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「国税局査察部だ。任意での帳簿の提出と、事務所の捜査を執行する」
早朝、ルーツ・ガーデンのオフィスに黒いスーツの集団が雪崩れ込んできた。
長谷川幹事長が放った刺客。
彼らは脱税や資金洗浄の嫌疑を捏造し
私から「悪のリスト」を奪い、社会的に抹殺しようと目論んだのだ。
職員たちが動揺する中、私は父の万年筆を置き、優雅にコーヒーを一口啜った。
「お待ちしておりました。……山崎さん、彼らに『特製』の帳簿をお出しして」
山崎さんがテーブルに並べたのは
数百冊に及ぶ、血の滲むような正確さで記されたルーツ・ガーデンの全記録。
そこには、一円単位の寄付金から
鉛筆一本の購入費用まで、すべての領収書が完璧な時系列で紐付けられていた。
「……バカな。これほど完璧な帳簿が、この世にあるはずがない」
査察官の一人が、震える手でページをめくる。
彼らが数時間かけて粗探しをしても
一円の不整合も、一円の使途不明金も見つからない。
なぜなら
私は直樹という男に「数字で殺されないため」に、自分の人生を完璧な決算書に書き換えてきたのだから。
「査察官の皆様。……粗探しは終わりましたか?」
「もし私の帳簿に不備がないのであれば、あなたたちのこの不当な捜査にかかった『わが社の時間的損失』、一円単位で国に請求させていただきますわ」
その時、オフィスのモニターに海斗がハッキングで割り込んできた。
「詩織さん、準備完了だ。……今、長谷川が査察部に『無理やり嫌疑をデッチ上げろ』と指示している音声データと、彼が隠蔽してきた本物の脱税記録を、全てのメディアとSNSに同時放弾した」
「……『国家の犬』が善良な市民を弾圧する様は、視聴率がいいみたいだ」
海斗の「情報開示」は、瞬く間に世論を炎上させた。
査察官たちのスマホが鳴り止まない。
上層部からのパニック状態の指示。
彼らはもはや、私を裁く側ではなく、国民から「裁かれる側」へと転落したのだ。
「……数字はね、あなたたちのような権力者に媚びたりはしないのよ」
私は、真っ白なままの査察報告書を彼らに突き返した。
【残り16日】