テラーノベル
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赫は、
それからずっと落ち着かなかった。
休憩中も、
保健室のベッドに横になっていても、
頭のどこかで同じことが回り続ける。
(誰が、出したんだ)
(俺の代わりに、苦しんでたのは誰だ)
その違和感は、
一人で抱えるには大きすぎて。
昼休み、
赫は黄と瑞を呼び止めた。
「なあ、二人に聞きたいことある」
黄は、少し驚いた顔をしてから頷く。
「どしたん?」
瑞は、
いつもの調子で首を傾げた。
「何かあった?」
赫は、
一度、周りを見た。
誰も聞いていないのを確認してから、
声を落とす。
「……俺さ」
「前のやつで、
証拠を出した人がいるって話、知ってるだろ」
二人は、表情を引き締めた。
「うん」
「学校が動いた理由、だよね」
赫は、
拳を握る。
「俺、それを出した人、探したい」
瑞が目を見開く。
「え?」
黄も、少し言葉を選ぶように言った。
「……探して、どうするの?」
「どうする、じゃない」
赫は、即答した。
「礼とかじゃない」
「その人、絶対に無事じゃない」
その言葉に、
黄の顔色が変わる。
「……どうして、そう思うの」
「だって」
赫は、視線を落とす。
「俺のいじめが止まった“あと”から、
動画があるって言われた」
「それってつまり」
瑞が、
ゆっくり言葉を継いだ。
「……代わりに、
誰かが標的になったってこと?」
赫は、頷いた。
沈黙。
黄は、
胸の前で手を握りしめた。
「……そんなの」
「放っておけないよ」
瑞も、珍しく声を荒げる。
「守られた側だけが安心してたら、
それダメじゃん」
赫は、
二人を見た。
「……協力、してくれるか」
黄は、
迷わず頷いた。
「もちろん」
瑞も、力強く。
「する!」
その瞬間、
三人の中で、
はっきりとした共通認識が生まれる。
──誰かが、無理をしていた。
──それを、見過ごしたくない。
「まずは」
赫が言う。
「先生が“見せられない”って言った理由、
そこから考えよう」
「同意がないってことは」
黄が静かに言う。
「……まだ、その人、
助けを求めてない」
瑞が、
小さく息を吸った。
「……一人で、抱えてる」
その言葉が、
三人の胸に重く落ちる。
廊下の向こう。
翠は、
その会話を知らない。
知らないまま、
今日も“大丈夫”を演じている。
でも。
赫たちは、
もう止まらない。
探す理由は、
犯人を暴くためじゃない。
──壊れかけている誰かを、
ちゃんと見つけるため。
コメント
1件
翠っちゃんの事絶対見つけてよ!!! もう隠さなくていいじゃないか翠っちゃん!!!