「ふぅ……深呼吸しろ、俺」
俺は部屋を出た後、《食堂》と書かれた部屋の前にいた。
話によるとここに子供達がいるはずだ。
「何だかんだ女の子の日が続いてそれから屋敷を出たからみんなと会ってないなぁ」
最後に会ったのは、みーちゃんくらいか。
「よし!いくぞ!」
両頬を叩き気合を入れていざ!ドアを開ける!
__と
「あらぁ、久しぶりだねぇ」
「!?」
俺を奴隷生活にした張本人。
つり目とその独特なねっとりした口調が特徴の人攫いの女がナイフを持って立っていた。
「う、うそでしょ……なんで」
周りを見ると獣人の先生達は倒れていてモグリマスターは目隠しをされ椅子に縛り付けられていた。
「んー?まぁこっちも避難しようと思ってたんだけどねぇ、外の気持ち悪いやつらを殺してたら金髪の小さな子が助けてほしいって言うから事情を聞くとどうやら戦力もない団体さんが逃げ遅れてた見たいねぇ」
「金髪の小さな子……っ!子供たちは!?」
周りには子供達が一人もいない!
「安心するといいねぇ、大事な商品は傷つけたりしないよねぇ」
「まさか!でもあの子達は奴隷で買われてるはず!」
「だから、こうしてるんだのねぇ」
そう言ってモグリマスターの爪を一枚剥いだ!
「ぐぁぁあ!!!!!」
「や、やめろ!!!」
「やめるよねぇ?ちゃーーんと、コレに魔力を通してくれたらねぇ」
そう言って出してる魔皮紙は俺にはわからないがこの状況から見て解る。
きっと奴隷の解放する為に必要な魔皮紙だ。
「そ、そんなのすぐにバレる!」
「あらぁ?どうかしらねぇ?この町はもう死者で溢れかえってるからここでこーんな事してもバレないと思うけどねぇ?」
火事泥棒、その単語がこの状況で1番当てはまるだろう。
くそ!なんとか阻止しないと!
「もしかしてだけどアンタもこいつに買われてるのねぇ?」
「違う、僕のマスターは違う人だ」
「あらぁ、それは残念ねぇ、またどこかに飛ばしてあげようかと思ったのにねぇ」
「ぬけぬけとそんな事を!」
「怒らせたかしらねぇ?だから何?むしろ私にそんな口を聞くと__」
彼女は優雅にナイフを操り、モグリマスターの爪を巧みに剥ぎ取った。
爪は綺麗に床に落ち、血がじわりと滲み出ていった。
「ぐぁぁぁあ!!!」
「や、やめろ!」
「やめ?」
「や……やめてください……」
「良くできましたぁ〜悪く思わないでね、私は女神並みに悪なのよ」
くそ!助けないと!みんなを!動けるのは俺だけ……俺だけがこの状況をなんとか出来るはずだ!
「ア、オイ……逃げろ」
「マスター!」
「それ以上は近づいちゃ駄目よねぇ」
女はナイフをそのまま此方に突き立てる。
「くっ……」
「別に商品にならないお前は逃げてもいいけど、どうせ外の奴にたいして何も出来ないんだよねぇ?だったらそこら辺の部屋でゆっくりと怖がりながら来るか解らない救助待ってな」
「ぐ……わ、解りました」
「物わかりがいいねぇ、流石奴隷だ」
ゆっくりと刺激をしないようにその部屋を出て扉を閉める。
俺が……なんとかしないと……何か……
____!
「こんなこと……したくなかったけど、やってみるしかない!」
急いで向かった先は《医務室》
ユキさんは寝ている、子供達を処理して後からゆっくりと屋敷の物を盗むつもりだな。
「ごめん、ユキさん」
そういってユキさんの服を漁ると予想通り【魔皮紙】が入っていた。
リュウト君が言ってた、この世界で魔皮紙は日常であって、冒険者は攻撃魔法の魔皮紙を持っていると……もちろん、町で使ったらダメなのだが今は事が事だ!
目には目を!
「絶対にいつか返すから、今だけ貸して!」
我ながら無茶苦茶だとおもう、だって何がどういう機能をするかも把握してない、解らない。
だけどこれしか方法はないのだ、例えるなら街がゾンビで大量発生している中、一般市民が警察の死体から銃をゲットして戦う感覚と似てる気がする。
「あれ?でもこの魔皮紙って……もしかして!」
この模様にこの色!
「アンナ先輩があの時使ってた魔皮紙に似てる!」
俺は急いでその魔皮紙に魔力を通すと魔法陣が光った後に燃えてなくなった。
「これで……あの人が……」
「俺を呼んだか?」
「ひぅ!?」
いきなりすぎて驚きのあまり飛び上がりながら振り返るとそこには__
「…………」
いつかの海賊から守ってくれた“黒騎士”が立っていた。
はや!?!?!?
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