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呼吸を整え恐る恐る向かいのジョンの方を見てみると。
ジョンも女中頭たちも皆、その場で屈みこんでいた。
天井のシャンデリアから幾つかガラスの凄まじい勢いで破片や埃が舞って来きた。
ジョンはうすら笑いを浮かべヘレンに近づいた。
「ヘレンさん。あなたが羨ましいんですよ……。ああ、羨ましい。ずっと嫉妬してました。モート君をこの場で始末できなくてもいいくらいに……。あなたを殺します。ヘレンさん。もうしばらくは人質としてここにいてくださいね。このグリモワールはレビアタンのグリモワールといって、嫉妬の書です。あの蛇はこの本から召喚できるのですよ。私はねー。この世界を滅ぼすのです。そう人類の終焉を望むものなのです」
ジョンは薄気味悪く笑った。
ザンッ、ザンッ、かなり離れた場所で蛇の胴体から瞬間的に血が舞い上がる音がここまで聞こえた。
ヘレンは離れた場所の首なしの蛇が真っ赤な血をまき散らしながらも、その胴体がモートを獰猛に襲っていることにある種の嫌悪感にも似た気持ち悪さと危機感を覚えた。大鎌を振るモートの身が危ないように思えてならなかった……。
Envy 9
今は午後の11時20分。
アリスはクリフタウンの「グレード・キャニオン」から人通りの往来が激しい大通りにでていた。
アリスはモートとの別れ際に、とにかく人の多いところに居てくれと言われていたのだ。
モートとの食事の後、アリスは「グレード・キャ二オン」に避難する前に、近くの喫茶店に寄り道して使用人の老婆に電話で警告をした。
「お願い! 猿の頭の人間に注意して!」
老婆はすぐに受話器越しから「わかりました!」と答えてくれた。
真っ白な雪の道を数人のグレード・キャリオンの生き残りの子供たちと踏みしめながら、アリスは徐々にその数を増やしてくる猿を避けようと、聖パッセンジャービジョン大学へと向うことにした。
シンクレアも無事でいてほしいとアリスは心の底から願った。
「グレード・キャリオン」はすでに猿の軍勢によって、占領され多くの命が散った。アリスは数人の子供たちと共に店の窓から大雪の降る外へと逃げて来たのだ。