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第五章 新しい日々
魔力測定が終わった後も、学院中のざわめきは収まらなかった。
「聞いたか?」
「測定不能だって。」
「しかも測定水晶が壊れたらしい。」
「ルミアーナ公爵家のお嬢様らしいぞ。」
廊下では、新入生だけでなく上級生たちまでその話題でもちきりだった。
そんな視線を浴びながら歩くツララは、肩を小さくすくめていた。
「なんだか……見られてるね。」
「当然です。」
隣を歩くねねは落ち着いた表情で答える。
「ですが、お嬢様はいつも通りでいてください。」
「うん……。」
アイリスは二人の間に入り、にこっと笑った。
「大丈夫だよ!」
「みんな、ツララちゃんが綺麗だから見てるだけかも!」
「えぇっ!?」
ツララは顔を真っ赤にする。
「そ、そんなことないよ……!」
「あるよ!」
アイリスは笑いながらツララの手を引いた。
「ほら、教室行こう!」
三人は一年A組の教室へ向かった。
教室へ入ると、生徒たちの話し声がぴたりと止まる。
「……。」
「来た。」
「測定不能の子。」
ツララは少しだけ困ったように笑った。
すると、一人の男子生徒が立ち上がる。
燃えるような赤髪。
鋭い金色の瞳。
「俺はカイン・ヴォルグ。」
侯爵家の跡取りだ。
「さっきの測定、すごかったな。」
「え?」
「正直、ちょっと悔しい。」
そう言うと、カインは笑った。
「でも負ける気はない。」
「学院で一番は俺だ。」
ツララは驚いた後、優しく微笑む。
「うん。」
「私も頑張るね。」
その笑顔に、カインは一瞬だけ言葉を失った。
「……。」
(なんだ、この子。)
(全然偉そうじゃない。)
ガラッ。
教室の扉が開く。
「おはようございます。」
一人の女性教師が入ってきた。
紺色の長髪をまとめた、落ち着いた雰囲気の女性。
「私は一年A組担任。」
セシリア・クローネです。」
「一年間よろしくお願いします。」
生徒たちは一斉に立ち上がる。
「よろしくお願いします!」
セシリアは微笑んだ。
「まずは自己紹介から始めましょう。」
一人ずつ名前と得意魔法を話していく。
やがて。
「次はツララ・ルミアーナさん。」
ツララは立ち上がった。
「ツララ・ルミアーナです。」
「趣味は読書とお花を見ることです。」
「これからよろしくお願いします。」
短い挨拶。
だが、それだけで教室が少し和やかな空気になる。
「可愛い……。」
「声も綺麗。」
そんな声が聞こえてきた。
ツララは少し照れながら席へ戻る。
昼休み。
「ツララちゃん!」
アイリスが元気よく駆け寄ってきた。
「一緒にご飯食べよ!」
「うん!」
ねねもお弁当を持ってくる。
「お待たせしました、お嬢様。」
「ありがとう、ねね!」
ねねが作ったお弁当は色鮮やかで、とても美味しそうだった。
アイリスは目を輝かせる。
「すごい!」
「ねねさんって料理もできるの!?」
「はい。」
「これくらいは当然です。」
ツララは笑いながら言う。
「ねねのお料理、本当に美味しいんだよ。」
アイリスは目を輝かせながら一口食べる。
「お、おいしい〜!」
「お店開けるよ!」
ねねは少し照れくさそうに微笑んだ。
「ありがとうございます。」
穏やかな昼休み。
ツララは自然と笑顔になっていた。
(学院って……。)
(楽しいな。)
その頃、生徒会室。
ルークは窓の外を眺めていた。
校庭では、新入生たちが昼休みを過ごしている。
その中に、ツララの姿があった。
アイリスと笑い合い、ねねと楽しそうに話している。
その自然な笑顔に、ルークも思わず口元を緩めた。
「会長。」
ノアが書類を差し出す。
「今年の新入生で特に優秀な生徒の一覧です。」
ルークは目を通す。
一番上に書かれていた名前は——
ツララ・ルミアーナ
ルークは小さく息をついた。
(測定不能……。)
(だが、それ以上に。)
(あの笑顔が気になる。)
自分でも、その理由は分からなかった。
放課後。
学院長室。
学院長、ルーク、そして数人の教師が集まっていた。
机の上には、一つの報告書。
「ツララ・ルミアーナ。」
学院長は静かに言う。
「彼女について調査は?」
教師が首を振った。
「ルミアーナ公爵家の記録にも、不審な点はありません。」
「幼い頃に両親を亡くしたこと以外は、ごく普通の令嬢です。」
学院長は腕を組む。
「……普通、か。」
ルークだけは黙っていた。
彼の胸の中には、一つの確信が芽生え始めていた。
(普通ではない。)
(だが、それが悪いことだとは思えない。)
(彼女には、まだ誰も知らない何かがある。)
窓の外では、夕日に照らされた銀髪の少女が、ねねと並んで学院を後にしていた。
その背中を見送りながら、ルークは静かに呟く。
「ツララ・ルミアーナ……。」
「君は、一体何者なんだ。」
その問いに答えられる者は、まだ誰もいない——。
第一巻 第五章 完
📖 次回・第六章「初めての実技授業」
ツララは初めてクラスメイトと実技授業に挑む。魔法を使うたびに周囲を驚かせる一方、本人は「普通にやっているだけ」と思っている。そして、その様子を視察に来たルークが見守ることになる。物語はここから少しずつ、ツララの”普通ではない力”を巡って動き始める。
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コメント
1件
読了したよー!🌸✨ 第五章、めっちゃ穏やかで温かい日常が広がってて、思わずほっこりした〜💕 ツララちゃんが周りの視線に戸惑いながらも、アイリスやねねに支えられて少しずつ笑顔を取り戻していくシーンが本当に尊い…! あとカインくんのツンデレっぽい登場と、それに優しく微笑むツララちゃんのギャップにやられた😭💥 ルーク先輩がツララちゃんを静かに見つめる視線もエモすぎる…次回の実技授業、絶対見逃せない!続きが気になるよ〜✨