「ねぇ、ラウ、どうしよ…」
しょっぴーが恋愛相談の相手に僕を選んだのには、ちょっとびっくりした
最初は僕がめめを好きなんじゃないかって警戒しての牽制かな、と思ったけど
「お前、他に好きな奴いるだろ?しかもメンバーの1人」
とアッサリと返されて、よく見てくれてるんだなという嬉しさと同時に、こういうところは昔から変わらずかっこいいなと思う
その点では、意外にもめめのほうが僕を警戒していた
「俺、翔太くん、好きだから」
「そうなんだ。俺も好きな人いるから、お互い頑張ろうね。」
少し敵意の滲むその言葉にさらっと返せば、めめは、僕が初めて見た、なんとも言えない表情をしていた
ライバルになり得ると思ってもらえるくらいには僕も成長したってことかな
めめはそれ以降、その話題に特に触れることはなく、着実にしょっぴーとの距離を縮めていった
それに反してしょっぴーの方は、わりと頻繁に相談をしにきた
めめ側がアクションを起こしているであろうと分かっていたから、具体的にどうするかなんてことは話さず、いつもただ話を聞いているだけのことがほとんどだったが
「めめはやっぱりあべちゃんが好きなのかな」
「明日めめの家でご飯食べるんだ」
「今日は佐久間と仲良さそうにしてた」
「めめと2人での仕事決まったんだ」
案外自分に自信がないしょっぴーは、何かあるたびに一喜一憂してみせた
恋心を打ち明けてから、もう強がる必要もないと判断したのか、素直な感情を吐露してくる
9個も上とは思えないその可愛らしさに、そういうところを見せればいいのにと思ちながら話を聞いていた
そもそも僕がしょっぴーの恋心に気づいた時も、不安に心を揺らしている表情がなんとも頼りなさげで可愛らしかった
その日のしょっぴーは元々、ちょっとだけ元気がなかった
疲れがちょっとだけね、そう言っていた時は何ともなかったけど、体調が良くない時は些細なことでもメンタルに来やすい
めめは、メンバーの中でも特にスキンシップが激しめの佐久間くんや康二くんに絡まれて、戯れ合っていた
別にたまにあるいつもの光景だし、普段のしょっぴーなら気にも留めてなかっただろう
ただその時は、よく見ないと分からない程度に少しだけ瞳を揺らして、寂しそうに眺めていた
隣にいた俺は思わず、その両目を片手で覆って反対の腕で抱きしめた
「っ?、ラウ?」
「しょっぴー、大丈夫だよ」
「…はは、バレちゃったか」
「好きなんだね、めめが」
「……ん」
こちらを向かせてから、手を外して目を合わせると、しょっぴーは笑ってみせたけど、その笑顔は、とても淋しくて、とても綺麗だった
僕はそのまま手を引いて、楽屋の外にしょっぴーを連れ出した
しょっぴーから相談したいと連絡が来たのも、めめに牽制をされたのも、その少し後だった
「しょっぴー、今みたいにしてたら?」
「…?今みたいにって?」
「強がらずに素直に感情を出したらいいのに、可愛いんだから」
「…。それができたら苦労しないよ…。」
1人行動を好むと公言する割には、存外、この人は寂しがり屋で甘えん坊だ
「甘えたいって思うんでしょ?」
「…そりゃね、でも恥ずかしくなってついさ」
「いつもは、道化になるのも平気なのに」
「そりゃ、仕事だし。それに後には引けないじゃんか」
そこまで聞いてふと思う
「いっそもう、背水の陣を引いてしまうのはどう?」
「ハイスイノジン…???」
「後には引けない状態にしちゃうってこと」
「どうするの?」
「んー、それはわかんないけど…。そうだなー、いっそもう好きな人の前では甘えるタイプって言い切っちゃうとか?そしたらもう甘えるしかなくなるでしょ」
「えぇ〜、そんなんでうまくいくのかな…」
その頃にはもう、めめのアピールもだいぶ分かりやすくて、しょっぴーも、もしかしたらなんて淡い期待を持っていた
だから、もし付き合えたとしてもうまく甘えられる自信がないなんて前向きな悩みを溢していたのだ
かくして、しょっぴーはめめに心置きなく甘えるべく、告白された直後に半ば啖呵を切るような言葉を言うことになったのだ
少々不安の残る思いつきではあったが、作戦は功を奏したようで、めいっぱい甘えられててすごく心が満たされてると、付き合いが始まって3ヶ月くらい経った頃に、ちょっと照れながら教えてくれた
幸せなのが隠し切れてなくって、俺が好きなのは別の人だけど、ちょっと心が高鳴るくらいには、可愛い顔をしていた
それからも、僕の恋愛相談に乗ってもらったタイミングなんかで、時折その顔が見られるようになった
いつか時効が来た時には、甘えん坊の裏側を教えてあげると同時に、俺しか知らないしょっぴーの可愛さを、めめに自慢してやろうと心に決めた
僕にとってずっと、しょっぴーはカッコよくて可愛くて、大事なお兄ちゃんだ
コメント
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くぅー!!後日談めっちゃいい! 計算され尽くしてる!!やば!! 最高です😊ありがとうございました💙
