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国税の査察を「完璧な潔白」で退けたことで、世論は完全に私たちの味方についた。
しかし
追い詰められた長谷川幹事長は、ついに公的な手段を捨てた。
ルーツ・ガーデンの周辺には、素性の知れない男たちが徘徊し、静かな威圧を加え始めていた。
「詩織さん、奴ら『掃除屋』を雇ったみたいだ。……俺が片付けていいか?」
海斗の瞳に、直樹が時折見せたあの暗い光が宿る。
彼は手元の端末で、ルーツ・ガーデンの防犯カメラをハッキングし
男たちの配置を狂いもなく特定していた。
「暴力には暴力で対抗する……。それでは、直樹と同じ『負の投資』にしかならないわ、海斗君」
「……じゃあ、黙って殺されるのを待てってのか?」
「いいえ。……相手が法を無視するなら、私たちは『法の外にある恐怖』を味方につけるのよ」
私は海斗にある指示を出した。
それは、直樹が海斗の母に遺した「悪のリスト」の隠しフォルダ───
長谷川がかつて私的に処理させた「人間」たちの、未解決事件の全記録を開示することだった。
海斗がそのデータをダークウェブ経由で、長谷川が抱える「掃除屋」たちの末端組織に直接送りつける。
『お前たちが今仕えている男は、使い終わった駒を一円の躊躇もなく切り捨てる男だ。…証拠はこのデータにある。次は、お前たちの番だ』
数時間後
ルーツ・ガーデンを取り囲んでいた男たちは、潮が引くように姿を消した。
雇用主への不信感という「内部崩壊」。
彼らにとって、長谷川はもはや「投資価値のない、危険なクライアント」へと成り下がったのだ。
その夜、静まり返ったガーデンで、陽太が私に言った。
「ママ……。パパは、お兄ちゃんにも僕にも、怖いものをたくさん残したね。……でも、僕、パパのことを憎むのをもうやめるよ」
陽太は、一円募金の瓶を海斗に差し出し、続けた。
「憎む時間があったら、その時間を誰かを笑わせるために使いたいんだ。……お兄ちゃん、パパの残した『怖いリスト』、全部消しちゃおう?新しい、楽しいリストを作ろうよ」
海斗は一瞬、呆れたように鼻で笑ったが、その指先は震えていた。
直樹が遺した「呪い」を、陽太の純粋な「善意」が、今度こそ完全に溶かしていくようだった。
【残り15日】