テラーノベル
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拠点の外から、複数の足音が聞こえていた。
ざく、ざく、と土を踏む音。
壁の向こうで何かが動いている。
カキが入口の隙間から外をのぞこうとすると、メバルがすぐに腕を伸ばした。
「カキ、見ないで。危ないよ」
「でも、何がいるか確認しないと」
「私が見る」
メバルは麻酔銃を構えた。
いつもの明るい表情はない。
目は鋭く、銃口は入口へ向けられている。
カキが小声でつぶやいた。
「メバル、顔が怖い……」
「敵が来るなら、止める」
「いや、そういう意味じゃなくてさ」
マサカゲが周囲を確認する。
「敵の数は不明。アオノ、照明を増やせるか」
「可能です。ただし、回路を外へ伸ばす必要があります」
「やれ。ミステーは材料を運べ」
「何の材料?」
「光るものだ」
ミステーは少し考えた。
「私のピラミッドは光らない」
「それ以外だ」
「残念」
アオノが回路を接続すると、壁の上に小さな光源がいくつも設置された。拠点の周囲が照らされる。
そこに浮かび上がったのは、四足歩行の黒い生物が三体だった。
壁の前をうろつき、時折こちらへ頭を向けている。
カキが息をのむ。
「三体か……。さっきのやつより多いな」
「壁がある。冷静に対処すれば問題ない」
マサカゲはそう言ったが、手に力が入っていた。
メバルは麻酔銃を構えたまま、敵の一体へ狙いを定める。
引き金を引く。
小さな針が飛び、黒い生物の肩へ刺さった。
生物は数歩進んだところで動きを止め、土の上へ倒れた。
「当たった!」
カキが声を上げる。
「残り二体」
メバルは次の敵へ銃口を向ける。
もう一度、引き金を引いた。
今度も針は正確に敵へ命中した。
黒い生物は体を揺らし、ゆっくりと倒れる。
「あと一体!」
カキが叫ぶ。
最後の一体が壁へ突進した。
さぶれ-SABURE-
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K-Takasaka
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土のブロックが大きく揺れる。
アオノが回路を操作し、壁の一部を開閉させた。敵の足が壁の隙間へ入り込んだ瞬間、ブロックが閉じる。
「今です」
メバルが撃った。
麻酔針が敵の首元へ刺さる。
最後の一体も、力を失って崩れ落ちた。
拠点の外が静かになる。
メバルは数秒間、銃を構えたままだった。
「もう大丈夫じゃない?」
カキが声をかける。
「まだ分からない」
メバルは周囲を見回した。
「敵が隠れているかもしれない」
「全部倒れた。確認もできている」
マサカゲが言う。
「でも……」
「メバル」
K-Tが呼んだ。
メバルはゆっくりと銃を下ろした。
そして、麻酔銃を手から離した。
床に置いた瞬間、表情が一気に変わる。
「……怖かったぁ!」
メバルはその場にしゃがみ込み、両手で自分の肩を抱いた。
「えっ?」
カキが目を丸くする。
「さっきまで、あんなに堂々としてたのに」
「だって、銃を持ってる間は大丈夫だったんだもん! でも、離したら急に怖くなった!」
メバルは震えながら、銃を見つめる。
「これ、持ってるとみんなを守れる気がする。でも、持ってないと……あの敵がまた起き上がってきそうで……」
「眠らせただけだから、いずれ動く可能性はある」
アオノが言った。
メバルの顔がさらに青くなる。
「アオノ、そういうことは今言わないで!」
「事実です」
「事実でも!」
カキが慌てて麻酔銃を拾い、メバルへ差し出す。
「ほら、持っとく?」
「持つ!」
メバルはすぐに受け取った。
銃を握った途端、震えが少し止まる。
マサカゲが眉をひそめた。
「依存するな。武器を持っていることと、安全であることは別だ」
「分かってるよ。でも、今はこれがないと無理……」
メバルは銃を胸元へ抱えた。
K-Tが外の敵を確認する。
「俺が視察に出る」
「一人で?」
カキが聞く。
「周辺の地形と敵の数を確認する。拠点の外に何があるか分からないままでは、明日の行動を決められない」
マサカゲがすぐに反対した。
「危険だ。朝まで待つべきだ」
「夜間にしか出ない敵がいる可能性もある」
「それでも単独は認められない」
「短時間で戻る」
K-Tはクラフト画面を開き、警棒を作成した。続けてトンファーを手に取る。
メバルが不安そうに見上げる。
「Kさん、本当に一人で行くの?」
「ああ」
「気をつけて。何かあったらすぐ戻ってきてね」
「了解」
「絶対だよ」
K-Tは短く頷き、入口から外へ出た。
拠点の光が背中から離れていく。
夜のアイーンクラフトは、昼間とはまったく違っていた。
木々は黒い影になり、遠くの山は輪郭しか見えない。
K-Tは足跡を確認しながら、ゆっくりと進んだ。
地面には、先ほどの敵が残した黒い粒子がわずかに残っている。
その先に、細い道が続いていた。
K-Tは道の先へ進む。
すると、前方に人影が立っていた。
二本の足。
細い体。
白い骨。
その手には、黒い銃が握られている。
骸骨はK-Tを見つけると、ゆっくり銃口を向けた。
K-Tは即座にトンファーを構えた。
距離は近い。
先に踏み込めば、相手の射線を外せる。
K-Tが地面を蹴った。
しかし、骸骨の動きのほうがわずかに早かった。
乾いた発砲音が夜の森に響く。
銃弾がK-Tの胸に命中した。
衝撃が体内を突き抜ける。
痛みが遅れて押し寄せた。
現実の銃撃とは違う。
それでも、痛みは本物だった。
熱い。
重い。
呼吸ができない。
K-Tはトンファーを振り上げたまま、動きを止めた。
視界が大きく揺れる。
膝から力が抜け、地面に倒れた。
「……っ」
声にならない息が漏れる。
骸骨が再び銃を構えた。
K-Tは手を伸ばそうとしたが、指先すら動かない。
痛みで体の感覚が崩れていた。
次の銃声が聞こえる。
視界が白く染まった。
そして、すべてが暗転した。
拠点では、メバルが入口を見つめていた。
K-Tが出てから、十分以上が経っている。
「遅いね」
カキが不安そうに言う。
「視察に時間がかかっているだけだ」
マサカゲが答えたが、何度も外を確認している。
アオノが画面を操作した。
「Kさんの位置情報が消えました」
メバルの手から麻酔銃が落ちた。
「え……?」
「消えたというより、接続位置が初期化されています」
アオノが続ける。
その瞬間、拠点の中央に光が集まった。
人の形になる。
K-Tだった。
ただし、片膝をつき、両手で胸を押さえている。
「Kさん!」
メバルが駆け寄る。
K-Tは呼吸を荒くし、しばらく動けなかった。
「撃たれた……」
カキが声を震わせる。
「敵に? 銃を持った敵がいたの?」
K-Tは答えようとしたが、痛みで顔をしかめた。
メバルがすぐに包帯を取り出す。
「動かないで。どこを撃たれたの?」
「胸部。ダメージは回復している」
「回復してても痛いんでしょ!」
メバルはK-Tの服を確認し、傷がないことに驚いた。
だが、K-Tの呼吸はまだ浅い。
体は戻っていても、痛みの感覚だけが残っているようだった。
「しばらく動けない」
K-Tが低く言った。
マサカゲが立ち上がる。
「リスポーン地点へ戻されたのか」
「そうだと思います」
アオノが答える。
「死亡時に一定時間前の地点へ復帰する機能が働いたようです」
カキが青ざめた。
「じゃあ、撃たれたら……またここに戻される?」
「そうです。ただし、痛みは消えません」
メバルはK-Tの背中を支えた。
「Kさん、横になって。無理に動かないで」
「敵の位置を伝える」
「今は休んで!」
「必要な情報だ」
「でも、痛いんでしょ!」
メバルの声が震えた。
K-Tはしばらく黙っていたが、やがて壁にもたれた。
「……骸骨。銃を持っている」
マサカゲが厳しい表情になる。
「武器を使う敵か」
「距離を詰める前に撃たれた」
「敵の種類、数、地形は?」
「一体。森の先。射線が通る」
アオノが画面に地図を表示する。
「Kさんが向かった方向に、未探索区域があります。そこに敵が配置されている可能性があります」
カキが拳を握った。
「じゃあ、洞窟探索は後回しにしたほうがいいな」
「いや、鉱石は必要だ。防具も武器も強化できない」
マサカゲが答える。
「ただし、次は全員で行動する。単独視察は禁止だ」
メバルは麻酔銃を拾い、K-Tの隣に座った。
「私、これ持ってる」
「そうだな」
「でも、今は怖い」
メバルは銃を見下ろした。
「Kさんが撃たれて戻ってきたのを見たら、余計に怖くなった」
「それでも持つのか」
「うん」
彼女は麻酔銃を握り直した。
「怖いけど、必要だから」
少し黙ったあと、メバルは銃を床に置いた。
すぐに顔を青くする。
「やっぱり無理! 怖かったぁ!」
「戻すな!」
カキが驚いて叫ぶ。
「だって置いたら、骸骨がここまで来そうなんだもん!」
マサカゲが額を押さえた。
「武器を持ったときと、離したときで差がありすぎる」
ミステーがメバルを見つめる。
「銃は、メバルの勇気を食べている」
「食べてないよ!」
「では、勇気を貸している」
「それなら、たぶんそう」
メバルは麻酔銃を抱えた。
そのとき、拠点の外から新たな音が聞こえた。
カチ、カチ、と金属が擦れる音。
全員が入口を見る。
マサカゲが立ち上がる。
K-Tはまだ痛みで動けない。
アオノが照明を外へ向けた。
光の中に、白い腕が見えた。
そして、銃口がゆっくりと壁の隙間へ向けられる。
メバルは麻酔銃を構えた。
顔から恐怖が消える。
「今度は、私が止める」
銃声が、拠点のすぐ外で響いた。
コメント
1件
メバルの銃への依存、すごく刺さりました。持ってる間は凛としてるのに、離した瞬間に「怖かったぁ!」ってなるギャップが切ない…。ミステーの「勇気を食べてる」も妙に的を射てるというか。Kさんが撃たれて戻ってきた描写は痛みがリアルで、胸がぎゅってなりました。次はメバルが銃を握ったまま戦うのか…続きが気になります🥀