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#主人公最強
しめさば
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ズガァァァァァァ!!!
ヴァエルの影から、無数の拘束糸が一斉に放たれる。
「こ、これなに──?
……よ! 避けて避けてッ!!」
辰美が叫びながら身を翻し、最前線へ躍り出る。
ヴァエルの影がうねり、襲いかかる!
ズバババババッ!!
無数の黒い糸が空間を裂いて降り注いできた。
「ッ、来る!! エスト様! 下がっ──」
パァン!!
糸が触れる寸前、エスト様の足元に漆黒の魔法陣が咲いた。
そして──
「闇結界《ダーク・シールド》!」
バシュッ!
漆黒の半球が瞬時に展開され、
迫る糸の群れをすべて弾き返した。
「な……!」
私も思わず目を見開き、アフロも驚きでフワッと浮く。
「……ッ! ……びっくりした……
勝手に出た……けど、ちょっとカッコよかったかも?」
エスト様が自分の両手を見てぱちぱちと瞬きをしている。
「エストちゃんかっこいいー!」
「勝手に? ……あの子……天才かよ?」
「おお……さすがは先代魔王の御令嬢! 完璧な防御魔法ね!」
後方でカエデが喜び、
ツバキが驚きの声を上げ、
ローザが猛烈な勢いでメモを取り始める。
「はは! 頼もしいですな!」
「エストちゃんすごいすごい!」
辰夫と辰美も感嘆の声を上げた。
「エスト様は大丈夫そうね!
じゃあ気を取り直して……辰美! まずは牽制!」
「了解っ! 爆炎──」
辰美が跳躍し、掌に炎を纏わせてカッコいい技名を叫びかける。
──だが、空中で一瞬ビクッと身をすくませた。
チラッ。
私を見てからアフロを見る。
スッ……。
死んだ目で口を閉じた。
「……辰美ふぁいやーぼーん」
「素晴らしい!」
私は即座にアフロを揺らして拍手喝采した。
なんて空気を読んだ素晴らしい技名だろうか。
辰美の炎がヴァエルの右腕に直撃する。
しかし、ジュゥゥゥッという音と共に皮膚を少し焦がしただけで、すぐに泥のような影が湧き出し、大きなダメージには至らない。
「私も援護するね! いっけー、ウィルソン!!」
カエデが後方から元気よく、
良い形の石(ウィルソン)を投げつける。
ビュンッ!!
ポスッ。
ウィルソンはヴァエルのぶよぶよした影に吸い込まれ、
全く痛がる素振りも見せぬまま、無力に足元へ弾き落とされた。
「ああっ!? ウィルソンが効かない!?」
カエデがショックを受けたように両手で頬を覆う。
「下がってなさいカエデ! 私が深淵の光で浄化してあげるわ!」
ツバキが眼帯(包帯)を押さえながら、
無駄にスタイリッシュなポーズで前に出る。
足は震えている。
「我が右目に封印されし深淵の光よ、
今こそ戒めを解き放ち、この穢れし奈落に──!」
「待ってツバキ! 地下でそれは──」
「ホーリービーム♡!!!」
ビーーーーーー♡
眼帯を外した右目から、極太のピンク色の光線が放たれる!
……が、本人はビビって目をギュッと瞑って撃ったため──
その光線はヴァエルを大きく逸れ、
明後日の方向の天井を深々と抉り取った。
ドゴォォォォンッ!!
ガラガラガラガラッ!!
「きゃああああ!? なんで天井が崩れてくるのぉ!?
やだ無理!!今日もう帰る!!」
ツバキがその場で丸くなって頭を抱えた。
「あんたが撃ったからでしょバカァ!!」
私はあとでツバキをしばくと決めた。
崩落する天井。
私に向かって、大量の瓦礫と土埃が降り注ぐ。
ボムッ、ボムッ、ススス……。
降ってきた瓦礫の大部分は、
極限まで膨張した私のアフロがトランポリンのように受け止め、ふかふかと吸収していった。便利だなこの頭。
「『聖女、天井を穿ち奈落に光をもたらす』……っと!」
「ローザ! メモしてないで瓦礫から逃げて!」
もうもうと舞い上がる土煙。
その視界不良の中で、
ヴァエルがこちらへ這い寄ろうとした──その時だった。
「よいしょっと」
ヴァエルの”真裏”から、のほほんとした声が突然響いた。
「……え?」
全員の視線がそちらに向く。
いつの間にか──本当にいつの間にか、
カエデがヴァエルの背後に立っていた。
土煙に紛れて音もなく接近したカエデは、
さっき足元に弾かれたはずのウィルソン(石)を拾い上げ、
右手にしっかりと握り込んでいた。
そして、「なんとなく後頭部」っぽい場所めがけて、
思い切り振り下ろした。
一切の感情を感じさせない、見事な無表情で。
ドゴォッ!!!
「ギョパァッ!?」
不定形の悪魔が、あり得ない死角からの後頭部直接打撃(鈍器)により、その場に倒れた。
……静寂。
全員の顔が引きつり、一斉にカエデを見つめる。
「……えっと」
私がアフロに挟まった瓦礫をパラパラとこぼしながら呟く。
「後頭部を直接殴る……?」
「しかも、あの不定形の死角をいつの間にか……!?
完全にプロの暗殺者の歩法(ステップ)ですぞ……!」
辰夫がカエデの手に握られた鈍器を見つめながら言った。
「カエデ……あんたが一番怖いよ……」
ツバキが本気で引いている。
「えへへ、ウィルソンのおかげだよ」
カエデが誇らしげに、泥のついた石を掲げて再度──
ドゴォッ!!!
「ギョパァッ!?」
倒れている悪魔が、ビクン!
「ぉぉぅ?」
私から変な声が出た。
その直後──。
脳震盪から立ち直ろうと、
ヴァエルの巨体が再びギィィ……と蠢き始めた。
「勝機!!(小声)……深き淵より這い出せし罪咎よ、
我が双眸の裁きをもって塵と還れッ! 導け、ローザ!!」
「はい、聖女様!」
今までビビってたツバキが、調子に乗った。
「喰らいなさい! 両目解放!!ディバインホーリービーム♡♡!!」
ビーーーーーー♡♡
両目から放たれた二本の極太ピンクレーザー!
……が、ビームは明後日の方向の壁を抉った。
ドォォォン!!
「ローザぁあああああ!!連携いくよ!!」
ツバキが叫ぶ。
「はい!聖女様! 顔の位置調整入りまーす! ……ロックオン!」
ローザが背後からツバキの顔(頭)をガシッと掴み、
凄い勢いでヴァエルのど真ん中へと向けた。
ぐりん。
「ぎゃあああああ!!ローザぁあああ!?」
ビィイイイイイイイイイイ♡♡♡
軌道を修正された極太の光線が、
今度こそヴァエルの中心へと真っ直ぐ突き刺さる!
ドッバァァァァンッ!!
「ギョパァァァァァ!?」
直撃を受けたヴァエルの巨体が完全に硬直し、
焦げ臭い煙を上げて沈黙した。
「……連携っていうか、事故よねそれ」
「ふ、ふははははは!!」
ツバキが勝ち誇ったように高笑いする。
「見たか我が深淵の光を! 這いつくばれ悪魔め!
私にかかればこんなものよ!!
さぁ! 怯えなさい! 泣き叫びなさい!
このゴッド・ツバキの前にひれ伏すがい──」
しかし、ツバキのビームは効いていなかった。
ヴァエルが、ゆっくりとツバキを見下ろす。
「……」
「……」
ツバキは静かに私の後ろに回り込んだ。
スッ。
「サクラ、任せた。ちょっとお腹痛い」
「嘘つけ」
(つづく)