千嘉「とにかく今日は帰ろう?雨が降るみたいだし」
そうは言ったけどもう降り始めてるし……
千嘉「どうしよう……傘ないのに…濡れて帰るしかないか」
歌葉「私傘あるから入る?小さいかもだけど」
千嘉「いいの?」
歌葉「友だちってこういうことでしょ?」
慣れないながらに微笑んでくれる歌葉さんに感動する。
千嘉「じゃあ、お願いしようかな」
歌葉「帰りながらになるけど…よければ話聞いてもらえる?」
千嘉「いいよ!」
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視線を感じたのはここに引っ越してすぐだった。
家までは着いてこないけど町にいると必ずと言っていいほど感じるの。
千嘉「振り返ったりした?」
歌葉「振り返るけど姿を見かけたことなくて…遠くからなのかなって」
千嘉「知り合いだったら声かけてくるだろうし…スカウトとかなら尚更声をかけてくるよね」
歌葉「ねぇ…今から家に来ない?家なら傘もあるし雨宿り代わりといってもあれだけど……」
確かにその方が良さそう。
それにこの話はあまり世に聞かせていい話ではない気がした。
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千嘉「お邪魔します」
歌葉「ただいま」
どうやら歌葉さんの叔父さんと叔母さんは帰ってないらしい。
歌葉「私の部屋2階だから」
千嘉「あ、うん 」
階段を上がって彼女の部屋にいれてもらうと女の子らしく可愛らしい部屋だった。
千嘉「可愛い部屋だね!私の部屋はシンプルだから大違い」
歌葉「それで早速話の続きだけど……」
千嘉「手がかりはないんだよね?」
歌葉「何も……気になることは他にもあって…一昨年ぐらいからなんだけど私の誕生日の日になんか違和感を感じるようになって」
千嘉「違和感?」
歌葉「えぇ……なんていうか体が熱くなるような…もしかしたら私には何かまだ知らない秘密があるのかも」
千嘉「意外とその視線の人たちは何か知ってて歌葉さんを狙ってるのかも…」
歌葉「だとしたら教えてほしいけど…信用はできないし……」
千嘉「あ、そうだ!今度の3連休予定ある?」
歌葉「ないけど……」
千嘉「流星祭があるんだけどそこでお願いしてみない?何か手がかりが見つかりますようにとか」
歌葉「流星祭って何?」
千嘉「この街の一大イベントだよ!毎年年頃の女性の中から1人流星の巫女が選ばれてその人に願い事をすると叶うっていう言い伝え」
歌葉「その人にこの話をするの?」
千嘉「ううん、直接は話せないかな…簾越しの感じだし、その建物を囲むようにSPもいるし」
歌葉「それだけすごいお祭りなのね」
千嘉「大分前だけどSPがいない時代にその巫女の命が狙われたことがあるらしくてそれのせいで毎年SPたちがいてピリピリしてる」
歌葉「それだけ厳重な警備をされてると少し戸惑うわね…なんか恐れ多いというか…」
それはすごくわかる。
子どもが怖がるぐらいだから初めての人はもっと緊張するよね。
千嘉「まぁ、お願い事できなくてもさ…純粋にお祭りを楽しむのも手だけどね?だからよかったら一緒にいかない?」
歌葉「実は友だちとこうやって出掛けたことないから楽しみなの…すごく憧れてた…ありがとう天空さん…」
千嘉「私も…小学校の低学年以来だよ………それでねお願いが2つほどあるんだけど」
歌葉「お願い?何?」
千嘉「お祭り行くのに浴衣着ない?なかったら大丈夫なんだけど」
歌葉「ある…お揃いコーデ私もやってみたかったの…だから誘ってくれてありがとう」
千嘉「うん!それでね…私…友だちができたらやりたいことがあって…そのね」
初めてだし迷惑かもしれないけど言ってみよう。
千嘉「私…これから歌葉って呼ぶからそのね…私のことを千嘉って呼んでほしい!」
歌葉「いいの?いきなり呼び捨てで呼んで」
千嘉「うん…本当の友だちに呼んでほしいの…初めてできた本当の友だちにだからこそ呼んでほしいの」
歌葉「じゃあ……千嘉…でいいんだよね?」
千嘉「これを機に敬語もなしにしよう!その方が友だちっぽいし…ね!歌葉どう?」
歌葉「うん、そうしよう…千嘉」
その時もう雨が上がって虹が掛かったんだよね。
きっと私はその素敵な景色を忘れない。
最高の瞬間の最高の景色だから。
友だちと見た虹は最高の思い出になった。
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