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7 - 第5話「ヒメウのうた」

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2025年07月08日

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第5話「ヒメウのうた」
風間琴葉は、休日のたびに海辺の水族館に通っていた。

水族館の裏手、小さな湾に面した岩場で、最近いつもひとりの青年が泳いでいる。


彼はいつも同じ場所にいる。濡れた黒髪をかきあげ、シャツを羽織りながら黙って空を見上げている。

肌は薄く日焼けし、切れ長の瞳は深い海のような色。濡れた服が体に貼りつき、まるで海そのものから生まれたような静けさがあった。


琴葉は気になって、つい声をかけてしまった。


「いつも、泳いでますよね」


青年は少しだけ首をかしげて、うなずいた。


「海の中、好き?」


「……うん」


彼は、あまり話さない。けれど泳ぐ姿は、言葉より雄弁だった。


「ひとりで、さみしくないの?」


「……ひとりじゃないよ。君がいる」


その返事に、琴葉の胸がきゅっとなった。

気づけば彼は、毎回琴葉の来る時間に合わせて泳いでいた。


ある日、琴葉は彼に尋ねた。


「あなた、鳥でしょ?」


青年は静かにうなずいた。

「ヒメウっていう。泳ぎが得意な鳥。声は、あんまり出ない」


琴葉は微笑んだ。「だから、泳ぎで気持ちを伝えてたんだね」


彼は少し照れたように視線をそらし、ぬれた黒い羽のようなシャツをしぼった。

その手の甲には、小さくて青い羽が1枚、貼りついていた。


「ねえ、明日も泳ぐ?」


「……うん。明日も君が見るなら、もっときれいに泳ぐ」


波の音が、その答えを包んだ。

ヒメウのうたは、声ではなく、水と心で紡がれる。

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