私が中学生の頃、当時は心霊体験が多めなんですが怖いという認識が全然なくて『心霊体験=面白いネタ』という感じで、体験する度にラッキー!と思っていました。が、これからお話する体験談はラッキーどころか出来ることなら遭遇したくなかったと思ったエピソードのひとつです。
まず前提として、当時私も本家で暮らしていまして、家族の人数が多かったせいで自分の部屋が持てず、私は母と同じ部屋で生活していました。寝る時は二段ベッドで上が母、下が私のスペースとなっていました。以下、本題に入ります。
私の母は介護職をしていて、本家から歩いて数分の所にある介護施設で仕事をしていました。ある時、母が体調不良で早退しまして、珍しく私の学校から帰宅する時間と重なったのですが、私の方が先に帰宅して玄関のドアを閉め、階段を上がろうとしたのですが、玄関の窓からちょうど今帰宅する母の姿が見えました。そこで私は思わず二度見してしまったのですが、母1人ではなかったのです。背後に私と同じくらいの背丈で、黒いワンピースに黒い肌、黒く長い髪といった感じの、明らかに生者ではない女の子を連れていました。それを見た瞬間ぞわっと全身に鳥肌が立ちました。死者でも『良い霊』『悪い霊』と分かれますが、今回のは明らかに『悪い霊』の方です。肌身で感じるのでその辺の識別は当時から出来ました。もちろん母は気付いていない様子だったのですが、その夜ふいに疲弊した様子で母が会社での出来事を話始めました。
「ちょっと聞いてよ。実はね、私の働き先でスタッフ達が『死に部屋』って噂してる部屋があるの。2階の角部屋なんだけど、そこに入居したおじいちゃんおばあちゃんは、どんなに元気でも2週間以内に必ず急死しちゃってね。急死の理由がみんな心臓麻痺なのよ。私が勤務し始めて(転職してから間もない頃だったので)かれこれ4人目なんだけど、今日また1人おばあちゃんが亡くなってしまって。そのおばあちゃんも最初凄く元気だったの。何処も悪くなくて散歩もしっかり出来ていたのに、1週間でね、やっぱり心臓麻痺で急死しちゃって。入居して3日後くらいから『この部屋嫌だ、変えて』って突然訴え始めてたんだけど、他の部屋は入居者でいっぱいで……。そこの部屋ね、角に盛り塩が4つあるんだけど、盛って1日で真っ黒になっちゃうの。気味悪いでしょ?スタッフは絶対に皿の位置だけは動かさないようにって教えられていて、古い塩は掃除機で吸い取って、新しい塩をその上に置くっていう作業を毎回するんだけど、スタッフ達も嫌な雰囲気感じ取ってるのよ。正直その部屋使っちゃダメだと私は思うんだけど、部屋数が足りなくなるのは収入源も減っちゃうから施設的に困る、使用禁止に出来ないって、上に掛け合っても取り合ってもらえなくて。働いてる側としても、明らかにヤバそうな部屋に新しい入居者突っ込んじゃうのも凄く気が引けるけど、どうにもならなくて……雪、あんた見えるって言うけど、どう思う?」
どう思うも何も、部屋にいたであろう女の子は母に憑いて来ています。「いやそれ……今お母さんの隣にいるけど……?」と素直に言うと、母は面白いくらいに恐怖で叫びました。隣の女の子の死霊は私が見える事が嬉しいのか、凄くニコニコしていました。喜ばれてもちっとも嬉しくありません。傍にいるだけで鳥肌が立ちっぱなしですし、拒絶反応が酷いので正直申し訳ないですがここにいられても困るので、介護施設に戻って欲しかったです。「そもそもなんで施設の部屋にいる子がお母さんに憑いて来ちゃったの?なんかした?」と恐る恐る訊(き)けば、母は頭を抱えて言いました。
「真っ黒になっちゃう盛り塩なんか意味無いと思って、今日全部片付けちゃったのよ~!!」「はぁ!?ばっっっかじゃないの!?!?」
思わず叫んでしまいました。おそらくその部屋の盛り塩は結界の役割をしていて、位置を動かしてはいけないのはそれが理由だったのにも関わらず、何も見えない母は皿ごととっぱらってしまったのだと言います。「そりゃ部屋から出てきちゃうわな……」と私も頭を抱えました。黒い女の子の死霊は、急に解放されて嬉しくて、でも行き場がなくてうちに来ちゃったというのが安易に想像出来ました。見えない聞こえない、至って霊感のない母はいいかもしれませんが、私は波長が合うどころか終始見えて声も聞こえてしまいます。死霊というのは大体本人にちゃんとした理由がない限り、自分を認知してくれない人間より認知してくれる方に憑いてしまうもので、この女の子も案の定母には興味がないらしく私の方に憑いてしまいました。もう過ぎてしまったことですが、あの時は正直理不尽過ぎて母を恨みましたね。
その晩、母は「どうしよう~寝れない~」などと怖がりながらも秒速で寝落ち、残された私は仕方なく二段ベッドの下に潜り込んだのですが、死霊の女の子はずっと私の傍に立っていて、終始不気味な笑顔だったのですが、いざ寝ようとすると突然私の右腕と右肩を掴み、ザラザラとした声で「行こ!!行こ!!!」と言い始めました。行かないよ!!と叫び返せば、今度は怒った様子で首を絞めてきました。「行こ!!行こ!!」と怒鳴るように連呼しながら睨んでくる女の子に太刀打ちする術がなく、されるがままでとてつもなく苦しかったです。二段ベッドの上では母がぐっすり眠っています。恨みが募りました。どうにか振り払って、寝ている母を叩き起して「ちょっと!!お母さんが連れてきた女の子にちょっかい掛けられて全然寝れないんだけど!!」と半ばキレ気味で、道連れのつもりで母のベッドに潜り込んだのですが、寝ぼけ気味の母は「なーに言ってんのあんた~、いないよ女の子なんて~」とむにゃむにゃ言っていまして。明日も学校で時間も遅いし眠いのに寝れないストレスも重なって、頭にきた私は二段ベッドの上にまで移動してきた女の子に向かって「連れてくならお母さんにして!!!」と怒鳴りました。が、聞こえたのは母のイビキと女の子の「行こ!!行こ!!!」の声だけで、女の子はやはり母には全く興味がないのか私の腕を引っ張り始めました。凄まじい力で引っ張られ、結果的に力負けして私は二段ベッドから落ちました。近くにあったテーブルに頭をぶつけた後、意識が遠退きました。
ーーー気付けば朝で、母ではなく、私に普段憑いてる数名の霊体達(守護霊的なメンバー)に揺り起こされました。昨日は偶然にも全員不在だった為、ダイレクトに女の子の死霊に干渉されたのだと思います。私はというと、ぶつけた頭は痛いわ、首と腕には手形が痣のように付いているわ、そのまま気絶したせいで首も寝違えているわで、そこそこ大惨事でした。戻ってきた守護霊達もびっくりしたのでしょう。結構騒然とした雰囲気がありました。そして肝心な女の子の死霊はというと、部屋の隅っこで私に憑いている男性の霊体に威圧されて座り込んでいました。昨日守護達が不在だったのがかなり悔やまれましたし、ひとり気持ち良さそうに寝ている母にはかなり殺意が湧きました。
結果的に翌日、男性の霊体にがっつり威圧された女の子は再び母に憑いて職場に戻って行きました。母には盛り塩の皿を同じ位置に戻すように言い、出勤した母は言われた通りに位置を戻して新しい盛り塩を置いたといいます。後日入居したおじいちゃんもやはり5日目には他界されたようで、母はやはり置かなきゃ良かった…などと心を痛めていた様子でしたが、そればかりは(冷たい言い方ではありますが)私が対応する必要はないと思いまして。介護施設側がしっかり供養するなりお祓いするなりして、女の子の死霊を成仏させてあげれる日がくるのを祈っていました……が、あれから10年以上経った今でもその介護施設では角部屋で死者が出続けていると、その後勤務地を変えた母の耳にも介護職繋がりで噂が届いているらしいです。
盛り塩というのは本来やはり結界の役割を発揮する反面、窓の近くに二箇所など 線引きとして使うならいいのですが、四隅に盛ってしまうと完全に出入りが出来なくなって部屋から出られなくなるといいます。正しい使い方は、線引きをして行くべき道を作ってあげるというもので、ちゃんと抜け道を作ってあげない限りは霊体を閉じ込めるだけになってしまうのだとか。皆様はくれぐれも、ご自分のお部屋に閉じ込める事がないよう、お気を付け下さい……。
※次回から読みやすさ重視にしたいので、「~です、~ます」口調から変更します。
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