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ほどなくして、侑はCDを数枚手にしてリビングへ戻ってくると、
「ひとまず座れ」
と、瑠衣に勧め、彼も彼女の隣に腰を下ろした。
手にしていたCDを一枚ずつローテーブルに並べ、フウっとため息を付く。
瑠衣が覗き込むと、それは侑が以前、ドイツ留学時に出したCDだった。
タキシードを来てトランペットを抱えている凛とした姿の侑、広大なドイツの田園風景をバックにラフな服装でトランペットを吹いている姿の侑……など、若かりし頃の師匠のアルバムジャケットに、瑠衣は目を凝らすように眺めている。
(髪も今よりも全然短いし、クールなイケメンぶりは、この頃からだったんだ……)
侑が留学中にCDデビューした事は、高校時代に見た吹奏楽専門誌『バンドファン』で記事が掲載されていたので知ってはいたが……。
(…………何かエモいかも)
実際に彼のCDを見て、不謹慎ながらも感動してしまった瑠衣だった。
「俺はドイツにいた頃、CDを数枚出したが…………アカデミー卒業を控えた時期に、本当はもう一枚、発売するはずだったんだ」
当時の事を思い出したのか、侑が厳しい表情を見せながら話を続けた。
ピアノの伴奏者やレコーディングスタッフ、ジャケット写真を撮影するカメラマンの手配も済み、収録曲も決定していた事。
満を持して、侑はレコーディングに臨んだ事。
レコーディングも、ジャケット撮影も滞りなく済み、後は販売されるのを待つだけ、という時に、事が起こったという。
「向こうのレコード会社が突然、CDの販売中止を決定し、契約も解除してくれ、と一方的な通達をしてきた」
全く解せない、と思った侑は、レコード会社に直談判し、販売中止と契約解除の理由を教えてくれ、と掛け合ったが、理由は言えない、との一点張りだったという。
「…………俺もまだあの頃は二十代半ばだったし、勢いで何度もレコード会社に足を運び、理由を説明してくれ、と要求したが、結局、最後まで教えてくれなかった」
最後にレコード会社を訪れた時、侑の目の前には社長を始めとするレコード会社の重役や現地の日本人スタッフを引き連れ、まるで彼を待ち構えていたようだったという。