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「そこに同行していたもう一人の男が、彼女に『何か』をした……。それが私たちの父だとしたら、すべてが繋がる気がしませんか?」
ダイキリの推測は、この血塗られたパズルに恐ろしいほど合致していた。
だが、私はあえて慎重に、感情を殺して言葉を紡ぐ。
「でも、私たちの父がコロナリータに直接接触したっていう確たる証拠はないわ。例えば、何かあの子の記憶に残るような特徴があるなら……」
「父の特徴と言ったら……あの人、いつだって胸が焼けるような安タバコの臭いがしませんでした?」
「ふっ、よく分かっているじゃない。……あの子も『知らない男』としか言っていなかったけれど、特徴までは語らなかった。これは、もっと彼女の口から昔のことを……根掘り葉掘り聞き出す必要がありそうね」
「……」
その言葉を吐いた直後、アルベルトがビクッと目に見えて肩を震わせた。
彼はギョッとしたような、これまでに見たこともないほど露骨に「嫌悪」を剥き出しにした目で、私とダイキリを交互に見た。
「え……まさか、またあそこに行くおつもりで……?」
「あからさまに嫌そうな顔をするわね……」
私はジト目で、椅子から転げ落ちそうな勢いの彼を見つめ返した。
いつも鉄面皮を崩さない男の、あまりの狼理ぶり。
ダイキリも不満そうに、アヒルのように唇を尖らせる。
「何がそんなに嫌なんですか? 思い出そうとして、また頭が痛くなっちゃうからですか?」
「……いいえ。あの、妹と名乗る方……どうも、生理的に受け付けないのです。殺意が湧くほどではありませんが……あの張り付いたような笑顔が、気持ち悪い」
アルベルトにしては珍しいほどの、剥き出しの猛毒。
その徹底した拒絶に、私は呆れ果てて、深い、深いため息を吐き出した。
「これも記憶を取り戻すためだと思って、我慢しなさいよ。大体、人一人殺してる男が、こんな程度のことで震えててどうするのよ?」
私の口から、ごく自然に、澱みなくこぼれ落ちた「爆弾発言」。
刹那。
店内の時間が、薄氷が割れるような音を立てて静止した。
「え……?」
ダイキリが、手に持っていたダスターを握りしめたまま、石像のように固まった。
「……エカテリーナ、貴方ね」
アルベルトが冷徹な、けれどどこか隠しきれない焦りを含んだ声で私を制する。
「私の犯行をほのめかす今の発言……聞いていたのが、もしダイキリではなかったら、今すぐ私は、目撃者を消すためにまた手を汚さなければいけなかったのですよ?」
「……あら、ちょっと口が滑っただけよ」
私は肩をすくめて平然と言ってのけたが
目の前の彼女の反応は、そんな軽口で済ませられるものではなかった。