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Never, Forever

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Never, Forever

12 - 泡沫#1〈Pink×Blue〉

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2023年03月09日

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Side 青


ドア越しに、アコースティックギターの音がする。個室だから許されているのだろう。

ノブに手をかけたところで、止めた。

その音に乗って、彼の声が聞こえてきたからだ。

前みたいな張りはなく、弱々しい。でも音程はしっかりしていて、上手さはきょもの歌そのもの。

扉の前で聞き入る。

聴いたことのないメロディーだった。バラードのようで、テンポはゆっくりとしている。

が、突然歌が消えた。

そして耳に届いたのは、苦しそうなうめき声。

慌ててドアを開けて中に入った。

ギターは布団の上に放り出され、きょもはベッドの上で胸をつかみ背中を丸めている。

「大丈夫かっ、おい」

ナースコールのボタンを押そうとしたところ、止められた。

「いい、から…」

「そんなこと言うなよ。痛いんだろ」

どこにそんな力があるのだろうと思うほど、強く腕を引っ張られる。

仕方なく、落ち着かせるほうに徹する。

身体を横にさせ、背中をさする。深呼吸を促した。

「大丈夫だからな。俺がいるから」

何度か深い息を繰り返し、つむっていた目を開けた。

「ありがとう」

うなずき、丸椅子に座る。

「…でもこういうときに呼ばないと、ナースコールの意味がないよ」

忠告の意を込めて言う。

きょもは「これ置いてくれる?」とギターを手渡す。そばのスタンドに立てかけた。

「なあ。わかってる?」

「だって」

意外と力強く放った。

「今日は2回発作が起きて、看護師さんに来てもらって。これ以上迷惑かけるのも嫌だし、鎮静剤入れられるのも嫌。心電図とかついてて監視されてる感あるもん」

そのすねたような口調に、微笑が漏れる。

「迷惑じゃないでしょ。当たり前のこと。みんなが、きょもの命を大事に思ってるから来てくれるの。俺もそうだし」

そっか、とつぶやいてうつむく。

少し暗くなってしまった雰囲気を変えようと、話題をそらす。

「…さっき弾き語りしてた曲ってなに?」

聴いてたんだ、と顔を上げる。

「新しく作った。ていうか弾いてたらポロッって出てきたんだよね、フレーズが。けっこういい歌でしょ?」

途端に嬉しそうになる。

「うん。綺麗なバラードだね。タイトルとかってあるの?」

きょもは考えるように、外の庭園へ視線を向ける。

思わずそれを追いかけて振り返ると、息を呑んだ。

目いっぱいに枝に花をたたえた桜の木が、そこにあった。堂々と胸を張るその姿は美しい。

「桜、すごいね」

彼の麗しい目が、少しだけ細くなって笑った。

「俺のメンバーカラーでいっぱい」

「ハハッ、じゃあ空は俺の色だね」

その瞳に涙なんか浮かばせたくない。

俺が、拭ってやるから。

もうすぐ役目を終えようとしている心臓が、止まる時まで。


続く

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