テラーノベル
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「いやいやいや、待って待って待って!!」
「待てる状況に見えるか!?」
「見えないから言ってんだよぉ!!」
廊下を埋め尽くす、顔のない人型の怪物。
一体倒せば二体に増える。
二体倒せば、四体になる。
……いや、これ、どうすんの?
「らっだぁ! 後ろ!!」
「え?」
振り返った瞬間、天井に張り付いていた怪物が落ちてきた。
「うわああああああああああ!?」
反射的に腕で受け止め、そのまま床に叩きつける。
ぐしゃ、と。
嫌な音がした。
「っしゃ、倒した!」
「増えたぞ」
「は?」
床に転がっていた怪物の身体が、ぐにゃりと歪む。
一体だったはずのそれが、二体に分かれた。
「うそだろおおおおおおおお!?」
「お前が倒したんだろうが!!」
「倒したら増えるって聞いてないんだけど!?」
「俺だって初めて見たわ!!」
ぴくとが両手で頭を抱えた。
「いやいやいやいや!なんで増えるんだよ!?普通、怪異って倒したら消えるんですよ!?なんで分裂してるんですか!?俺、こういうの専門外なんですけど!?いや霊能者だけど!!」
「お前、さっきからずっと喋ってんな!?」
「能力のデメリットなんすよぉ!!」
いや知らんて。
なんだそのデメリット。
でも、今それを説明されても困る。
ぐちつぼが斧を振り抜き、モンスターをまとめて吹き飛ばした。
壁に叩きつけられた怪物たちが、次々と床に落ちる。
「よっしゃ!」
「増えたぞ」
「おい」
「増えた」
「おい!!!!」
本当に増えていた。
さっきまで十数体だったはずなのに、もう数える気にもならない。
「……これ、学校の外に出たらまずくない?」
俺が呟くと、二人が一瞬だけ黙った。
そうだ。
ここは学校。
夜中だから人は少ない。
でも、近くには住宅街もあるし、大通りもある。
この怪物が外に出て、誰かを襲ったら。
「……逃げるぞ」
ぐちつぼが言った。
冗談のない声。
「ぴくと、出口までの道は?」
「右の階段が一番近いっす!ただし、今んとこ廊下に怪異がいない場合に限ります!!」
「条件付きかよ!」
「しょうがないじゃないすか!俺もわかんないんすよ!」
俺たちは走り出した。
背後から、ぺた、ぺた、と。
いくつもの足音が追いかけてくる。
その音が、少しずつ増えていく。
ふと、耳元で声がした。
――喰え。
「……っ」
足が止まりかける。
今のは、誰の声だ?
振り返っても、そこにいるのは顔のない怪物だけ。
なのに。
そいつらの身体の奥に、黒い何かが見えた気がした。
まるで、俺に見つけてほしいとでも言うように。
「らっだぁ!置いてくぞ!!」
「っ、待って!!」
俺は慌てて二人を追いかけた。
……今は、考えるな。
考えたら、何かが変わってしまいそうだった。
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