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「え? え……? 殺し……?」
ダイキリの瞳から、いつも宿っているはずの陽気な輝きがみるみる消えていく。
彼女は動揺を隠しきれない様子で、震える指先を自身の胸元で組み
私とアルベルトの顔を、何度も、何度も交互に見比べた。
「聞いてないです……! さ、殺人とか…さすがに、悪い冗談ですよね……?」
恐る恐る、何かの間違いだと言ってくれと縋るような彼女の声。
私はその視線を真っ向から受け止めながら、自分が今、この無垢な「妹」の世界を
決定的に、そして完膚なきまでに壊してしまったことを悟った。
だけど、私は引き返さない。
「冗談なわけないじゃない」
低く、冷たい声で、私は残酷に現実を突きつけた。
それに続くように、アルベルトも感情を削ぎ落とした言葉を紡ぐ。
「……それに。私が犯した殺人は、あの養父……つまり私の人生を弄んだ実施者への復讐でした。ダイキリ、貴方だって実父への復讐を誓って、私たちと手を組んだのでしょう? 今更、怯えないでください」
「そっ……それは、そうかもしれませんけど……」
ダイキリは、まだ完全には飲み込めていない顔で、激しく動揺していた。
しかし、「復讐」というキーワードが
彼女の中に辛うじて残っていた覚悟の芯に触れたようで、膝の震えを抑えるように小さく頷いた。
「でも、私は、人殺しなんて……」
「……お母様をあんな生ける屍の状態にした男を、笑って生かしておけるほど、貴方に余裕があるの? 慈悲があるの? ──もし復讐の瞬間に銃を渡されて、絶対に引き金を引かないって、今ここで誓える?」
私の追い打ちに、ダイキリは息を呑んだ。
「……っ、私だって、殺したいぐらい憎いですよ! 不倫してたのも、私たちを偽りの家族として扱っていたのも、なにより……母を、母の心を裏切ったのが……っ!」
「……許せないのなら、私たちの目的は一つでしょ?」
私が畳み掛けると、ダイキリは真っ白な顔を強張らせながら、絞り出すように言った。
「……っ、分かりました。でも、もっと早く教えて欲しかったです」
ぷくっと頬を膨らませて唇を噛む彼女。
結局は、この泥沼のような状況を強引に自分の中で納得させるあたり、彼女の精神は私が思っている以上にタフで、そして既に壊れ始めているのかもしれない。
「悪かったわよ。でも、そうと決まれば翌週にはまた、あの『妹』さんのところへ行くわよ」
アルベルトは、まだ不愉快そうに口を結んでいたが、私はその横顔を見ながら、次のターゲット──
コロナリータの正体について、確信に近い疑念を抱いていた。