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するとさくらは思い出した様に、秋穂に尋ねた。
「てかお母さん?お爺ちゃんは?」
何気ない疑問に、居間の空気が少しだけ静まった。
信愛は部屋を見回し、不思議そうに首を傾げる。
「あ、確かにさっきから姿が見えないね?」
秋穂は若干焦った様に眉をぴくりと動かしながら答えた。
「もしかしたら摘菜してるのかしら?」
「え? ひとりでやってんのかな?」
その言葉に、美羽は額へ手を当て、大きくため息をついた。
「お義父さんったら・・全くもう!」
やれやれと肩をすくめると、そのまま居間を飛び出していく。
その後ろ姿を見送りながら、信愛はぽつりと呟いた。
「なんかお爺ちゃんって
さくらから聞いてた通りの人みたいだね」
さくらは苦笑しながら頷く。
「そうなんだよね。色々心配だから
無理してほしくなんだけどなぁ」
◇ ◇ ◇
美羽は茶畑へ向かうと、大きな声で呼びかけた。
「お義父さーん?お義父さーん?」
青々とした茶畑の中で、一人黙々と茶葉を摘む老人が顔を上げる。
それは、さくらの祖父・勇だった。
「おう! 美羽さんか!どうかしたか?」
美羽は呆れたように腰へ手を当てる。
「どうしたじゃないですよ
一人で摘採なんて何考えてるんですか?」
勇はどこ吹く風といった様子で笑った。
「だから俺一人で大丈夫だと言ったろ?
若い時は俺一人で──」
勇が昔話を始めようとすると、美羽はその言葉を遮る。
「早くウチに帰ってください?
さくらたちも今着きましたから」
勇は目を丸くした。
「なにぃ!?さくらが!?帰ってきたのか?」
「そうですよ。だから早く──」
言い終わる前に、勇は勢いよく立ち上がる。
「こうしちゃおれん!待ってろさくら〜♬」
そう叫ぶや否や、勇は茶畑を駆け抜け、家へ向かって一直線に走り出した。
その背中を見送り、美羽は深いため息を漏らす。
「はぁ〜・・・どこからあんな元気
湧いてくるのかしら・・・」
そこへ秋穂が苦笑しながら近づいてきた。
「ごめんね〜美羽ちゃん
あんな分からずやを任せっきりで」
美羽は肩をすくめ、照れ笑いを浮かべる。
「まあ、嫁いで来た時はこの人と一緒に生活
していけるのかなって不安でしたけど」
少し間を置き、柔らかく笑った。
「もう慣れましたよ(笑)」
秋穂もつられて笑う。
「あはは・・・」
そして申し訳なさそうに、もう一度だけ頭を下げた。
「ホントごめん・・・」
◇ ◇ ◇
勇は家へ駆け込むなり、大きな声で孫の名を呼んだ。
「さくらー?さくらー?」
その声に振り返ったさくらは、ぱっと表情を明るくする。
「あ、お爺ちゃん♬」
勇は満面の笑みで近寄ると、嬉しさを隠しきれない様子で言った。
「いやぁさくら♬よく来たじゃないか♬
お爺ちゃん会いたかったぞ〜♬」
そう言うと、勇は愛おしそうにさくらを力いっぱい抱きしめた。
久しぶりに会えた孫の温もりを確かめるような抱擁だった。
さくらも優しく微笑みながら尋ねる。
「元気してた?」
「ああ♬元気♬元気♬」
勇は豪快に笑う。
「さくらはどうだ?楽しくやっとるか?」
「うん、毎日楽しいよ♬」
その答えに、勇は何度も大きく頷いた。
「そうかそうか♬それなら安心だ♬」
さくらは思い出したように振り返る。
「あ、あとそれから私の友達紹介するね」
「さくらの友達?」
さくらは皆を手招きした。
「この女の子が信愛と茜で──」
「初めてまして」
信愛は丁寧に頭を下げる。
「お邪魔しまーす」
茜はにこやかに笑顔を見せた。
「そしてこの男子が八乙女くんと朝陽くん」
「八乙女です」
焔垂が礼儀正しく名乗ると、朝陽も一歩前へ出る。
「力になりますんで、でも仰って下さい!」
勇は首を傾げた。
「力に?何の事だ?」
朝陽は慌てて口ごもる。
「あ、いや、それは・・・」
その様子を見た秋穂が呆れたように苦笑する。
「バカねお父さん!お茶の摘採に決まってるでしょ?」
「何を言っとるんだ!」
勇は胸を張って言い返す。
「お茶は俺一人で──」
だが、その言葉を遮るように、さくらが勇の手をそっと握った。
「そんなぁ危ないよ、お爺ちゃん」
潤んだ瞳で真っ直ぐ見つめられた勇は、一瞬言葉を失う。
「危ないもんか」
それでも意地を張ろうとする勇は、少し照れくさそうに笑った。
「俺は茶農家を継いで、この道50年以上の──」
「私、お爺ちゃんにはずっと元気でいて欲しいよ」
その一言が、勇の胸に静かに響く。
「さくら・・・」
秋穂も優しく微笑みながら口を添えた。
「ほら! お父さん!さくらも
こう言ってるし、あっちで休んどいて」
「ほらほら!」
そう言いながら秋穂は勇の背中を軽く押し、奥の部屋へと促す。
勇は苦笑しながら肩をすくめた。
「分かった! 分かった!」
そして押されるまま歩き出し、振り返ってぼやく。
「分かったから押すな!」
その様子を見届けたさくらは、小さく息をついた。
「これでしばらく
大人しくしてくれれば良いんだけどね」
茜は思わず吹き出す。
「さすがは孫の泣き落とし♬」
「うん♬うん♬」
信愛も何度も頷きながら笑った。
「なんか熟練の業って感じした♬」
さくらは少し照れくさそうに笑う。
「ああでも言わなきゃ
絶対明日も摘菜やるだろうからね」
そして、少しだけ表情を曇らせた。
「お爺ちゃんには無理してほしく無いからさ」
その言葉に朝陽は静かに頷く。
「休んでくれると良いですね」
「そうだね・・・」
さくらは障子の向こうを見つめながら、小さくそう呟いた。
焔垂は障子の向こうへ消えていった勇の姿を見送りながら、小さく息を吐いた。
「でもあの爺ちゃん見てると不安だよな」
さくらも苦笑しながら頷く。
「そうなんだよね・・・」
すると奥の部屋から秋穂が戻ってきた。
満足そうに手を払いながら微笑む。
「これでよし!」
さくらがすぐに尋ねる。
「お爺ちゃんは?」
秋穂はくすっと笑った。
「とりあえず今はMeTube見せてる」
茜が首を傾げる。
「MeTube?」
「将棋の動画が好きだからね」
秋穂がそう説明すると、茜は納得したように笑った。
「ああ、なるほど」
コメント
1件
はる。です!読んだよー! 今回のエピ、めっちゃ家族の温かさが詰まっててじーんときたわ。特にさくらが「お爺ちゃんにはずっと元気でいて欲しい」って涙目で言うシーン、ここ本当にグッときた…。普段明るいさくらの本音が見えた瞬間で、泣き落としとはいえ熟練の技って信愛が言うのも分かる(笑) それにしても勇じいちゃん、一人で茶畑行っちゃう元気よすぎるだろ!でもその元気がさくらへの愛情の裏返しなんだよな。おじろくおばさの世界観、こういう日常エピもちゃんと丁寧に描いてて好きだわ。次も楽しみにしてる🔥
#ボカロ
ありあ
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ありあ
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