テラーノベル
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3話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
「本当に、キヨくんが――人間だったなんて…」
スマホを握る手が震えていた。
画面の中で笑うキヨの姿が、急に違って見えた。
レトルトは、部屋の隅で小さく丸まっていた。
心の奥からせり上がってくるのは、興奮でも喜びでもない。
恐怖だった。
『レトさん、会えないかな』
『レトさんの声、ほんとに聞きたい』
『……ちゃんとした、俺、で会いたいんだ』
キヨの声が優しくて、あまりにも優しくて。
その優しさが怖かった。
もしも、実際に会って、何かが壊れたら。
もしも、理想だった“キヨくん”が、現実では違っていたら。
いや、それ以上に――もしも、キヨくんに自分が嫌われたら。
レトルトは人と目を合わせるのが苦手だった。
誰かの感情の波に飲まれるのが怖くて、今までも一歩引いたところで生きてきた。
だからこそ、“画面の中の彼”に安心して依存できていたのに。
「キヨくん、もう連絡しないで……」
震える指でそう打ち込んで、レトルトはスマホを伏せた。
……けど。
次の日も、その次の日も。
手が勝手にアプリを開いてしまう。
いないはずのキヨが、いつもの時間にログインして、いつもの声で話しかけてくるかもしれない――
そんな希望に、縋ってしまう。
自分でキヨから離れたくせに、、、。
けれど、画面は沈黙を保ったまま。
あの笑顔は、どこにもなかった。
そしてある夜。
ベッドに丸まっているレトルトのスマホが、静かに震えた。
《1通のメッセージがあります》
“ごめんね、もうこれ以上レトさんを怖がらせたくない。
もう、姿を消すよ。
ずっと、幸せでいて。”
画面の向こうにいるはずの彼が、静かにレトルトの世界から消えようとしていた。
「やだ……やだ……行かないで……キヨくん」
レトルトの心がようやく、叫び始めた。
つづく
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