テラーノベル
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み お .
そのときだった。
「おい、待てよ」
低く地を這うような不快な声と同時に
視界の端から制服のスラックスに包まれた脚が突き出され、俺の行く手を阻んだ。
「…っ」
茅野だ。
慌てて足を止め、何の用だよ、と鋭い視線を向けようとした
その瞬間
視界が反転し、胸元に強い衝撃が走った。
茅野にガバッと乱暴に胸ぐらを掴まれていた。
目の前の茅野の顔は、明らかな不機嫌さに満ちて歪んでいる。
その理由を察するのに、時間はかからなかった。
「まだ報告聞いてねぇんだけど? 昨日のあれさ、結局ヤれたの?それとも逃げられたん?」
相変わらず、いや、いつもより拍車のかかった生々しい見下し発言。
耳にするだけで胃の腑がひっくり返るような虫唾が走る。
だけどそれ以上に、ここでいつも通り適当に言葉を濁して笑って誤魔化したら
俺は本当に何も変われない。
宇佐美の前に立つ資格を完全に失う。
「…ヤってないし、ヤる気もない」
芯を込めてそう返せば、茅野は信じられないものを見たように眉を吊り上げた。
「はぁ?」
引く気はなかった。
俺はさらに言葉を続けた。
「もうお前らと関わる気はないから。金魚のフンみたいにつるむのは、今日で終わりだ」
すると、茅野は一瞬呆然とした後、小馬鹿にしたように鼻で笑った。
そして、ぐい、とさらに力を込めて俺の胸ぐらを自分の方へと引き寄せてきた。
顔の距離が近くなり、奴の不快な呼吸が肌に触れる。
「なに純情ぶってんだよ、拓海。お前、そっち側の人間じゃないだろ?」
「……」
「お前さぁ、急に被害者面して善人ヅラしてんの、マジでダサいって。どうせ本音じゃあの身体、めちゃくちゃにヤりたかったくせにさ」
ダサい。
それは本当にその通りだ。
否定できないほどに、今までの俺の立ち回りはクズで、ダサかった。
それでも──
宇佐美の存在や、宇佐美に対するこの張り裂けそうな本気の気持ちを
コイツにだけは侮辱されたくない。
激しい怒りが足元から競り上がってくる。
「…っ、お前と一緒にするな」
「んだよ?あんな弱気でトロくさいやつ、ちょっと強めに脅せば、すぐ泣きながら股開くだろ」
「っ! 宇佐美はそんな奴じゃない……!!」
俺は怒りの余り、胸ぐらを掴んでいる茅野の腕を力任せに掴み、指が白くなるほどに力を込めた。
案の定、茅野はチッと忌々しげに舌打ちを漏らす。
だが、逆上して殴りかかってくるかと思えば
奴の唇の端が吊り上がり、ニヤリと不吉でゲスな笑みへと変わった。
「どーせ放課後、一緒に帰る約束でもしてんだろ? お前がチキってヤりたくねぇならさ、代わりに俺が、お前の目の前でヤってやってもいいけど?」
「は?何言ってんの……」
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