「やめろ」って、言ったのに。
(マナ視点)
(マナ)「……開けて、ロウ……っ」
何度ドアを叩いても返事はなかった。
ロウはさっき、鍵をかけて部屋を出ていった。
俺を、ひとりにして。
部屋にある窓は小さくて、鍵も閉まってる。
スマホも、どこかに隠されたみたいやった。
(マナ)「ふざけんなって……!」
涙がこぼれそうになったけど、悔しくて噛みしめた。
こんなん、ありえへん。
ロウが――ロウが、こんなことするなんて。
(小柳)「……ごめん」
唐突に、ドアの向こうから声がした。
(小柳)「マナが嫌がってるの、わかってる。
でも……もう、どうすればいいかわからないんだよ」
(マナ)「わからへんって、なんやねん!
こんなんされたら、もっと嫌いになるだけやんか!!」
叫んだ。喉が痛くなるくらい。
でも、ロウはそれでも開けなかった。
(小柳)「マナが戻る場所、俺じゃないってわかってる。
でも、……それでも、奪いたいって思ってしまった」
(マナ)「勝手に奪うなや!! ……俺のこと、そんな風に見てたんか!?
ロウのこと、頼れるって……信じてたのにっ」
黙ってたロウが、ゆっくりドアを開けた。
部屋に戻ってきたその顔は――ボロボロだった。
(小柳)「……それでも、いい。
マナが俺を憎んでも、泣いても、逃げようとしても――
ここからは出さない。
……ずっと、俺のそばにいてもらうから」
(マナ)「……っ、やめろって言ってるやろ……!やめろや、ロウっ……!!」
暴れても、泣いても、叫んでも――
ロウの腕は離れへんかった。
抱きしめるような、でも檻みたいに冷たいその腕に、
俺はただ、涙をこらえながら、拳を振るった。
(マナ)「お願いや、ロウ……やめてくれって……!」
(小柳)「……もう、俺のこと、“優しい”って思わなくていい」
その言葉が、何よりも、こたえた。
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