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十月。文化祭が近づいて、学校中が浮き足立っていた。
私、キララはクラスの出し物の背景パネルを描く担当。ミナトはサッカー部の招待試合と、クラスの模擬店の呼び込みで走り回っていた。
キララ:「(ペンキだらけの手で)……ふぅ。終わらないなぁ」
放課後の教室で一人、巨大なベニヤ板と格闘する。本当はミナトが「手伝う」って言ってくれてたけど、部活が長引いているみたいで一向に来る気配がない。
そこへ、差し入れの缶ジュースを持ったユウキくんが現れた。
ユウキ:「キララさん、まだやってるんだ。これ、飲みなよ。手伝おうか?」
キララ:「あ、ユウキくん。ありがとう。でも大丈夫、あと少しだから……」
ユウキ:「いいから。ほら、ここ押さえてるよ」
二人でパネルを支えながら作業をしていると、外から騒がしい声が聞こえてきた。窓の外を見ると、グラウンドで片付けをしているミナトが、女子マネージャーたちに囲まれて笑っているのが見えた。
キララ:「(胸がチクリとして)……ミナト、楽しそうだね」
ユウキ:「(私を見つめて)……キララさんは、あいつのことが好きなの?」
キララ:「えっ!? な、何言ってるの、幼馴染だよ」
ユウキ:「幼馴染にしては、顔に出すぎ。……でも、あいつは人気者だからね。キララさんが一人で頑張ってる時に、あんな風に他の子と笑ってる奴、僕なら放っておかないけどな」
その言葉が、さっきから感じていたモヤモヤを大きくさせる。
一時間後。ようやく部活を終えたミナトが、息を切らして教室に入ってきた。
ミナト:「わりぃ、キララ! 遅くなった! ……って、あれ」
ミナトの視線の先には、私と、その隣で仲良さそうに後片付けをしているユウキくん。
ミナト:「(顔を険しくして)……なんだよ、またお前いんのかよ」
ユウキ:「ミナトくん、遅いよ。キララさん、ずっと一人で大変そうだったからさ」
キララ:「(つい冷たい声で)……いいよ、ミナト。もう終わったから。マネージャーさんたちとのお喋り、楽しそうだったね」
ミナト:「はあ!? あれは仕事の連絡してただけだろ! お前こそ、そんなにアイツがいいなら、ずっと二人でやってりゃいいじゃねーか!」
キララ:「……最低。ミナトのバカ!」
私は荷物を掴んで、教室を飛び出した。
追いかけてくる足音は聞こえない。
文化祭の準備で飾られた華やかな廊下が、今の私にはすごく冷たく見えた。
つづく