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第7話:サバンナの裏切り
地平線まで続く草原。乾いた風が黄金の草を揺らし、遠くでは獣の咆哮が響いていた。
サバンナ。灼熱の太陽の下で、影は短く、逃げ場はどこにもない。
野心家チームは群れを成して進んでいた。
西園寺 豪――高級仕立てのスーツを砂埃にまみれさせながらも、背筋は真っすぐ。プライドの高さを隠そうともしない。
堂島 龍一――金髪リーゼントに革ジャン。分厚い肩を揺らし、口元には狂気じみた笑み。
榊 美沙――茶髪ポニーテール、派手な化粧。血に濡れたバンダナを巻き直している。
矢吹 隼人――短髪、鋭い目つきのボクサー。両拳には擦り傷と古い裂傷が刻まれていた。
西園寺が声を上げた。
「ここからは私の指揮に従ってもらう。力任せの無駄な戦いは避けろ」
堂島が舌打ちし、巨体を揺らす。
「は? テメェの口先より、この拳の方が説得力あるんだよ」
空気が一瞬にして緊張に変わる。
「裏切る気か?」西園寺の目が鋭く光る。
「裏切りじゃねえ、“主導権争い”だ」堂島の拳が鳴る。
次の瞬間、堂島が突進した。
巨体が砂煙を巻き上げ、西園寺に迫る。
「下がれ!」榊が叫ぶが遅い。
堂島の拳が振り抜かれる。空気が爆ぜ、コンクリートのような音と共に西園寺の頬を抉った。血が飛び散り、スーツが真紅に染まる。
「がはっ……!」
しかし西園寺は倒れない。スーツの内側から刃を抜き、堂島の腹部に突き立てた。
金属音と肉を裂く感触。堂島の目が見開かれる。
「この野郎ッ!」
堂島は刃を抜きもせず、頭突きを叩き込んだ。西園寺の額が割れ、血が流れ落ちる。
矢吹が叫ぶ。「おい、やめろ!」
だが二人は止まらない。
堂島の拳が肋骨を砕き、西園寺の刃が肩を切り裂く。血と汗と砂が混じり合い、サバンナの草原は真っ赤に染まっていく。
榊が歯を食いしばりながら見ていた。
「……これが野心家チームの末路か」
ついに、堂島と西園寺は互いに血まみれで膝をついた。
狂笑を浮かべる堂島と、プライドに縋る西園寺。
どちらも倒れれば群れは崩壊する。
その光景を、サバンナの獣の咆哮だけが見守っていた。