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第六章 初めての実技授業
翌朝。
春の日差しが学院の訓練場を照らしていた。
一年A組の生徒たちは、実技用の制服に着替え、広い訓練場へ集まっている。
「今日はいよいよ実技授業です。」
担任のセシリアが全員を見渡す。
「魔法は力です。」
「ですが、その力は誰かを傷つけるためではなく、守るためにあります。」
ツララは真剣な表情で頷いた。
(守るための力……。)
その言葉は、不思議と胸に響いた。
「まずは初級魔法の実演から始めます。」
教師が的を並べる。
「一人ずつ前へ。」
クラスメイトたちは詠唱しながら魔法を放っていく。
「炎よ、我が手に宿れ──!」
「ウォーターボール!」
「ウィンドカッター!」
どの生徒も詠唱してから魔法を放つ。
それが当たり前だった。
「次。」
「ツララ・ルミアーナ。」
ツララはゆっくり前へ出る。
(どうしよう。)
(いつも詠唱してない……。)
少し考えたあと、小さく息を吸う。
「…………。」
口を開こうとするが、言葉が出てこない。
(詠唱、分からない……。)
するとセシリアが勘違いした。
「焦らなくて大丈夫ですよ。」
「詠唱はゆっくりで構いません。」
「はい……。」
ツララは少し安心した。
(いつも通りにやってみよう。)
誰にも聞こえないくらい小さく息を吐く。
次の瞬間。
シュン──。
空気が震えた。
何の前触れもなく、透明な氷の矢が現れ、一直線に的へ飛ぶ。
ズドン!!
的は凍り付き、真っ二つに割れた。
「…………。」
訓練場が静まり返る。
ツララは慌てて振り返る。
「えっと……。」
「ちゃんとできましたか?」
教師たちは固まっていた。
(見えなかった。)
(今、いつ詠唱した?)
(いや……聞こえなかっただけか?)
誰も”無詠唱”という発想には至らない。
ルークだけを除いて。
訓練場を見下ろすバルコニー。
生徒会メンバーが視察に来ていた。
「今年は優秀ですね。」
ノアが呟く。
ルークは答えない。
ただ、ツララだけを見つめていた。
(……今。)
(詠唱が。)
(聞こえなかった。)
しかし距離が遠い。
風の音もある。
聞き逃しただけかもしれない。
(気のせい……か。)
ルークは自分にそう言い聞かせた。
授業が終わると、アイリスが駆け寄ってきた。
「ツララちゃん、すごかった!」
「え?」
「氷の矢、一瞬だったよ!」
「そうかな?」
ツララは首をかしげる。
「普通だと思うけど……。」
その言葉に、周りのクラスメイトたちは苦笑いするしかなかった。
(あれが普通なら、俺たちは何なんだ……。)
その日の夕方。
ルークは自室で机の引き出しを開けていた。
そこには、小さな木箱。
そっと蓋を開ける。
中には一つの髪飾り。
銀色の雪の結晶を模した、美しい髪飾りだった。
ルークは静かに微笑む。
「……また、会えたんだな。」
幼い日の記憶はまだ曖昧だった。
泣いていた銀髪の少女。
名前も知らないまま別れた少女。
まさか、その少女がツララだとは、まだ気づいていない。
その髪飾りが、やがて二人の運命を再び結びつけることになるとは――。
第一巻 第六章 完
次回!
ツララは生徒会に呼び出されて…!?
コメント
1件
実技授業のシーン、ツララちゃんの無詠唱めっちゃかっこよかった…!😭💕 みんなが詠唱してる中で「…言葉が出てこない」って焦る姿が可愛くて、なのにいきなり氷の矢がバーン!って飛んでくギャップにやられたよ…!! ルークが気づいてるフリしてまだ気づいてないのもニヤニヤしちゃうし、最後の髪飾りで過去のエピソード匂わせてるところがもう…エモすぎて息できんかった。//// 次回生徒会召還!?続きが気になりすぎるよ〜〜!!🌸