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俺の学校の通り道には神社がある。

だが、通り過ぎているだけで

実際に鳥居の奥には行ったことがない。

しかし、俺以外の人達は昨日訪れたらしい。

なんでかって?

そりゃあ、お花見だったからだよ。


俺は学校帰り、その神社に寄った。

理由は自分でも分からない。

多分暇だったのだろう。

それはともかく、昨日の花見で至る所に

ゴミが落ちている。

何もすることがない暇人の俺は

花見のゴミを拾うことにした。

しかし、拾っても拾ってもキリがない。

そんなとき、

俺の目の前にたくさんの桜の木があった。

「綺麗だな….」

と俺が見とれていると、

ザァァァァッという音と共に

桜吹雪が俺の視界を奪っていった。


数分後、俺は瞑っていた目を開けると

そこには1人の女の子が立っていた。

その子は桜の木と同様、見とれるほどの美人だった。

だが、さっきまでがこんな子いなかったはず….

そんなことを考えていると

「ねぇ、、貴方、名前は?」

突如、その子が俺の名前を聞いてきた。

俺は咄嗟に「涼」と自分の名前を答えた。

知らない人に自分の個人情報を話すなど

不用心だなと自分でも思ったが、

何故か答えずにはいられなかった。

「涼….私の名前は凪」

俺が聞く前にその子は自分の名前が

凪だということを俺に話した。

しかし、その日はそれ以外話さなかった。

気づいたら居なくなっていたからだ。

今までの中で不思議な体験だと思った。


次の日、俺は友達の「由依」と「悠」と一緒に

学校へ向かった。

そいつらは、名前の初めの文字が

共通していることから、みんなには

「ゆゆコンビ」と呼ばれていた。

ゆゆコンビに凪の話をしたら、

「凪ってあれじゃね?あの~…..なんだっけ..」

「2年の先輩でしょ!!」

「なんかクールでモテてるんだって~」

と言っていた。

同じ学校の生徒だったのか。しかも、先輩…。

「てか学校遅刻するじゃん!!早く行こ!!」

と由依が急かす。

登校中だということをすっかり忘れていた。

凪先輩のことはまた後で考えることにしよう。


学校帰り、俺はまた神社へ向かった。

案の定、凪先輩はあの桜の木の下に立っていた。

「涼….この花の名前、知ってる?」

そう言って凪先輩は桜の木を指さした。

「ん〜……」

桜ということは分かるが名前までは分からない。

「知らないです」

「この花の名前はね……….」

「その前に…涼、敬語は要らない」

「え?先輩なのに?」

「先輩….?あぁ…そういえば…」

そう言いながら凪先輩はブツブツと

独り言を漏らした。

「ぇ..あ、分かった」

とりあえず話を進めておくために

俺は適当に返事をした。

「ありがとう」

そう言いながら凪先輩は微笑んだ。

正直に言うと世の中の男は一瞬で恋に落ちるだろう。

そのくらい俺にとっては美女だった。

「この花の名前はね、修禅寺寒桜って言うんだよ」

「しゅうぜん….え?」

「修禅寺寒桜よ」

「じゃあ次、これは知ってるかしら?」

そう言って凪先輩は青色の花を

俺に見せてきた。

「んー….見たことあるようでないような….」

そう言って俺が悩んでると、

凪先輩は笑いながら

「これは、勿忘草って言うのよ」

と言った。

その日は色々な花を学んだ。

先程の2つの花の他に、スノーフレーク、

カンヒザクラ、カワヅザクラ。

計5つを教えてくれた。

どれも聞いたことがない名前だった。

その日はもう遅いからと言って

凪先輩と別れた。

凪先輩が帰り際に何か言いたげだったが、

俺は気づかなかった。


次の日、また今日も凪先輩に会いに行った。

だが、凪先輩は神社に居なかった。

出かけてしまったのだろうか。

俺はその日は仕方なく家に帰った。

だが、居なかった日はその日だけじゃなかった。

毎日神社に行っても凪先輩は現れなかった。

俺はすごく心配になった。


そして、春終わりの今日も神社へ向かった。

「あ、涼久しぶり」

そこには俺の名前を呼んで微笑む凪先輩がいた。

「どこ行ってたの?」

そう俺が聞くと

「秘密」

と答えた。

だが、

「じゃあね」

と言って凪先輩は俺の目の前で消えた。

消えると言っても、

あの桜吹雪に視界を奪われたあと、

凪先輩はその場にいなかったのだ。

まるで、春が終わるのと同時に消えたように。


桜は若葉になっていた。

あぁ、夏が始まったのだ。

その日は昼から学校があったため、

ゆゆコンビといつものように学校へ向かった。

「あのさ、凪先輩が消えたんだよね」

「ん?凪先輩?」

「凪先輩って誰?」

え?どういうことだろうか。

「え、凪先輩ってうちの学校の先輩だけど?」

「そんな先輩うちの学校にいないよ?」

何故か、

凪先輩という存在が元々居なかったような….。

「ちょ、今日俺休むわ!!」

「え!?」

「先生に言っといて!!!」

そう言って俺は神社に向かった。

俺は神社に着いたあと、

凪先輩から教わった花の花言葉を急いで調べた。

すると、

勿忘草の花言葉は ” 私を忘れないで ” 。

そして、

修禅寺寒桜の花言葉は ” 貴方に微笑む ”

だった。

ほかの花の花言葉も調べたが、

何故だか俺の頭の中には凪先輩の姿があった。

しかし、勿忘草の花言葉だけ少し違和感を感じた。

他の花は凪先輩自体を表しているようなのに、

勿忘草だけはメッセージみたいなものだった。

俺は若葉を生い茂った修禅寺寒桜の幹に手を添えて

「俺は忘れないよ。永遠に」

そう言い、心に誓った。

すると、風が吹いて若葉の音が鳴り響く。

それと同時に

『ありがとう』

そう聞こえた気がした。

もしかしたら凪先輩は

“ 春 ”

自体だったのかもしれない。

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