テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
222
コメント
3件
仁人くんの心もそうだが、私の心ももうボロボロですよ……😭
三度目、あの天井が見えた瞬間、俺は安堵よりも先に吐き気に襲われた。
「仁人? おーい、生きてるか?」
その声を聞くのが今は怖い。
生きている勇斗を見るたびに、その数日後に訪れる「死」のバリエーションが脳裏にフラッシュバックする。
アスファルトに散った赤と、床に崩れ落ちたどす黒い顔。
『…勇斗。…… うん..生きてる、』
「じゃあ早く起きろー」
俺の声は掠れていた。
起き上がると、勇斗が不思議そうな顔をして俺を覗き込んでいる。
二回目の失敗が、俺の心を鋭利な刃物で削り取っていた。
交通事故を避ければ、次は原因不明のショック死。
まるで世界そのものが、何が何でも佐野勇斗を殺そうとしているみたいだ。
「仁人…お前、なんか……一気に老けたな笑体調悪い ?」
『……お前のせいだよ』
「えっ、俺? 何かしたっけ?」
何もしていない。
ただ、お前が死ぬからだ。
俺は一回目、二回目よりもさらに過敏になった。
食べ物はすべて俺が毒味をし、少しでも体に異常がないか一時間おきに確認した。
勇斗は最初こそ笑っていたが、二日目には本気で俺を気味悪がり始めた。
「仁人、マジでいい加減にしろよ! トイレまでついてくることねーだろ!」
『黙ってろ! 俺のそばにいろって言ってんの!』
俺の怒声に、リビングにいた太智と舜太、柔太朗が凍りつく。
「…仁ちゃん、ちょっと落ち着きなよ。勇ちゃんも困ってるじゃん」
「なんか最近の仁人、ほんまに余裕なさすぎて怖いって、笑」
柔太朗と太智の言葉が、遠くから聞こえる。
お前らに何が分かる。
あと一日で、この笑顔が消えるんだぞ。
この温かい体が動かなくなるんだぞ。
俺の目には、仲間の顔すら、いつか勇斗の死を知らせに来る死神の使いに見えていた。
そして、三日目。
俺は勇斗を、絶対に安全なはずの自宅のベッドに座らせ、自分はドアの前に陣取った。
事故も起きない。
食べ物も口にさせない。
しかし、運命は嘲笑うように、三度目の絶望を用意していた。
ガタガタと、窓が鳴った。
急激な豪雨。
「なんか天気やばくね?」
そして、聞いたこともないような轟音と共に、落雷が近くの電柱を直撃した。
バチバチッという凄まじい音と共に、コンセントから火花が飛び散る。
「うわっ、停電!?」
暗闇の中、勇斗の声がした。
直後、古いアパートの配線がショートしたのか、壁の奥から煙が上がり、あっという間に火の手が回った。
『勇斗、逃げろ!』
俺は叫んで手を伸ばしたが、視界を遮る猛烈な煙と炎。
勇斗はパニックになり、窓を開けようとした。
だが、落雷の影響か、窓枠が歪んで開かない。
そして____
「……熱い、仁人、熱..い、、」
崩れ落ちた天井の下敷きになり、炎に包まれていく勇斗。
俺は必死に瓦礫をどかそうとしたが、熱さに阻まれて指先ひとつ触れられない。
勇斗の絶叫が、雨音にかき消されていく。
俺の目の前で、三度目の、あいつの最期。
『あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!』
喉がちぎれるほど叫んだ。
三度目は、酷く泣いた。
自分を呪い、神を呪い、声をあげて泣きじゃくった。
駆けつけた救急隊員や、呆然と立ち尽くすメンバーたちの前で、俺は勇斗の名前を呼び続けながら、煤だらけの地面に突っ伏した。
俺が何をした。
どうして俺の大事なものを、何度も何度も奪うんだよ、
心なんて、もうとっくに粉々だ。
それでも、意識が薄れる瞬間、俺は願わずにはいられなかった。
『もう一度……次こそは、絶対に次こそ、助けさせて…』
絶望の底で、俺はまた眠りについた。