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「ふっかだけを最優先で…」「でも、男はふっかのこと手放す気ないから…」
色々な意見を出しながら、頭を悩ませる8人。
〖カァッ!カァッ!〗
そんな8人の元へ、”烏”がやってきた。
「…烏!?」
驚いたように声をあげる向井、渡辺、宮舘、目黒、佐久間、ラウール。
だが、阿部と岩本はその姿に見覚えがある。
『見た目は普通の烏なのに、俺らを攻撃しないし、やけに目が合う。
羽を広げてるのは威嚇じゃない気がした。』
岩本と阿部が深澤の違和感について話した時に飛んできた烏だ。
「…まさか…ふっかの…?」
そして、ついに気づく。
今は普通の烏の形をしたそれは、深澤の式神である”伝説の大烏”だ。
〖カァッ!!〗
肯定するかのように、首を振りながら羽を広げる。
「あの時…伝えようとしてたんだ….」
あの時から、大烏はずっと深澤の異変を伝えようとしてたのだ。
「でも、何言ってるか分かんないよ…」
いくら伝説の大烏といえ、人間の言葉が喋れるわけではない。
伝えたいことなど分からない。
と、思ったが…
「佐久間くん、烏になれる?」
目黒が思いついたように佐久間に視線を向ける。
「…っ!なるほどな!任せろ!protean!!」
目黒に言われた通り、佐久間は目の前にいる烏そっくりになる。
〖カァ!カァ!!〗
〖カァカァッ!カァ!〗
7人はその様子を真剣に見つめる。
しばらく烏の会話が続き、ようやく佐久間の姿にもどる。
佐久間はすぐに口を開かなかった。
ただ、ゆっくりと周囲を見渡す。
「おい…かなりやべぇことになってんぞ…」
その声は、今まで聞いたことがないくらい険しい。
佐久間は早速、大烏の話していたことを伝える。
(佐久間視点)
ふっかと男が出会ったのは16年前。
ふっかは男が言う通り、ずっと認めて欲しいって感情を押さえつけてたんだ。
なんか、高校であったらしい。
家に帰ってきた時、明らかに雰囲気が変わってたんだって。
いつも目輝かせながら高校の話してくれるのに、その日をきっかけに変わったんだ。
ふっかが、笑ってるのに笑ってない。
瞳の輝きも消えて、気持ち悪いほど”完璧な笑顔”をするようになった。
前にあった自信もない。
誰かを見て、持ち上げるだけ。
自分から何かをするんじゃない。誰かに頼まれたことだけをそれなりにこなす。
大烏は、ずっとそんなふっかを心配してた。
そんな中、出会っちまったんだ。
あの男と。
大烏は、男とふっかが一緒にいる時干渉できない。
大烏が干渉したら、あの男は確実に深澤を無理やり利用して、大烏を手に入れようとすると思ったから。
でも、今の状況の通り、男は深澤をじわじわと精神的に縛り付けていった。
大烏じゃないと感じ取れないほどに微力な能力で。
ふっかは、確かにあの男と出会ってから変わった。
でも、それはふっかが望む救いじゃない。
ふっかの孤独が救われたと思わせれてるだけで、どんどん深くなってる。
それでも、ふっかは男を選ぶ。
大烏も、わかってたんだ。
このまま男にふっかの身体を渡すわけにはいかない。
でも、今ふっかを止めたら….
ふっかは壊れる
「….だから、ずっと救えなかったんだ…..」
佐久間が声を震わせながら言葉を紡ぐ。
「……」
今の話を聞いて、誰も発言ができなかった。
深澤は、自分たちの思ってる以上長く傷つき続けて、男にそれを利用され続けていたのだ。
「…..笑ってるのに、笑ってない…そう感じることは、結構あったよね…」
宮舘がそんなことを呟く。
「俺らが、戦い終わった後とか…?」
思い出すように渡辺も言う。
「1回、言ったことある気すんだよな…その笑顔、気持ちわりぃって…」
「はぁ!?お前、ふっかに!?」
渡辺の急な告白に驚きを隠しきれない7人。
優しすぎるくらいの深澤に気持ち悪いなんて言えるわけがない。
「多分俺さ、深澤とSnow Manになる前に任務で一緒になったことあんだよ。」
任務で誰かと一緒になることは珍しいことではない。
あくまで任務で一緒になっただけの関係なため顔や名前は覚えていないだけだ。
「気持ち悪い笑顔で思い出した。あいつの笑顔が気に食わなかったんだ。…..今は大分マシになってる気はするけどな…」
渡辺がそんなことを呟く。
「あのころは、とにかく笑顔を周りに振りまいてた。誰かに頼ってもらおうとしてた。薄っぺらいやつだなって思って気持ち悪いって思ったんだ。」
「ふっかも、変われてはいるんだ。」
渡辺の発言を聞き、はっきりと、断言するように岩本が言う。
「ふっかはまだ完全に自分を見失ってない。まだ間に合う。」
岩本の前向きな発言。
「俺らの前のふっかは、笑顔の仮面を被った偽物のふっかだけじゃない。本物のふっかの笑顔もあったんだ。」
この発言によって、メンバーの士気がさらに上がる。
(深澤視点)
「……は….」
急に意識が覚醒する。
頭、痛いな…..
最近ずっと頭が痛い気がする。
さっきまで、何してた?
俺は…?
「……っ…!!!」
今まで感じたことの無い恐怖に襲われる。
鳥肌やば….
怖い….怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い….!!!
「….何も….思い、出せない….」
名前はわかる、深澤辰哉。
そこはわかってるのに….!!!
「はぁ、はぁ、はぁっはっ…」
それ以外は?
呼吸が乱れて苦しい。
肺が圧迫されて、息できない…
分からない、それ以外のことが分からない…!!!
俺は今まで何してたの?
誰か知ってる人は?
記憶が空白だ。
誰の顔も浮かばない。
俺が今まで何をしてたのかも分からない。
俺は、!?
「ほんとに…生きてた….?」
生きてた感じがしない….
生きてたとしても、俺は死んでたのと同じだ。
こんな恐怖、初めて….
恐怖からか、頭の痛みが増していく。
俺はもう、俺が誰なのか分からない….
「誰か…..助けて……」
誰に言ってるかなんて分からない。
でも、誰かに届いて欲しくて….
そのまま、意識を失った。
「助けてなんて――」
小さく、喉の奥で笑う。
「届かないのに、バカだなぁ…」
男は意識を失っている深澤を嘲笑うように言う。
「君を助けられやつなんて居ないんだよ。」
深澤に言い聞かせるように。
「君みたいな子を助けても、誰も得なんてしないんだから…」
追い詰めるように。
「壊れたおもちゃなんて、みんな捨てるでしょ?」
ゆっくりと深澤を抱き抱え、
「いらなくなったから。必要がないからだ。壊れた君を誰が必要とするの?」
意識を失っても苦しそうな表情の深澤の頬に触れる。
「”私”だけだろう?壊れた君を、役たたずの君を捨てないのは…」
甘い声で囁く。
「…..ぅう…..うぁ゛…..」
苦しそうに悶える深澤。
「”私”だけは、君を見ているよ。」
男はそう言って、深澤の頭を撫でる。
「…..ボス、だけ……ボスだけが、俺のこと…..」
さっきまで悶えていたのに、深澤はどんどんと力が抜けていく。
完全に力が抜けたのを確認して、男は立ち上がる。
「全く、想像以上にしぶといものだ。」
先程の甘い声と優しい瞳はなく、苛立ちを込めた声と鋭く冷たい瞳で不満を漏らす。
「早く堕ちれば楽になれるというのに…」
深澤は、男の想像以上であった。
確かに洗脳は効いている。
だが、深澤は”自身の記憶を切り離す”ことによって、洗脳から一時的に免れることかできるのだ。
深澤は、無意識に男の洗脳から自信を守っていた。
だが、
「まぁいい。どうせあと少しで終わるんだ。それまでは、存分に”このおもちゃ”で遊ぼうではないか。」
男はそんなことはどうでもいいのだ。
洗脳から免れる?
それがなんだ。またかければいい。
助けを求めてる?どうせ誰にも届かないのに?
男は深澤を雑にベッドへ放り投げる。
微かに軋む音。
それすら気に留めることなく、そのまま部屋を後にした。