微笑んだ。
「マスター私何時もの」
「俺は蒸留酒……」
「止めなよ中也。君直ぐに酔うでしょ、中也のは炭酸割りで」
「あ゙ぁ!?勝手に決めんな!」
中也さんと大宰さんがぎゃあぎゃあと子供のように喧嘩する。
――お店の迷惑になってる気が………。
「おい…芥川、お前後輩だろ?止めてこいよ」小声で僕は芥川に話しかける。
「愚者め、あのお二方の争い(喧嘩)を止めるという事は首が飛ぶという事だ」
口元に手を寄せながら、小さく芥川は咳き込む。
「首が飛ぶってなぁ………」
「止める事などできぬ」
「…………はぁ」
溜め息混じりの息を吐く。
「二人ともっ」刹那、太宰さんが僕達の間に顔を出して話しかけて来た。
「成人してるんだからお酒くらい呑みなよ」
楽しそうに大宰さんが云う。
――此れってアルハラじゃ…………。
「いえ、あの……僕給料日前で…………」
「大丈夫大丈夫!今回私の奢りだから」
「えっ……でも…」
「ねっ!」
大宰さんが、圧をどんどんかけてくる。
「では僕は適当なものを」
芥川が横から云う。
「畏まりました」マスターが静かに云った。
「なっ……」
――芥川の奴!僕一人残して逃げたなっ…!!
「…………」僕の視線に気付いたのか、芥川が此方を向く。
すると、『貴様も疾く決めろ。時間の無駄だ』とでも云うような目線を僕に向けてきた。
「ぐぅ……」
芥川を睨みながら顔をしかめる。
「ほら敦君、芥川君も決めたのだから疾く君も決め給え」
キラキラした笑顔を浮かべながら、再び圧をかけられる。
「っ……じゃあ…」
マスターの方を向く。「僕でも飲める感じのをお願いします……」お酒の名前がよく判らない為、僕は変な注文をしてしまった。
「ふふっ…」
大宰さんがやり切ったような、達成感のある笑顔をする。
「____…」
***
「どうぞ」
視界に透明感のある酒が入った酒杯が現れる。
息を呑んだ。
「あの、太宰さん………本当に奢りで佳いんですか…?」
太宰さんの方に向きながら、恐る恐る僕は聞く。
「うん」
明るい声で太宰さんは返事をした。
「あっ、でも中也だけは自腹ね」
サラリと中也さんに告げる。
「あ゙ぁ!?ンでだよ!俺にも奢れや包帯付属品!」
「金あるんだから自分で払ってよ帽子置き場」
「ンだと手前!」
中也さんが声を荒げ、太宰さんの胸倉を掴んだ。
「無駄に高い装飾品付けるくらい金があるのだろう?ていうか本当にその趣味の悪い帽子何処で買うの?」
「手前とは価値観が一ミリも合わねェからな!そういう手前こそ使い道の無ェ金、俺に使えや!!」
再び喧嘩が始まりそうな雰囲気が漂う。
被害をくらわないよう、僕は太宰さん達から少し離れる。
「それ以上近付くな人虎。何の為に貴様と席一つ分開けたと思っている?」
「別にお前に近付きたくて移動したんじゃ無いし!止めろよ変な誤解するの!」
「誤解などしておらぬ、貴様に近づきたくないだけだ」
「僕だって近付きたくない!!」
「ふん、虎のくせによく吠える」
「虎は異能だ…!お前こそ芝刈りの仕事に転職したら如何だ?!」
「面白い………その毛皮ごと刈り取るか?」
「芝刈り機故障させてやる…!」
「上等だ人虎、貴様の毛皮を絨毯にして太宰さんに贈る」
「そんなので喜ぶ訳ないだろっ!」
「何だと貴様っ!」
「お前とは趣味が合わないって云ったの!!」
新旧双黒の喧嘩が終わる迄、暫くお待ち下さい。
***
「もう一杯……!」
酒に酔いながら満面の笑みで中也が云う。
ハイになってるな、中也……。
「中也もうお酒禁止ー」
中也から酒杯を取る。
「あンでだよ返せや俺の酒杯っ…!」
「駄目駄目。如何せ頭ふわふわして、前見えてない程に酔ってるでしょ?」
「酔ってねェ!」
声を張りながら中也は私を睨む。
「じゃあこの手に触れてご覧」中也の前に右手を開いて出す。
前に重心をかけながら中也は手を動かしたが、小指をかすり前のめりになる。
「おわっ!」
勢いで私の上に中也が乗っかって来た。
「はい、アウト〜」
上から目線で嘲笑しながら私は云う。
「ぐ………」
眉間にシワを寄せながら、中也が上目遣いで睨んでくる。
顔が赤く火照ってる……これは相当酔ってるね。
「ほら立って」
中也の腕を軽く引っ張っる。ふらつきながらも中也は立ち上がった。
「芥川君、外に車が止めてあるから中也の事乗せて来て」
「承知」
カウンター席から芥川君が立ち上がる。
「中原さん、行きますよ」
中也の腕を肩に回して、芥川君が云う。一本、彼が足を踏み出す。
「それともう一つ」
彼の耳元で、私は云った。
「車の助席に箱がおいてある。中に色々入ってるから、その腹部の怪我きちんと処置して」
目を見開いて、芥川君は私の方を向いた。
人差し指を立て口元に寄せる。
「幹部命令」
「____…」
きゅっと唇を固く閉じた後、目を細めて彼は告げた。
「………………承知」
「あの、太宰さん………」
カウンター席に座ると、敦君が不安混じりの表情で聞いてきた。
「若しかして芥川を行かせたのって……」
「怪我を処置する為さ」
「矢っ張り………」
ニコッと微笑みながら私は敦君に聞く。「気付いてた?」敦君は小さく頷いた。
「それに芥川君は?」
「………………怪我をする訳が無いって、云われました……」
「そうかい。でも、聞いただけでも佳い事だ」
「え……」
視線を敦君から外し、蒸留酒と氷が入った酒杯を見る。
「一応自分で処置はしただろうけど、あの感じからして完全に止血ができてた訳じゃあないだろうね」
「だからずっと血のにおいが………」
「まぁ……芥川君を行かせたのは他にも理由があるけど」
「理由…?」
敦君の方に躰を向ける。
「はいコレ」紙質の箱を敦君に渡す。
「これは?─────えっ!」敦君が箱の中身を見て声を上げる。
「だっ、太宰さんっ!これって期間限定の超人気シュークリームじゃないですか!並んでも直ぐ売り切れて、手に入る確率が低いって云われてるのに…!!」
慌てながら敦君が云った。
「ほら、敦君と谷崎君成人しただろう?その祝にね。皆で食べて呉れ給え」
「……本当に…頂いて佳いんですか、?」
シュークリームが入った箱を見ながら、敦君が緊張を含む口調で云う。
「大丈夫、毒なんて入ってないよ」
「それは判ってます!」
「ふふっ……冗談さ」
微笑しながら私は云った。
「……………………皆、喜ぶと思います」
幸せそうに、敦君は微笑んで云った。
喜ぶ、か………。
「敦君、今身長何センチ?」
「身長ですか?178センチですけど……」
「じゃあ大丈夫そうかな……」
敦君の目の前に紙袋を出す。
「これはもう一つ、私から君に」
「……………」目を丸くしながら、敦君は袋を受け取り、中を覗く。
「えっ…………あの、太宰さん」
「ん?」
「これって……」
敦君の手には、私が二年前まで着ていた砂色の外套があった。
「思い出として持っていても佳かったんだけどね、彼処には似合わないし、別に記憶が消える訳じゃあない。それに」口元にのみ笑みを浮かべながら、私は彼に云う。
「私にはもう必要ないから」
「っ……!」
その瞬間、敦君の表情が酷く悲しみに染まった。
「えっ」思わず目を丸くする。
敦君は外套を優しく抱きしめ、その場でうずくまる。
「敦君?具合でも悪いのかい───「如何してですかっ!?」
力強い、けれども哀愁を帯びたその声が、私の言葉を遮った。
今にも泣き出しそうな少年の表情が、彼に宿っていた。
「何故っ…僕にくれるんですか!?何故!必要ないと云うんですか!?」
「でも、本当の────」
「聞いてくださいっ!!」
発しようとした言葉を、私は飲み込む。
「太宰さんが探偵社を辞めてから、二年が経ちました!けれど、貴方の使っていた執務席や寮の部屋が、ホコリをかぶった事など一度もありませんっ!!」
只々、敦君の声のみが私の頭に響いていた。
「理由は簡単です!掃除をしていたから!少しでも貴方が居たと云う形を残す為に!皆で!貴方が何時か!笑顔で戻って来れるように!!」
敦君の瞳から、雫が溢れ出た。
つぅ……と悲しく頬を伝う。
「掃除をしている時!皆で太宰さんの話をしていました!例え何があっても笑顔で元気で居るか!自殺癖を止めてくれる人が居るか!貴方という存在を確かにしてくれる人が居るか!!」
あぁ……何故私は───────
「っ……ぅ、皆…貴方を待って居るんです。過去の記憶を……………自分で…消そうとなんて、しないでください」
何故私は、あの決断が後に皆に如何影響するのか考えなかったのだろうか。
否、考える必要がないと思っていた。
考えても、結局は関係が薄くなって行くと思ったからだ。
だのに、
敦君が涙を拭う。そして、真剣な表情で云った。
「一度───一回で佳いんです」
彼が私に与えたのは、“救済”だった。
「武装探偵社に、来てくれませんか?」
「____…」
瞼を閉じ、再び開ける。
「……………………嗚呼、判った」