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「ねぇちょっと、誰かいい案ないのー?」

「あんたこそないの?さっきから文句言って案潰してばっかじゃない」

「なによ、あんたこそなにも案出してないくせに!」

我が総務では今日も先輩たちがご機嫌ナナメだ。

なにかにつけイライラしている方々だけど、特に今日のピリピリっぷりはすごい。

静電気が発されているみたいに、なにか言えば互いにビリッと弾けあう。

今は今月末に開かれる定期親睦会の企画を話し合っている最中だった。

先輩たちはこの年四回の社内企画を考えるのが大嫌いだ。

しかもいつもはホテルで済ませているのに、「今回は経費を節減しろ。ケータリング系は禁止。会場も社内で」とお達しがかかったので、面倒さが増して余計にいきり立っていた。

満足な案が出ないまま、一時間は経っていた。

「もう焼肉でいいじゃん、テキトーに材料そろえてさぁ」

投げやりに言った田中さんに、他の先輩たちは顔を見合わせた。

「…煙危なくない?」

「空調全開にすればどうにかなるわよ」

「臭い付きそう…」

「じゃあ入口も窓も開けっ放しにしておけば?」

「寒いのに?」

「じゃあ他にいい案あるの!?」

ヒステリックじみた言葉で田中さんににらまれれば、みんな黙り込むしかない。

田中佳代さん。

性格がきつくて、自分の思い通りにならないとすぐに機嫌が悪くなる女王様気質の持ち主。

総務部のお局様で、わたしへのいびりの主犯格だ。

最初は、きついながらも指導してくれていたんだけど、わたしのドジさとトロさに煮えを切らして次第にいびってくるようになった。

そして、それが合図かのように、他の先輩たちもこぞっていびるようになって、そして今の状態になった。

話し合いはさっきからずっとこんな調子だった。

みんな上からの急な横暴命令にキリキリしていて、まともな案を考え出す気力もないみたいだった。

でも、そろそろ企画をまとめておかないと…。開催日は着実に迫ってきている。

みんなで料理を囲めて、経費を安く済ませられるものか…。うーん…。

ふと、ひらめいた。

「あの…」

わたしは重苦しい雰囲気の中手を上げた。

「な、鍋とか…いかがでしょう?」

『鍋ぇ?』

「立食形式にしてテーブルごとにちがう味の鍋を用意するんです。材料は一人あたりの金額を決めて、その範囲内で野菜とかを買ってきてもらって、肉や魚貝はこっちの予算で出すようにして…。それなら普段の参加費だけでまかなえると思うし、こちらも手間も減らせると思うんです」

「なるほどね」

「いいかも」

珍しく意見を受け入れてもらえてうれしかった。

わたしはすこし高揚して話を続けた。

「ひとつの鍋に係りが一人つくようにすれば、味の調整や具材の取り分けも公平にできると思うし。そうやっていろんな鍋を回りながら親睦も深められますし、…なにより、普段とちがって楽しいと思うんです」

「うん、いいよね?」

「うん、いいとおもう!」

けど田中さんだけは自分の企画よりもわたしのが反応良かったのが面白くないみたいで、ふん、と鼻笑った。

「って簡単に言うけど、全社員が食べる分の材料なんて、どうそろえるのよ。直前にスーパーを駆け回るわけ?」

たしかに…とみんな見合わせる。

わたしもそう言われては口をつぐむしかなかった。

前日に用意して保管って手もあるけど、冷蔵庫がない。

冬とは言え、生ものだから注意がいる。

かといって田中さんの言うように直前にスーパーを巡るわけにもいかないし…。

みんなわたしと同じ想像をしていたらしい。

次第に諦めの表情が広がって、冷やかな視線がわたしに向けられる。「できもしないことを軽々しく口走って」って責めるような顔。

誰も助け船なんて出してくれそうにない…。

「…すみません、やっぱり無理ですよね…。この企画はなかったこ」

「俺、いいと思うけどな」

急に男の人の声が聞こえて一斉に振り返った。

とたんに、みんな目がハートになった。

「遊佐課長ぉ!」

な、また急にどうして…!

「ごめんね、通りがかったら聞こえてしまって。楽しそうですごくいい企画だと思うなー」

と、あの甘い顔と言葉で言うから、先輩たちはみんなとろんとなっている。

「えー、課長はお鍋好きなんですか?」

「うん好きだよ。色々な味が楽しめるなんて最高だよね。ぜひ実施してほしいなー」

「でも…」

「でも、ねぇ?」

「なかなか難しくて…」

と、顔を見合わす先輩たちに、課長は押しの王子様スマイルを向けた。

「大丈夫だよ、みんなが団結して協力し合えば。キミたちの努力の企画、俺も応援しているよ」

なんてキラキラ発言言われれば、無理とは言えない。

元来、王子様とは身分は高いもの。

その甘い笑顔の下には「高位の人からの要望は絶対だよ☆」という毒が隠れていた。

これはさすがの田中先輩も直感したようで、

「…じゃ、じゃあ絶対成功させてみせますね…!」

なんて応じてしまった。

田中さん…?さっきは「絶対無理でしょ」って顔してましたよね??

そんな無責任に応じてしまっていいんですかぁあ?

というか。

一番困ったのはこの方だ。

じろっ、とわたしは課長をにらんだ。

準備に無理があるって会話も聞いていたはずなのに、どうして無理強いするんですか?

もしかして、わたしを困らせて楽しんでいるんですかぁ?

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