テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「詩織さん、本気か? 相手の土俵に自ら上がるなんて、リスクが大きすぎる」
海斗が端末を叩く手を止め、鋭い視線を向ける。
長谷川は「国家安全保障を脅かす情報の不正取得」という大義名分を掲げ
私を非公開のヒアリング、実質的な「監禁」へと誘い出そうとしていた。
「いいえ、海斗君。これはリスクではないわ。……長谷川幹事長の『不渡り』を全国民に開示するための、最高の広告枠よ」
私はあえて、長谷川が用意した黒塗りの車に乗り込んだ。
連行されたのは、国会議事堂の地下にある冷徹な会議室。
そこには長谷川が、勝利を確信した傲慢な笑みを浮かべて待っていた。
「詩織君、君の遊びもここまでだ。直樹の遺したゴミを振りかざして、国家に楯突いた罪……高くつくぞ」
「高くつく? ……長谷川先生、あなたの言葉にはいつも『価値』が伴わない。……海斗君、今よ」
会議室の壁一面にあるモニターが、突如として鮮明な映像を映し出した。
それは非公開のはずのこの部屋の様子を、海斗が全世界へ生中継しているものだった。
「何っ!? ……すぐに通信を遮断しろ!」
「無駄よ。…そして、先生。あなたが12年前、私の父にかけた電話……ここに再現して差し上げましょう」
海斗が再生したのは、直樹が命の保険として隠し持っていた「生録音」だった。
『……おい、お人好しの社長さん。お前の会社が潰れるのは、お前が誠実すぎたからだ。……自殺すれば、娘にだけは保険金を残してやる。それがお前にできる最後の上方修正だ』
スピーカーから流れる、長谷川の冷酷な肉声。
父を死に追いやった、死神の勧告。
「……これが、あなたが守ろうとしている『国家の安泰』の正体ですか?」
私は震える手で、父の万年筆を机に突き立てた。
全世界が、この一円の救いもない悪行をリアルタイムで目撃している。
長谷川の顔から、一円の余裕も消え去り、醜い恐怖が這い出した。
【残り14日】
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#離婚
#ヒトコワ
#仕事